朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 ポーラとの確執はあるものの平穏な日々が続いた、ある日の昼下がり。
 今日は休日なのでヒルはランナと二人で自室で寛いでいる。
 休日はいつもランナと一緒に外出したがるヒルであったが、今日は違う気分らしい。

「なぁ、ランナ。休日のデートもいいけどさ、たまにはランナと一緒に寝たい」
「へ?」

 リビングのテーブルに座って食後の紅茶を飲んでいたランナは、ティーカップに口を付けたままで変な声を出した。
 ヨルとは違って純情という言葉が似合うヒルは、今までキス以上の願望を口にする事はなかったのに。

「ちょっとヒルくん、何言ってるの? 変なものでも食べてさらにバカになったの? 寝るって、まだ昼間だよ」
「今日もすげー毒舌だな……」

 ヒルの愛のおかげで毒薬を調合できるようになったランナは、自身の毒舌の能力も高まっていた。
 大胆な要望を口にした割には、ヒルの顔は無邪気で小動物のように可愛らしい。

「いや、だってオレたち、夫婦なのに夜も一緒に寝れないじゃん?」
「まぁね、夜はヨル様になっちゃうし」
「だからさ、一緒に昼寝しよう」

 これでもヒルは22歳の男だ。昼寝と言うと聞こえはいいが、要はランナと初夜を迎えたい。いや、夜は不可能なので初昼とでも言うのか。
 不思議とランナは拒否する気にならない。本当にヒルの呪いが効き始めたのかもしれない。

(夫婦なんだから当然……だよね?)

 ランナは左手の薬指で輝く金の指輪を見て自分に問いかける。夫婦とか指輪とか呪いは関係ない。ランナはヒルと向かい合うと素直な気持ちになれる。

(私は、ヒルくんが……)

 その続きを心で飲み込むと、ランナは頬を赤らめて笑顔で返す。

「うん、いいよ」