聖女の能力は『愛』によって効力が上がる。愛し合う事によって聖女の能力を高めるために、呪いをかけてまで溺愛しあう関係を作ろうとしている。
そこまでは推測したが、物騒な事を言っている割にヒルは少年のような無邪気な笑顔を顔面いっぱいに咲かせる。
「それでさ、あの風邪薬をヨルの時間になる直前に飲んでやった! ヨルのやつ絶対に具合悪くなっただろ! いい気味だな、あはは!!」
「……確かに具合悪そうだった、ヨル様もアサ様も」
「お、アサもか? 朝まで効果が持続するなんて、さすがランナちゃんの薬だなぁ、あはは、スカッとするぅ!!」
ランナは呆れながらも、ヒルという人格が少し分かり始めてきた。彼は不器用なだけではなく子供のようだ。これは殺意というか子供のイタズラのレベルだ。
あの風邪薬はヒルの生気に合わせて調合したが、同じ体でも別人格だと体に合わなくなる。人格が変わると生気も変わるという事実には驚いた。
ヒルは床に片膝をついてベッドの上に座るランナを見上げる。それは、まるで玉座に座る女王に跪くような形で。
「そういうワケで、ランナ。お前はオレの妃として一生溺愛する。よろしくな」
(え、どういうワケ?)
これがプロポーズとでも言うのだろうか。紳士的なポーズをしてる割に口調はフレンドリーで軽い。
しかし呪いの指輪をはめた時点で、ランナはもう逃げられない。犯罪者として連行された建前でモーメントの街へも簡単には帰れない。
元々、風邪薬くらいしか調合できない薬師の姉妹だ。いなくなっても街の人たちが困る事はないだろう。
(聖女として利用するために愛されるなんて、納得いかないけど)
それでも、ランナは思う。三人の王妃の中で、呪いの指輪の魅了に支配されないのは自分だけ。ランナだけが正気なのだ。
三重人格の争い、そしてモニカとポーラ。なんとかして全員を救う方法はないだろうかと。それが自分に課せられた使命ではないかと思った。
幸いな事にヒルは単純明快で、三人格の中では一番扱いやすい。利用するならば、こちらも利用して返すだけ。
「うん。よろしくね、ヒルくん」
タメ口に加えて、くん付け。さらにランナはここに来て初めて純粋な笑顔をヒルに返した。単純明快だからこそ、それはヒルの無防備な心を貫いた。
ヒルは衝動的に立ち上がると、そのまま前方に倒れこんでランナを背中から倒す。また押し倒されてしまったランナは金色の目を見開くが、すぐに赤い瞳と熱い唇が重なる。
「んっ……?」
ほんの数秒で唇は離されるが、赤い太陽の瞳は至近距離から離れない。ヒルの呼吸の音も熱もすぐ目の前にある。
恋を知らないランナにとっては初めてのキス。あまりにも唐突な人生の転機にロマンを感じる余裕などなかった。
そこまでは推測したが、物騒な事を言っている割にヒルは少年のような無邪気な笑顔を顔面いっぱいに咲かせる。
「それでさ、あの風邪薬をヨルの時間になる直前に飲んでやった! ヨルのやつ絶対に具合悪くなっただろ! いい気味だな、あはは!!」
「……確かに具合悪そうだった、ヨル様もアサ様も」
「お、アサもか? 朝まで効果が持続するなんて、さすがランナちゃんの薬だなぁ、あはは、スカッとするぅ!!」
ランナは呆れながらも、ヒルという人格が少し分かり始めてきた。彼は不器用なだけではなく子供のようだ。これは殺意というか子供のイタズラのレベルだ。
あの風邪薬はヒルの生気に合わせて調合したが、同じ体でも別人格だと体に合わなくなる。人格が変わると生気も変わるという事実には驚いた。
ヒルは床に片膝をついてベッドの上に座るランナを見上げる。それは、まるで玉座に座る女王に跪くような形で。
「そういうワケで、ランナ。お前はオレの妃として一生溺愛する。よろしくな」
(え、どういうワケ?)
これがプロポーズとでも言うのだろうか。紳士的なポーズをしてる割に口調はフレンドリーで軽い。
しかし呪いの指輪をはめた時点で、ランナはもう逃げられない。犯罪者として連行された建前でモーメントの街へも簡単には帰れない。
元々、風邪薬くらいしか調合できない薬師の姉妹だ。いなくなっても街の人たちが困る事はないだろう。
(聖女として利用するために愛されるなんて、納得いかないけど)
それでも、ランナは思う。三人の王妃の中で、呪いの指輪の魅了に支配されないのは自分だけ。ランナだけが正気なのだ。
三重人格の争い、そしてモニカとポーラ。なんとかして全員を救う方法はないだろうかと。それが自分に課せられた使命ではないかと思った。
幸いな事にヒルは単純明快で、三人格の中では一番扱いやすい。利用するならば、こちらも利用して返すだけ。
「うん。よろしくね、ヒルくん」
タメ口に加えて、くん付け。さらにランナはここに来て初めて純粋な笑顔をヒルに返した。単純明快だからこそ、それはヒルの無防備な心を貫いた。
ヒルは衝動的に立ち上がると、そのまま前方に倒れこんでランナを背中から倒す。また押し倒されてしまったランナは金色の目を見開くが、すぐに赤い瞳と熱い唇が重なる。
「んっ……?」
ほんの数秒で唇は離されるが、赤い太陽の瞳は至近距離から離れない。ヒルの呼吸の音も熱もすぐ目の前にある。
恋を知らないランナにとっては初めてのキス。あまりにも唐突な人生の転機にロマンを感じる余裕などなかった。



