朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 ヒルに話を聞けない今、ランナはデイズに色々と確認するしかない。今の自分が置かれている状況と、どれだけの自由が許されるのか。

「私は他のお城に自由に行けないのですか? ポーラ姉さんに会いたいです」
「ランナ様はお昼の王妃様です。ヒル様のお時間は他のお城へは行けません」

 この言い方だと、ランナは昼だけ王妃。ヒル人格の活動中だけ王妃として務めるという意味に聞こえる。
 逆を言えば、ランナは昼の時間帯以外なら自由に移動できるという意味にも受け取れる。アサの城のモニカにも、ヨルの城のポーラにも会いに行けそうだ。
 だが、そんなランナの思惑を読み取ったのか、デイズは無表情かつ淡々とした口調で加える。

「移動する事はお勧めしません。特にランナ様は」

 中立の立場を貫くデイズにしては、特別にランナを気にかけているような忠告で気になる。
 デイズはそれ以上何も言わずに一礼すると静かに退室する。ランナは急に静かになった部屋で一人で黙々と昼食を食べるが、一人だと自然と気分が重くなる。
 ふと左手の金色の指輪が視界に入る。せめて正面の席にヒルがいれば楽しい食事になったのにと、彼の太陽のような笑顔を思い出してしまう。

(やだ、私ったら、まさか呪いの効果!?)

 ヒルにだって惑わされる訳にはいかない。自我を保とうとして軽く頭を振って再び正面に視線を戻すと、ヒル……ではなく漆黒の瞳と目が合った。
 いつの間に部屋に入ってきたのか、黒髪のボブヘアの女性がテーブルの先の正面に立っていてランナを見つめている。

「きゃあっ!?」

 驚いたランナは手からフォークを離して身を引いた。その瞬間に女性が素早く動いて、ランナが瞬きをした後にはすでに横に移動していた。
 そしてテーブルに落ちる前にフォークを女性が片手でキャッチした。まるで瞬間移動、目にも留まらぬ速さだった。
 女性は無表情でフォークをランナに差し出す。

「どうぞ」
「ありがとう……ございます……」

 ランナはフォークを受け取りながらも、その女性を見て確認する。黒いワンピースに白いエプロン。絵に描いたような一般的なメイドの服装だ。
 ランナと同世代くらいの若いメイドは、数歩下がると丁寧な所作でお辞儀をする。

「初めまして。私はメイドのカレンと申す者でございます。何なりとお申し付けくださいませ」

 執事のデイズ以上に丁寧な口調、そして無感情の瞳。その言葉に抑揚はなく表情に笑顔もない。ある意味、彼女も人間らしくない。
 絶対にカレンは、ただのメイドではなさそうだ。ランナはカレンの正体を探るためにデイズの時と同じ質問をする。

「初めまして。カレンさんはヒルくんの専属メイドですか?」
「いいえ。中立でございます。今はお昼なのでヒル様のお城におります」

 デイズと全く同じ返答なので、これ以上聞く必要はなさそうだ。黒髪と黒の瞳という容姿の黒さもデイズと同じだが、カレンは完全に無表情なので怖さがある。