毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~

 しかしリィラの決意を聞いてもセンティの優しい微笑みは崩れない。今日の空のような澄んだスカイブルーの瞳が美しい。

「逆だよ。リィラちゃんの毒が必要なんだ」
「え……?」
「リィラちゃんがいれば魔物は近寄らないからね。僕の移動中の付き人になってくれない?」

 センティの言いたい事は分かる。確かにリィラは自身の体そのものが魔物除けの役割を果たす。
 そしてセンティにとって、それは口実に過ぎないという事も。彼は純粋にリィラを王国へと迎えたいのだろう。

「でも、私の体は人体にも悪影響だから……」
「気になるならローブに身を包めばいいよ」

 確かにリィラの血や涙などの分泌物には毒が含まれるが、他人が皮膚や髪に触れただけで毒に侵される事はない。
 考え込んでしまったリィラの前で、センティは困った顔をして笑った。

「あ、ちゃんと給料は出すし、城に住み込みでも……」
「……次までに考えておく」

 微笑みながら曖昧に答えたリィラの心では、すでに答えは決まっていた。里の人たちの魂もきっと、このくらいは許してくれるだろう。

 里の外に出たいと思った事などない。王国に行きたい訳でもない。ただ……センティと一緒にいられるなら、どこでも良かった。

 毒の体ではセンティと結ばれる事なんて不可能なのは承知の上だった。どうせ長くはない寿命なのだから、自分に正直に生きたいと思っただけ。