王妃たちが入浴を終えた頃にはパンが焼きあがっていた。
白と茶色と黒という色合いも個性的な3個の食パンは、それぞれの王妃がそれぞれの城へと持ち帰った。
ランナは自室に戻ると、リビングのテーブルの上に茶色い食パンの乗ったお皿を置く。
(今日は楽しかったな。モニカ様とポーラ姉さんとも仲良くやっていけそうで嬉しい)
テーブルの上に向けていた視線を壁掛け時計に移すと、時刻はもう午後5時を過ぎてしまっている。
出来立てのパンをヒルに食べてもらいたかったが、明日の昼までおあずけになってしまった。
そんな事を考えていると、いつの間にかテーブルの前にカレンが無言で立っていた。
いつもの事だが、カレンはいつ部屋に入ってきたのか分からない。それほどに気配がないが、必要な時には側にいてくれる。
「あ、カレンさん。ちょうど良かった。このパン、明日のお昼に食べるから保存しておいてほしいの」
「……ランナ様がお作りになったのですか」
「うん! モニカ様とポーラ姉さんと一緒にパン作りしたの。上手くできたでしょ?」
「…………」
笑顔のランナとは対照的にカレンは少しも笑わない。それどころか険しい表情にすら見える。
カレンは無言でテーブルの上の皿を手に持つと、そのまま部屋を出て行く。
カレンが無感情で無表情なのはいつもの事なのでランナは特に気にしない。
部屋を出たカレンは階段を下り、一階の城の裏口のドアを開けて外へと出る。
すでに薄暗い夕方、城の裏側は人の気配がない。カレンは鉄製のダストボックスの蓋を開けると、その中に食パンを丸ごと落として捨てる。
「任務完了」
誰に報告する訳でもなく、カレンは感情のない黒の瞳で独り言のように呟いた。
次の日の朝になった。その日もいつもと何も変わらずにランナは部屋で一人で朝食を食べる。
起床してからヒルが部屋に来る昼12時までの時間は、ランナにとってはいつも退屈な時間だった。
アサから借りた本の続きを読もうとしてソファに座ると、部屋のドアが唐突に開いた。
この時間に部屋に訪れるのはカレンくらいだが、今までにない乱暴なドアの開け方で驚いてしまう。
予想通り、部屋に入ってきたのはメイド服姿のカレンだったが、いつも無感情なはずの表情が険しい。
「カレンさん、どうしたの? 何かあったの?」
「……ランナ様が昨日お作りになったパンは、1個だけではなかったのですか」
「え? 私とモニカ様とポーラ姉さんで1個ずつ作って持ち帰ったけど」
王妃の三人で合計3個のパンを作ったが、なぜ昨日のパンの数を問われるのか分からない。
カレンは激しく動揺している様子で、黒の瞳を揺らしながら眉をしかめて唇を噛み締めた。
「そういう事ですか……ランナ様、申し訳ありません。私がいながら、こんな事に……」
「え、ちょっと待って、何があったの?」
「今朝、アサ様が昨日のパンを召し上がりましたが……パンには毒が盛られていました」
「え……!?」
白と茶色と黒という色合いも個性的な3個の食パンは、それぞれの王妃がそれぞれの城へと持ち帰った。
ランナは自室に戻ると、リビングのテーブルの上に茶色い食パンの乗ったお皿を置く。
(今日は楽しかったな。モニカ様とポーラ姉さんとも仲良くやっていけそうで嬉しい)
テーブルの上に向けていた視線を壁掛け時計に移すと、時刻はもう午後5時を過ぎてしまっている。
出来立てのパンをヒルに食べてもらいたかったが、明日の昼までおあずけになってしまった。
そんな事を考えていると、いつの間にかテーブルの前にカレンが無言で立っていた。
いつもの事だが、カレンはいつ部屋に入ってきたのか分からない。それほどに気配がないが、必要な時には側にいてくれる。
「あ、カレンさん。ちょうど良かった。このパン、明日のお昼に食べるから保存しておいてほしいの」
「……ランナ様がお作りになったのですか」
「うん! モニカ様とポーラ姉さんと一緒にパン作りしたの。上手くできたでしょ?」
「…………」
笑顔のランナとは対照的にカレンは少しも笑わない。それどころか険しい表情にすら見える。
カレンは無言でテーブルの上の皿を手に持つと、そのまま部屋を出て行く。
カレンが無感情で無表情なのはいつもの事なのでランナは特に気にしない。
部屋を出たカレンは階段を下り、一階の城の裏口のドアを開けて外へと出る。
すでに薄暗い夕方、城の裏側は人の気配がない。カレンは鉄製のダストボックスの蓋を開けると、その中に食パンを丸ごと落として捨てる。
「任務完了」
誰に報告する訳でもなく、カレンは感情のない黒の瞳で独り言のように呟いた。
次の日の朝になった。その日もいつもと何も変わらずにランナは部屋で一人で朝食を食べる。
起床してからヒルが部屋に来る昼12時までの時間は、ランナにとってはいつも退屈な時間だった。
アサから借りた本の続きを読もうとしてソファに座ると、部屋のドアが唐突に開いた。
この時間に部屋に訪れるのはカレンくらいだが、今までにない乱暴なドアの開け方で驚いてしまう。
予想通り、部屋に入ってきたのはメイド服姿のカレンだったが、いつも無感情なはずの表情が険しい。
「カレンさん、どうしたの? 何かあったの?」
「……ランナ様が昨日お作りになったパンは、1個だけではなかったのですか」
「え? 私とモニカ様とポーラ姉さんで1個ずつ作って持ち帰ったけど」
王妃の三人で合計3個のパンを作ったが、なぜ昨日のパンの数を問われるのか分からない。
カレンは激しく動揺している様子で、黒の瞳を揺らしながら眉をしかめて唇を噛み締めた。
「そういう事ですか……ランナ様、申し訳ありません。私がいながら、こんな事に……」
「え、ちょっと待って、何があったの?」
「今朝、アサ様が昨日のパンを召し上がりましたが……パンには毒が盛られていました」
「え……!?」



