手の平に収まるくらいの小瓶の中には白い細粒が入っている。それをテーブルの上に置いて再び着席する。ヴァクトは相変わらず無邪気な赤い瞳で興味津々だ。
「お、それが風邪薬なのか?」
「まだ、ただの米粉。これから調合するの」
「米粉から薬を作るのか! 面白いな」
ランナは瓶を両手で包んで目を閉じる。先ほどのヴァクトの生気のイメージを脳内で再現して瓶の中に注ぎ込むと、瓶の中の白い粉が色付いていく。
やがて白と金色と黒が混ざった、なんとも禍々しい色合いの粉薬が出来上がった。ヴァクトは瞬きを忘れて食い入るように見ている。
「わぁ、すげぇ……! でも変な色だな。毒薬みたいだ」
「これはヴァクト様の生気の色。ヴァクト様の身体に合う風邪薬よ」
とは言うものの、見た目はまさに毒薬。これを調合したランナ自身が苦笑いをしてしまう。
生気の色は人それぞれだが、今まで診てきた患者は必ず単色だった。しかしヴァクトは複数の色を持っていて混沌としている。その色味は不気味としか思えない。
色は悪いが調合は失敗してないので、魔法の薬に間違いはない。ランナはその薬の瓶をヴァクトに手渡す。
「1つだけ注意して。その薬はヴァクト様の身体に合わせて調合したの。他の人には絶対に飲ませないで。体に毒だから」
「分かった、オレ専用の薬だね。じゃあ、診察代を渡すよ」
ヴァクトは再びポケットの中に片手を入れると小さな金属の輪を取り出した。そして突然、ランナの左手を取って握る。
「え、診察は終わったってば!」
驚いて手を離そうとするランナだが、ヴァクトの手の力が強くて振り解けない。ヴァクトは素早くもう片方の手でランナの薬指に金属の輪をはめる。
そしてヴァクトの手から解放されたランナが自分の左手を見ると、薬指には金色の指輪が輝いていた。
「え? これって……?」
「診察代。受け取ってよ」
それだけ言うと、ヴァクトは席を立って早々と帰ろうとする。ランナは薬指を見つめていた視線をヴァクトの背中に向ける。
「ちょっと待って、この指輪って純金? こんな高価なもの受け取れない!」
遠ざかろうとするヴァクトの黒衣の背中が止まった。かと思うと、その背中は上下に軽く振動している。明らかに笑っている。
ゆっくりとランナの方を振り返ると、その顔は太陽のような眩しい笑顔。
「高価じゃないよ、効果はあるけどね。じゃあ、また来るね。愛してるよ」
わざとらしく投げキッスの仕草をすると、ヴァクトは診察室を出て玄関の外へと立ち去って行った。
ランナは椅子に座ったまま呆然としていたが、再び左手の薬指の指輪を見て困惑する。
(効果はあるって……どういう意味?)
左手の薬指の指輪がどういう意味を持つかよりも、ヴァクトの言葉の意味の方が気になる。ランナにとって指輪は高価な貴金属の塊という認識しかない。
……それに、貴族の男性とは挨拶のように『愛してる』という言葉を使うのだろうか。
恋愛経験がなく生きる事だけで精一杯だったランナにはヴァクトの言動が理解できない。
「お、それが風邪薬なのか?」
「まだ、ただの米粉。これから調合するの」
「米粉から薬を作るのか! 面白いな」
ランナは瓶を両手で包んで目を閉じる。先ほどのヴァクトの生気のイメージを脳内で再現して瓶の中に注ぎ込むと、瓶の中の白い粉が色付いていく。
やがて白と金色と黒が混ざった、なんとも禍々しい色合いの粉薬が出来上がった。ヴァクトは瞬きを忘れて食い入るように見ている。
「わぁ、すげぇ……! でも変な色だな。毒薬みたいだ」
「これはヴァクト様の生気の色。ヴァクト様の身体に合う風邪薬よ」
とは言うものの、見た目はまさに毒薬。これを調合したランナ自身が苦笑いをしてしまう。
生気の色は人それぞれだが、今まで診てきた患者は必ず単色だった。しかしヴァクトは複数の色を持っていて混沌としている。その色味は不気味としか思えない。
色は悪いが調合は失敗してないので、魔法の薬に間違いはない。ランナはその薬の瓶をヴァクトに手渡す。
「1つだけ注意して。その薬はヴァクト様の身体に合わせて調合したの。他の人には絶対に飲ませないで。体に毒だから」
「分かった、オレ専用の薬だね。じゃあ、診察代を渡すよ」
ヴァクトは再びポケットの中に片手を入れると小さな金属の輪を取り出した。そして突然、ランナの左手を取って握る。
「え、診察は終わったってば!」
驚いて手を離そうとするランナだが、ヴァクトの手の力が強くて振り解けない。ヴァクトは素早くもう片方の手でランナの薬指に金属の輪をはめる。
そしてヴァクトの手から解放されたランナが自分の左手を見ると、薬指には金色の指輪が輝いていた。
「え? これって……?」
「診察代。受け取ってよ」
それだけ言うと、ヴァクトは席を立って早々と帰ろうとする。ランナは薬指を見つめていた視線をヴァクトの背中に向ける。
「ちょっと待って、この指輪って純金? こんな高価なもの受け取れない!」
遠ざかろうとするヴァクトの黒衣の背中が止まった。かと思うと、その背中は上下に軽く振動している。明らかに笑っている。
ゆっくりとランナの方を振り返ると、その顔は太陽のような眩しい笑顔。
「高価じゃないよ、効果はあるけどね。じゃあ、また来るね。愛してるよ」
わざとらしく投げキッスの仕草をすると、ヴァクトは診察室を出て玄関の外へと立ち去って行った。
ランナは椅子に座ったまま呆然としていたが、再び左手の薬指の指輪を見て困惑する。
(効果はあるって……どういう意味?)
左手の薬指の指輪がどういう意味を持つかよりも、ヴァクトの言葉の意味の方が気になる。ランナにとって指輪は高価な貴金属の塊という認識しかない。
……それに、貴族の男性とは挨拶のように『愛してる』という言葉を使うのだろうか。
恋愛経験がなく生きる事だけで精一杯だったランナにはヴァクトの言動が理解できない。



