ある日の診察室にて、顔馴染みの患者である初老の男性がガイスに予想外の情報を教えてきた。
「ガイス先生、ご存知ですか? 国王と王妃が病で急死されたそうですよ」
「……え? それは本当ですか?」
「えぇ。ここは辺境の田舎なので静かですが、王都では大変な騒ぎだそうですよ」
ガイスは強い胸騒ぎを感じる。国王と王妃が病で同時に崩御なんて事はありえるのだろうか。事件性を疑ってしまう。
先日のクロノスを見た限りでは顔色や生気に異常は感じなかった。まさか自分の死期を悟って息子に王位を継がせる準備をしていたのだろうか。
ヒルと呼ばれていた少年が王位を継ぐにしても、まだ6歳だし三重人格者。問題が多く現実的ではない。
それから、さらに数日が経った、ある日の事。
午後5時すぎに医者としての仕事を終えたガイスとエリーナは、一息つくと白衣を脱いで外出の準備をする。
エリーナは手提げのバッグの中に財布を入れて、すっかり薬師から主婦の顔に変わっている。
「帰りに買い物しましょう。今夜は娘たちが好きなハンバーグ作るわ」
「いいね、僕もハンバーグ好きだよ。エリーナが作ったハンバーグね」
「ふふ、ガイスったら可愛い」
ランナとポーラは今、近所の友達の家に遊びに行っている。ガイスとエリーナは今から徒歩で迎えに行くつもりだった。
玄関のドアを開けて外に出た途端に、二人は武装した何十人もの兵に取り囲まれた。
ガイスは咄嗟にエリーナの前に出て守りの体勢を取る。
「これは一体どういう事だ!?」
兵士たちが纏う白銀の甲冑の胸には、見覚えのある白い薔薇の紋章。ジョルノ国軍の象徴だった。
その兵士たちの間から、黒衣の少年が歩いて前に出てきた。黒髪に赤い瞳、少年とは思えないほどの冷たく鋭い眼光で二人の前に立つ。
髪の色も生気の質も違うが、あの少年の面影はある。ガイスは、目の前の少年がヒルの夜の人格だと瞬時に判断した。
「君は……ヒルくんの夜の人格なのか?」
「オレはヨルだ。ジョルノ国王、ヨル・ヴァクトだ」
その堂々とした立ち姿と口調は6歳の少年とは思えない。どうやら本当に王位に就いたらしい。
しかしこの状況。ヨルは薬師の夫婦に敵対心を持っている様子だった。ヨルの口調は淡々としたものから憎しみを込めた声に変わる。
「お前ら二人を処刑する」
「なんだと!? 僕たちが一体何をしたというんだ!?」
「オレを毒で殺そうとした」
ヨルは父の殺意に気付いていた。クロノスがヒル以外の人格を殺そうとして、ガイスとエリーナに毒薬を作らせた事にも。
実際にクロノスが受け取ったのは風邪薬で毒性はないが、ヨルにとっては大人たちに殺意を向けられた事実に変わりはない。
その憎しみの念からヨルの悪魔の魔力が覚醒した。ヨルは両親を呪い殺し、次に薬を調合したガイスとエリーナを殺しに来た。
「国王のオレが命じる。お前らは死刑だ」
人知れず王都へと連行されたガイスとエリーナがその後、どうなったのかは誰も知らない。
だが数日後。モーメントの街の役場に国からの正式な通達が届いた。
その内容は『ガイスとエリーナを罪人として連行、処刑した』という事後報告だった。
「ガイス先生、ご存知ですか? 国王と王妃が病で急死されたそうですよ」
「……え? それは本当ですか?」
「えぇ。ここは辺境の田舎なので静かですが、王都では大変な騒ぎだそうですよ」
ガイスは強い胸騒ぎを感じる。国王と王妃が病で同時に崩御なんて事はありえるのだろうか。事件性を疑ってしまう。
先日のクロノスを見た限りでは顔色や生気に異常は感じなかった。まさか自分の死期を悟って息子に王位を継がせる準備をしていたのだろうか。
ヒルと呼ばれていた少年が王位を継ぐにしても、まだ6歳だし三重人格者。問題が多く現実的ではない。
それから、さらに数日が経った、ある日の事。
午後5時すぎに医者としての仕事を終えたガイスとエリーナは、一息つくと白衣を脱いで外出の準備をする。
エリーナは手提げのバッグの中に財布を入れて、すっかり薬師から主婦の顔に変わっている。
「帰りに買い物しましょう。今夜は娘たちが好きなハンバーグ作るわ」
「いいね、僕もハンバーグ好きだよ。エリーナが作ったハンバーグね」
「ふふ、ガイスったら可愛い」
ランナとポーラは今、近所の友達の家に遊びに行っている。ガイスとエリーナは今から徒歩で迎えに行くつもりだった。
玄関のドアを開けて外に出た途端に、二人は武装した何十人もの兵に取り囲まれた。
ガイスは咄嗟にエリーナの前に出て守りの体勢を取る。
「これは一体どういう事だ!?」
兵士たちが纏う白銀の甲冑の胸には、見覚えのある白い薔薇の紋章。ジョルノ国軍の象徴だった。
その兵士たちの間から、黒衣の少年が歩いて前に出てきた。黒髪に赤い瞳、少年とは思えないほどの冷たく鋭い眼光で二人の前に立つ。
髪の色も生気の質も違うが、あの少年の面影はある。ガイスは、目の前の少年がヒルの夜の人格だと瞬時に判断した。
「君は……ヒルくんの夜の人格なのか?」
「オレはヨルだ。ジョルノ国王、ヨル・ヴァクトだ」
その堂々とした立ち姿と口調は6歳の少年とは思えない。どうやら本当に王位に就いたらしい。
しかしこの状況。ヨルは薬師の夫婦に敵対心を持っている様子だった。ヨルの口調は淡々としたものから憎しみを込めた声に変わる。
「お前ら二人を処刑する」
「なんだと!? 僕たちが一体何をしたというんだ!?」
「オレを毒で殺そうとした」
ヨルは父の殺意に気付いていた。クロノスがヒル以外の人格を殺そうとして、ガイスとエリーナに毒薬を作らせた事にも。
実際にクロノスが受け取ったのは風邪薬で毒性はないが、ヨルにとっては大人たちに殺意を向けられた事実に変わりはない。
その憎しみの念からヨルの悪魔の魔力が覚醒した。ヨルは両親を呪い殺し、次に薬を調合したガイスとエリーナを殺しに来た。
「国王のオレが命じる。お前らは死刑だ」
人知れず王都へと連行されたガイスとエリーナがその後、どうなったのかは誰も知らない。
だが数日後。モーメントの街の役場に国からの正式な通達が届いた。
その内容は『ガイスとエリーナを罪人として連行、処刑した』という事後報告だった。



