朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 ヨルは以前から他人格の殺害計画を成せる力を持つ聖女を娶ろうとしていた。それは単にヨルの女遊び……いや、聖女遊びにも見えた事だろう。
 恨みを買っている過去の聖女は大勢いそうで頭がクラクラしてくる。

(ヒルくんと同じ体で聖女遊びしないでほしい)

 それがランナの本音であった。しかし今のこの状況、よく考えたらヨルよりも自分の身が危険かもしれないと気付き始めた。
 それにしてもルアージュの愚痴が止まらない。

「どうりで、ヨル様は夜しか会って下さらないと思いましたわ。とんだ遊び人ですわね」

 ルアージュは陛下の三重人格の事さえ知らない。ヨルが婚約者にも秘密を明かさないのは婚約破棄の可能性も見据えているからだろう。
 婚約して愛する事で聖女の能力を高めて、理想の聖力に到達しなければ捨てる。ヨルにとって愛とは聖女の能力を見極める行為でしかない。
 現状の危機感にヨルは気付いているのか、いないのか。ルアージュの憎悪の熱を加熱させる発言しかしない。

「もう貴様に興味はない。消えろ」
「諦めが悪いですわね。ランナ様はすでにヒル様のお妃様。ランナ様がヨル様の何になると仰いますの!?」

 諦めが悪いのはルアージュの方で、未練に引きずられているのは一目瞭然。未だにヨルの呪いから目覚めていない。
 対するヨルは、なぜか不敵に笑う。全く笑える状況ではないのに。

「ランナがヒルの妃だと? それは勘違いだ」

(いや、勘違いでも間違いでもないけど!?)

 ランナの脳内ツッコミが止まらない。ついさっきヒルと結婚式を挙げたばかりなのに……ヨルは一体、ランナを何だと思っているのか。
 ヨルは祭壇の端で黙っているランナに近付くと片腕を強引に掴む。引き寄せられたランナは、そのままヨルに肩を抱かれてしまった。

「ランナはオレの花嫁だ」

 見せつけるようにして堂々と宣言したヨルの隣で、純白のウェディングドレスのランナは顔まで真っ白に青ざめてしまった。