レッドリアの国境を抜けて約1時間後、馬車はジョルノ国の王城に到着する。
時刻は午後6時過ぎ。日は完全に落ちて夜の暗闇に包まれている。馬車から降りた二人は歩いて城門を通るが、ヨルの足取りは鈍い。
自分の薬のせいで体調が悪いヨルを見るのは、ランナにとっても気分が良くない。ヨルに肩を貸そうとして隣に寄り添った。
ヨルの城の入り口の前にはポーラが立っていて、寄り添う二人の姿を見て駆け寄ってくる。
「ヨル様、お帰りなさいませ。お待ちしていました」
ポーラはヨルの前で立ち止まると笑顔で迎える。隣のランナは眼中にない様子で声もかけない。文字通り、今のポーラにはヨルしか見えていない。
しかしヨルの様子がおかしい事に気付くとポーラの笑顔が消える。
「ヨル様、ご体調が悪いのですか?」
「あぁ、具合が悪い。少しベッドで休む」
ポーラは、ヨルの隣のランナをようやく視界に入れた……いや、睨みつけた。そしてランナの腕を掴むと強引にヨルから引き離した。
強く乱暴に引っ張られたランナは倒れそうなほどに体勢を崩した。目の前に立つポーラは冷酷な瞳でランナを見下ろしている。
「ランナ。ヨル様に近寄らないでって言ったはずよ。具合が悪いヨル様を連れ回すなんて」
「姉さん、ちがう! 私はヒルくんと一緒に和平のためにレッドリア国に……」
「言い訳しないで! そうよ、あんたがヨル様に毒薬を盛ったんじゃないの!?」
ランナはそれを否定できなくて言葉が詰まる。自分が調合した薬が結果的にヨルにとっての『毒』となったのは事実なのだから。
ヨルは殺気立つポーラに近寄ると、その体を抱いて慣れた手つきで口付ける。
「大丈夫だ、ポーラ。行くぞ」
「はい、ヨル様……」
ポーラは恍惚とした表情でヨルに寄り添いながら歩きだす。二人の背中は闇夜に溶け込むように漆黒の城の中へと消えていく。
その場に一人で取り残されたランナの心に迫るのは、悲しみとは違う混沌とした闇。
ここまでポーラの人格を変えてしまったヨルの呪いも恐ろしい。それ以上に、ランナに口付けたその唇で平然とポーラに口付けるヨルが恐ろしい。
呪いを殺し、人格を殺す毒薬を調合する能力が覚醒したランナ。三人のヴァクトは今まで以上にランナの力を欲するに違いない。
ランナが最も恐ろしいと思うのは、癒しではなく『殺し』の力を得てしまった自分自身の能力だった。
時刻は午後6時過ぎ。日は完全に落ちて夜の暗闇に包まれている。馬車から降りた二人は歩いて城門を通るが、ヨルの足取りは鈍い。
自分の薬のせいで体調が悪いヨルを見るのは、ランナにとっても気分が良くない。ヨルに肩を貸そうとして隣に寄り添った。
ヨルの城の入り口の前にはポーラが立っていて、寄り添う二人の姿を見て駆け寄ってくる。
「ヨル様、お帰りなさいませ。お待ちしていました」
ポーラはヨルの前で立ち止まると笑顔で迎える。隣のランナは眼中にない様子で声もかけない。文字通り、今のポーラにはヨルしか見えていない。
しかしヨルの様子がおかしい事に気付くとポーラの笑顔が消える。
「ヨル様、ご体調が悪いのですか?」
「あぁ、具合が悪い。少しベッドで休む」
ポーラは、ヨルの隣のランナをようやく視界に入れた……いや、睨みつけた。そしてランナの腕を掴むと強引にヨルから引き離した。
強く乱暴に引っ張られたランナは倒れそうなほどに体勢を崩した。目の前に立つポーラは冷酷な瞳でランナを見下ろしている。
「ランナ。ヨル様に近寄らないでって言ったはずよ。具合が悪いヨル様を連れ回すなんて」
「姉さん、ちがう! 私はヒルくんと一緒に和平のためにレッドリア国に……」
「言い訳しないで! そうよ、あんたがヨル様に毒薬を盛ったんじゃないの!?」
ランナはそれを否定できなくて言葉が詰まる。自分が調合した薬が結果的にヨルにとっての『毒』となったのは事実なのだから。
ヨルは殺気立つポーラに近寄ると、その体を抱いて慣れた手つきで口付ける。
「大丈夫だ、ポーラ。行くぞ」
「はい、ヨル様……」
ポーラは恍惚とした表情でヨルに寄り添いながら歩きだす。二人の背中は闇夜に溶け込むように漆黒の城の中へと消えていく。
その場に一人で取り残されたランナの心に迫るのは、悲しみとは違う混沌とした闇。
ここまでポーラの人格を変えてしまったヨルの呪いも恐ろしい。それ以上に、ランナに口付けたその唇で平然とポーラに口付けるヨルが恐ろしい。
呪いを殺し、人格を殺す毒薬を調合する能力が覚醒したランナ。三人のヴァクトは今まで以上にランナの力を欲するに違いない。
ランナが最も恐ろしいと思うのは、癒しではなく『殺し』の力を得てしまった自分自身の能力だった。



