朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 行きよりも長い時間をかけて自室の前へと辿り着く。力なく金色の扉を開けて中に入ると、カレンは退室したようで室内には誰もいない。
 ……と思ったのだが、リビングのソファに誰かが座っている。以前はポーラだったが、今回は違う。銀髪と純白のドレスが美しい第一王妃だった。

「ランナさん。お邪魔しておりましたわ」

 泣き顔のランナを癒す天使の微笑み。アサの妻であるモニカはまさに聖女。冷酷や無感情な人が多い中でモニカの笑顔は一際輝いて見える。
 金色の装飾が施された白いソファはモニカに似合いすぎて神々しい。ランナは引き寄せられるようにモニカの隣に座る。

「分かりますわ。ランナさんのせいじゃありませんのよ。私たちのヴァクト陛下を愛する心は同じですものね」

 ランナが何も言わなくてもモニカは心を読み取ってくれる。ランナを拒絶するポーラとは逆で、全てを受け入れようとする。
 ヒルのいない孤独な時間帯、ランナは心の拠り所を求めてしまう。

「モニカ様、私はどうしたら……」
「今はお話できませんの。ランナさん、早起きは大丈夫かしら? 明日の朝4時半に会いに来てくださる?」
「……分かりました」

 モニカはアサの人格が目覚めた後の朝4時半に、アサの自室に来てほしいと指定してきた。朝の時間帯はモニカは他の城に移動できないので自然な流れではある。
 4時ではなく4時半なのは、4時にアサが目覚めて夜の城から朝の城に移動する時間を考慮している。就寝時はヨルで起床時はアサの人格という複雑な睡眠事情だ。
 その誘導にどんな意図があろうとも、ランナはアサとも向かい合わなくてはならないと思っている。

「それでは、ランナさん。また明日。おやすみなさいませ」

 モニカは静かに立ち上がると、淑女らしい一礼をしてから部屋を出る。
 今はまだ午後7時くらいで寝る時間とは言えないし、それでなくても今日は眠れる気がしない。

(ヨル様……)

 ランナの両親を殺したというヨル、聖女を愛し利用するヨル、守ってくれたヨル。ランナはヨルとの向き合い方が分からない。
 ヨルだけで別の三人格があるのではないかと思うほどに未知で不可解な人格。
 憎しみと愛しさが混ざり複雑に乱される心、それでも前に進もうとする力。『憎しみは愛となり力を生む』というヨルの言葉を思い出した。