朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 モニカは横を向いてランナの驚き顔に笑顔で返す。

「治癒の能力ですわ。アサ様の愛のおかげで私の聖力はここまで高まりましたのよ」

 モニカが誇らしげに強調して語るのは、聖女の能力そのものではなくアサからの愛。
 聖女は愛によって聖力が高まる。呪いの効果もあるが、どれだけ二人が深く愛し合っているかが分かる。
 それを抜きにしても、最高位の聖女くらいしか使えない治癒の能力が使えるなんて素直に感嘆してしまう。

「モニカ様、すごいです……私なんて魔法薬の調合くらいしかできないのに」

 モニカへの感嘆というよりランナは自分に対して悲観的になって沈んだ口調になる。
 アサはシャツを着て正面を向くと前ボタンを止めながら優しく諭す。

「それこそが、すごいのですよ。魔法薬を調合できる聖女はランナさんとポーラさんしかいません」

 そう言われてもランナは素直に喜べない。アサもヒルもヨルも、この能力が目当てで近付いてくるのだから。
 表情まで沈んできたランナを見て、アサはあえて明るい口調で話題を変えてきた。

「それにしても、刺されるなんてヨルはよほどの悪人ですね。自業自得ですよ。お友達は選んで頂きたいものです」

 アサはヨルの女遊びを皮肉を込めて言い表した。そしてランナのせいではなくヨルのせいだと遠回しに伝えている。
 やはりアサは聖人を超えて天使のようだ。負傷したのは自分なのにランナの心の傷を癒そうとしてくれる。
 そんな彼の隣にモニカが座ると愛しそうに寄り添う。さらにアサは昨日の件に付け加えてランナを気遣う。

「本当にヨルは危険な男ですよ。ランナさんは彼に何もされませんでしたか?」
「あ、そういえば私、ヨル様に呪いをかけられて……!」

 今になって思い出したランナは自分の左手の薬指を見て確認する。そこにあるのは漆黒の指輪……ではなく金色に輝く指輪。

「あれ? 金色に戻ってる! いつの間にか呪いが解けてる!?」

 昨日の夜の時点では指輪は漆黒に染まっていた。という事は睡眠中に自然と呪いが解けていたのかもしれない。
 アサも興味深そうにランナの指輪を見て何かを考えている。

「なるほど。やはりランナさんには呪いが効かないのですね。そういう事でしたか」
「え? どういう事ですか?」

 床に膝をついたまま指を見ていたランナはソファに座るアサを見上げる。

「呪いの効果がないのは、ヒルの魔力が弱いからではなかったという事です」

 ランナはまだ訳が分からずに、とぼけた顔をして聞いている。アサの隣のモニカはすでに気付いている様子で頷いていた。

「呪いを打ち消す聖力を持つ聖女。つまりランナさんは最強の聖女です」

 アサの口から飛び出した予想外の一言にランナの思考は真っ白に飛んでしまった。