朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 レッドリア国のファイア陛下から感謝はされても、嫌われる原因なんて思いつかない。
 正直、ランナは何が起こったのか分からない。

「え、あの、私……ファイア様からも、ルアージュ様からも感謝されたと思うんですけど……なんで?」

 ランナの声は頼りなく震えている。正面のアサは怒っている訳ではないが、ため息だけをついた。

「陛下のご病気と宣戦布告は別の話です」
「え、でも、ファイア様って平和主義なんじゃ……」
「はい。ですが、それ以上に娘主義なのです。ルアージュさんを弄んだヨルが許せないのでしょうね」

 そういえばファイアはルアージュを溺愛している。結局はファイアが国王に復帰しても争いは免れなかった。
 恐ろしくて直視できないが、確実に隣のポーラはランナを睨みつけている。突き刺さる視線が痛い。

「……あんた、レッドリア国に何しに行ってたのよ」

 そのポーラの口調も冷たく心に刺さる。そもそもルアージュがヨルを刺したのに、なぜルアージュばかりが被害者なのか。
 それに根本的な原因はヨルの聖女遊びにあるのだが、それは何を言ったとしても直らない。
 アサは、こんな時でも朝日のような爽やかな微笑みでランナを安心させようとする。

「分かってますよ。ランナさんのせいじゃありません。しかし和平の条件としてヨルの謝罪を求めています」
「そんなの絶対に無理じゃないですかぁ……」
「はい、だから僕が和平に尽力します。おそらく宣戦布告は脅しですが、国交が正常に戻るまでは警戒を続けます」

 それを聞いたランナは別の部分で心に落胆を感じた。レッドリアは両親の母国である。
 レッドリアに行けなければ、両親の死の真相の手掛かりを得る手段がなくなってしまう気がした。
 アサの隣に座るモニカは、ランナが責任を感じて落ち込んでいると思って優しく微笑む。

「私も第一王妃としてアサ様と一緒に掛け合いますわ。母国のレッドリアに行けないのは悲しいですもの」

 アサとモニカは表面的には天使のような夫婦なので外交には向いている。そこでランナは、ふと疑問に思った。

(両親、母国……そういえば、ヴァクト陛下の両親って?)

 ジョルノ国の先代の王と王妃の話は一度も聞いた事がない。王位を譲って隠居したのかもしれないが、結婚式にも来なかった。