朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 三重人格だったヴァクト陛下が別々の三人の人間になった事実は、城の者たちに大きな衝撃を与えた。
 しかしながら、今まで世間的には三つ子の三兄弟としていたので、国民には衝撃を与えずに済んだ。

 16年前に病死とされていた先代の王・クロノスと、王妃・エリスが生きていたという事実に関しては国民にも衝撃を与えた。
 クロノスとエリスは三人の息子に対して、正式に王位を継承させた上で王城に隠居という形で落ち着いた。

 今まで同一人物だったアサ、ヒル、ヨルが揃って会話をしている姿は新鮮で、三人を見かけた城の者たちは思わず二度見してしまう。

「せっかく国王が三人いる訳ですから、仕事は分担しましょう。僕は午前中を担当します」
「オレは夜だけ働く。昼間はヒルが働け」
「なんでだよ! 夜に仕事なんてないだろ、ヨルは遊びたいだけだろ! 理不尽だぁ!!」
「今まで通りって事ですよ」

 アサ、ヒル、ヨルは今まで通りに三兄弟、三人の国王として生きていく。
 長男のアサ、次男のヨル、三男のヒル。形式上ではあるが、なぜかヒルがいつも三番目。末っ子にされたヒルは理不尽だと言うが、誰もが妙に納得してしまう。



 諸々の調整が全て終わって生活が落ち着き始めた頃、ランナはようやくヒルとの時間を噛みしめる余裕ができた。

「ふふ。ヒルくんと夜に一緒に寝られるって、当然の事なのに嬉しいなぁ」

 夜の就寝前の時間、ランナはベッドの上に座って枕を抱きしめている。
 今まで昼の時間しか一緒に過ごせなかった二人だが、今は朝も夜も一緒にいられるだけで嬉しい。
 白い寝間着を着たヒルはベッドの上に座ると、ランナの顔ではなく服装を見て微笑んでいる。

「今日のランナのネグリジェ、すっげぇ可愛いな。くぅ、脱がすのが、もったいねぇ!」
「……ムード台無しよ、バカ」

 ランナは抱いていた枕でヒルの頭を叩く。怒って拗ねたふりをしてベッドに倒れると、すぐにヒルも体を倒してランナを両腕で包む。
 仰向けになると見えるのは、空でも天井でもなくヒルの黄金の瞳。まるで太陽のように眩しくて目を細めてしまう。

「なぁ、ランナ。オレさぁ、昔……初恋の女の子がいたんだ」
「……は?」

 閉じかけたランナの瞳が一気に見開かれる。なぜ、このタイミングで初恋の話なんてするのか。当然、ランナは聞きたくない。