心を奪われたかのように一歩踏み出そうとする青年の前にリィラが立ちふさがった。
「……だめ、入らないで。花には毒があるの」
我に返った青年は正面のリィラに目を合わせる。リィラの瞳も花畑と同じ紫色で息を呑むほどに美しい。
「私はリィラ。ここは毒の里だから花には触れないで」
「毒の里だって? じゃあ、ここがポワゾンなんだね? 本当に紫色ばっかりなんだ」
「……そう。本当は誰も入れたくなかったけど」
毒の里というだけあって、毒性に覆われたこの地に魔物は近寄らない。それは生物の本能。だからこそリィラは青年をここへ導いた。
外敵から身を守るには最も安全な場所ではあるが、その毒性は普通の人間にとっては危険な場所でもある。
「あ、僕の名はセンティ。アディール王国の者だよ」
センティは礼儀正しく一礼をして名乗った。その気品溢れる容姿と所作から高貴な身分であることは一目瞭然。
しかしセンティという名の、この青年。毒の里の周辺の森を一人で歩き、しかも魔物に追われるとは……無茶すぎる。
「……王子様が危険な森を一人で歩き回るなんて、何事なの」
「え? 僕、王子だなんて一言も言ってないよ」
「見れば分かる」
「へぇ、リィラちゃん、すごいなぁ」
図星だったようだが深くは詮索しない。そもそもリィラは誰とも関わるつもりはない。
愛想のよい笑顔で『ちゃん』呼びしてくるセンティに悪意がないのも見て分かる。この里を汚す目的なら毒の針で刺してやろうかとも思ったが。
「でもリィラちゃんだって一人で森の中にいたよね」
「私は平気なの。だって……」
そう言いかけた時、リィラは右足の脛にズキズキとした痛みを感じて顔を歪めた。先ほどセンティに突き飛ばされた時に足を擦りむいていた。
「あ、リィラちゃん……その足……血が!」
「触れないで!! 見ないで、大丈夫だから!」
リィラは足の傷が見えないように後ろを向いた。センティが驚いたのは怪我に対してではない事は分かっている。
「……だめ、入らないで。花には毒があるの」
我に返った青年は正面のリィラに目を合わせる。リィラの瞳も花畑と同じ紫色で息を呑むほどに美しい。
「私はリィラ。ここは毒の里だから花には触れないで」
「毒の里だって? じゃあ、ここがポワゾンなんだね? 本当に紫色ばっかりなんだ」
「……そう。本当は誰も入れたくなかったけど」
毒の里というだけあって、毒性に覆われたこの地に魔物は近寄らない。それは生物の本能。だからこそリィラは青年をここへ導いた。
外敵から身を守るには最も安全な場所ではあるが、その毒性は普通の人間にとっては危険な場所でもある。
「あ、僕の名はセンティ。アディール王国の者だよ」
センティは礼儀正しく一礼をして名乗った。その気品溢れる容姿と所作から高貴な身分であることは一目瞭然。
しかしセンティという名の、この青年。毒の里の周辺の森を一人で歩き、しかも魔物に追われるとは……無茶すぎる。
「……王子様が危険な森を一人で歩き回るなんて、何事なの」
「え? 僕、王子だなんて一言も言ってないよ」
「見れば分かる」
「へぇ、リィラちゃん、すごいなぁ」
図星だったようだが深くは詮索しない。そもそもリィラは誰とも関わるつもりはない。
愛想のよい笑顔で『ちゃん』呼びしてくるセンティに悪意がないのも見て分かる。この里を汚す目的なら毒の針で刺してやろうかとも思ったが。
「でもリィラちゃんだって一人で森の中にいたよね」
「私は平気なの。だって……」
そう言いかけた時、リィラは右足の脛にズキズキとした痛みを感じて顔を歪めた。先ほどセンティに突き飛ばされた時に足を擦りむいていた。
「あ、リィラちゃん……その足……血が!」
「触れないで!! 見ないで、大丈夫だから!」
リィラは足の傷が見えないように後ろを向いた。センティが驚いたのは怪我に対してではない事は分かっている。



