それにランナは愛を返せない罪悪感にも胸が痛む。呪いの効果もなく愛を知らないランナは、ヒルみたいに『愛してる』なんて簡単には言えない。
「ヒルく……」
それでも何かの言葉を返そうと思ったランナの声は最後まで続かなかった。ヒルの情熱を帯びた赤い瞳は細められて、無情な赤の視線がランナを突き刺す。
ランナが言葉を呑んだその時、すでに目の前にはヴァクト陛下の夜の人格、黒髪のヨルが現れていた。
「昼の妻か。ここはどこだ」
ヒルと同じ声色なのに、ヨルの短い言葉には威圧という重さがかかる。ランナは緊張しつつも恐れを顔に出さない。
ヨルはランナの顔ではなく姿全体を見て怪訝な顔をした。さらに自分の服装を見て首を一周回した後に目と口元を歪めて不快を示す。
「なんだ、この格好は……なぜ貴様もオレも白い!」
「今日は結婚式だったので」
「ふざけるな、オレは白が嫌いだ。ぐぅぅ、ヒルのやつめ、許さん……!」
黒髪の夜のヨルは白が嫌いらしい。妙に納得するが、色だけで屈辱を味わうヨルが滑稽にも思えてくる。
純白の花嫁の前で、白いタキシードを着た姿で人格をチェンジしたのはヒルの嫌がらせだろう。やはり子供の悪戯だ。
少し緊張が解けたランナだが、慎重にヨルから話を聞き出さなければならない。夜は長いので焦る必要はない。
「ヨル様、教えてほしいの。あなたは、どこまで自分の事を知ってるの?」
「……なるほど。それで、か」
ヨルは察した。王城から遠く離れた場所で二人きりにされた理由を。神殿の外には馬車とヒルの従者たちが控えているのでランナに下手な手出しはできない。
ランナの予想が正しければ、一日の活動時間が一番長いヨルは多くの情報を知っている可能性がある。
「ヨル様は悪魔なの?」
先制の意味でランナはあえてヨルを刺激する単語を選んだ。歪んでいたヨルの眉が僅かに吊り上がる。
「貴様……ヒルからどこまで話を聞いた?」
「全然聞いてない。だからヨル様に聞いてるの」
少しも揺れ動かないランナの金の瞳に吸い寄せられるようにしてヨルは距離を詰める。
怯めば隙を突かれる。ランナはヨルの瞳を拒まないが、ふいに彼の指先がランナの顎の下に添えられる。
「美しいな……花嫁か。悪くない」
「離れて。私はヒルくんの妻よ」
「呪いにはかかっていないだろう。貴様もすぐにオレのものになる」
これは口説き文句なのかと、今度はランナが不快に顔を歪める。ヨルの手を振り払おうとしたが、先にヨルの方から手を離した。
その両腕を組むと、ようやくヨルは先ほどのランナの質問に答える。
「その通りだ。オレは貴様の両親を殺した悪魔だ」
ヨルの口から放たれた衝撃的な発言に、純白の花嫁ランナの思考は真っ白に吹き飛ぶ。
「ヒルく……」
それでも何かの言葉を返そうと思ったランナの声は最後まで続かなかった。ヒルの情熱を帯びた赤い瞳は細められて、無情な赤の視線がランナを突き刺す。
ランナが言葉を呑んだその時、すでに目の前にはヴァクト陛下の夜の人格、黒髪のヨルが現れていた。
「昼の妻か。ここはどこだ」
ヒルと同じ声色なのに、ヨルの短い言葉には威圧という重さがかかる。ランナは緊張しつつも恐れを顔に出さない。
ヨルはランナの顔ではなく姿全体を見て怪訝な顔をした。さらに自分の服装を見て首を一周回した後に目と口元を歪めて不快を示す。
「なんだ、この格好は……なぜ貴様もオレも白い!」
「今日は結婚式だったので」
「ふざけるな、オレは白が嫌いだ。ぐぅぅ、ヒルのやつめ、許さん……!」
黒髪の夜のヨルは白が嫌いらしい。妙に納得するが、色だけで屈辱を味わうヨルが滑稽にも思えてくる。
純白の花嫁の前で、白いタキシードを着た姿で人格をチェンジしたのはヒルの嫌がらせだろう。やはり子供の悪戯だ。
少し緊張が解けたランナだが、慎重にヨルから話を聞き出さなければならない。夜は長いので焦る必要はない。
「ヨル様、教えてほしいの。あなたは、どこまで自分の事を知ってるの?」
「……なるほど。それで、か」
ヨルは察した。王城から遠く離れた場所で二人きりにされた理由を。神殿の外には馬車とヒルの従者たちが控えているのでランナに下手な手出しはできない。
ランナの予想が正しければ、一日の活動時間が一番長いヨルは多くの情報を知っている可能性がある。
「ヨル様は悪魔なの?」
先制の意味でランナはあえてヨルを刺激する単語を選んだ。歪んでいたヨルの眉が僅かに吊り上がる。
「貴様……ヒルからどこまで話を聞いた?」
「全然聞いてない。だからヨル様に聞いてるの」
少しも揺れ動かないランナの金の瞳に吸い寄せられるようにしてヨルは距離を詰める。
怯めば隙を突かれる。ランナはヨルの瞳を拒まないが、ふいに彼の指先がランナの顎の下に添えられる。
「美しいな……花嫁か。悪くない」
「離れて。私はヒルくんの妻よ」
「呪いにはかかっていないだろう。貴様もすぐにオレのものになる」
これは口説き文句なのかと、今度はランナが不快に顔を歪める。ヨルの手を振り払おうとしたが、先にヨルの方から手を離した。
その両腕を組むと、ようやくヨルは先ほどのランナの質問に答える。
「その通りだ。オレは貴様の両親を殺した悪魔だ」
ヨルの口から放たれた衝撃的な発言に、純白の花嫁ランナの思考は真っ白に吹き飛ぶ。



