朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 会議室を出ると、ランナはアサと二人で馬車に乗って城を出発した。

(本当にアサ様とデートみたいになってる……なんで?)

 ランナは馬車の車内で、隣に座る白い貴族服を着た銀髪の貴公子を横目で見る。アサはすぐに爽やかな笑顔を返してくる。
 紳士なアサはヨルみたいに押し倒してくる心配はないが、どういう顔をしていいのか分からない。
 城下町を進んで僅か数分、馬車が止まったのは小さなカフェの前。屋根は平だが丸太や角材で作られていて外観はログハウスのようだ。

「僕の行きつけのお店です。ここで朝食にしましょう」

 先に馬車から降りたアサは、続いて降りようとするランナに手を差し出してエスコートする。やはり紳士だ。
 店内に入ると資材の木の香りとコーヒーの香りが程よく調和していて心を落ち着かせてくれる。
 今の時刻は朝9時ごろ。客はまばらで、アサとランナは男性店員に窓際の席に案内された。店員はアサと顔馴染みなので国王が来ても驚かない。
 四角い木のテーブルに向かい合って座ると、アサは店員にコーヒーとサンドイッチを二人分注文した。

「さて、ランナさん。どうぞ何でもお話ください」
「あ、はい。私の両親とアサ様の両親について、知っている事を教えてほしいんです。ヨル様は私の両親を殺したなんて言ってましたが本当ですか?」

 アサは顎に指を添えて考える素振りをした。何かを企んでいる顔にも見えるが、ヨルのように悪人顔ではない。

「なるほど、ヨルが……ある意味、間違いではないですね」
「どういう事なのですか? アサ様は全てを知っているのですか?」
「そうですね、お話しても良いですが……」

 アサは悪魔の赤い瞳で天使のように微笑む。今のアサは天使なのか悪魔なのか分からない。

「ランナさんが僕のものになるなら、お話して差し上げます」

 今日一番の笑顔で残酷な条件を突きつけるアサは、やっぱり悪魔であった。