残酷な過去の夢の続きを遮るようにして、エリーゼは目を覚まして瞼を開いていた。
視界は薄暗いが見えないほどではない。気を失ったのは昼食時だったので、今は夕方くらいだと思われる。
いつの間にか別室のベッドに寝かされていて、体は暖かい毛布に包まれている。あの夢のせいもあって額には汗が滲んでいる。
(カイン王子……ごめんなさい……)
前世のエリーゼは、ウィリアム国の王子・カインを殺してしまった。実際に殺したのはアゼルだが、彼に手を貸した罪は事実。
カインはエリーゼを愛していたが、当時のエリーゼがカインを愛していたかどうかなんて分からない。いや、思い出したくなかった。エリーゼは全てを呪いのせいにして、無意識に罪から逃れようとしていた。
カインだけではない。前世のエリーゼは世界征服を企むアゼルに付き従い、数々の国を侵略・支配して罪のない人々の命を奪った。汚れてしまった魂では、今世で聖女の力をう失うのは当然だと思った。
(それにしても本当に暑い……)
この暑さは毛布のせいかと思ったが何かが違う。体の芯が熱を発しているような、体内からくる発熱に近い。少し体を動かしてみると、素肌に触れる毛布の感触が心地よい。
(服着てないのに、なんでこんなに暑いの……え? 私、服着てない!?)
一気に覚醒したエリーゼが毛布をめくり上げて上半身を一気に起こす。そして今の自分の姿に気付いて衝撃を受ける。上半身どころか全身に何も身に着けていない。つまり丸裸で寝ていた。……それだけではない。
「……ん? エリーゼ……起きたのか?」
聞き覚えのある声に気付いたエリーゼが恐る恐る視線を横に向けて見下ろすと、同じくアゼルが丸裸で隣に寝ていた。呑気に目を擦りながらあくびをしている。
「あ、あ、アゼル、あんた、まさか……やったの……?」
エリーゼは布団を強く握りしめたまま体を震わせた。それは寒さでも怒りの震えでもない。二人とも裸で同じベッドで寝ていたという事実が示すものは一つしかない。
アゼルも上半身を起こすと、今度はエリーゼがアゼルの赤い瞳を見上げる形になる。
アゼルの筋肉質の胸筋と背筋は逞しく、鎖骨の美しいラインの色気にも目を奪われてしまう。あの胸に抱かれていたのかと思うと全身がゾクゾクと震えて再び熱が巡ってくる。
「クク……最高にイイ顔と可愛い声でオレを求めてたぞ。エリーゼ貴様、最高か」
その言葉の内容よりも、アゼルの満たされた笑顔とテンションで今に至るまでの出来事を確信してしまった。
再会して初日に結婚、さらに初夜まで済まされてしまうとは……まだ夕方なのに。しかも記憶がない中でやられたのも無性に腹が立つ。せめて起きている時にしてほしい……なんて言えない。
「エリーゼは未成年だったか? あの程度の酒で酔い潰れるとは……可愛いけどな」
「し、失礼ね、私は20歳よ! ……って、お酒!?」
変な薬を盛られたと思ったが、ワインに酔っただけだったらしい。しかし普段からあんなに強い酒を飲んでいるアゼルは、さすがの魔王としか言いようがない。
魔王の貫禄でアゼルはすごく大人に感じるが22歳である。エリーゼと2歳差しかない。それが余計に悔しいと思った。
しかし怒ったところで何の意味もない。エリーゼが諦めたように息を吐くと、すかさずアゼルが後ろからエリーゼを抱きしめる。アゼルの逞しい胸筋が背中に触れるとエリーゼの肩が強張ってしまう。
「オレのエリーゼ、愛してるぞ。貴様がいればオレは最強だ。今世も二人で全世界を手に入れような」
その言葉に、エリーゼの高鳴っていた心臓が微かに痛みを伴った。やはりアゼルは聖女の能力を欲している。そして今世でも世界征服に乗り出す気でいる。
(アゼル、ダメなの……それはできない……)
今のエリーゼには聖女の能力がない。それに、もうカインのような犠牲者を出したくない。
呪いの効果さえなければ、この腕を解いてアゼルから逃げてやるのに。そんな葛藤すらもアゼルの悪魔の瞳に魅入られて、溺愛という呪いがエリーゼに恋の衝動をもたらす。
「エリーゼ、オレに永遠の愛と忠誠を誓え」
アゼルはいつでも愛を具現化させようとしてエリーゼに言葉を求めてくる。前世から、そういう男であった。言葉なんて不確かなものより唇で返す方がよほどいいのに。
だからこそ、ツンデレなエリーゼは言葉で返さない。
「私は、あんたなんか……」
嫌いだと言っても、好きだと言ってもアゼルを悦ばせてしまう。だからこそエリーゼは言い切る前に唇を寄せて熱い口付けを交わす。
(このままでは、だめ……アゼルが……愛しい)
熱に浮かされながらも、エリーゼは改めてアゼルの呪いから逃れる事を決意する。自分のためではなく、世界のために。
視界は薄暗いが見えないほどではない。気を失ったのは昼食時だったので、今は夕方くらいだと思われる。
いつの間にか別室のベッドに寝かされていて、体は暖かい毛布に包まれている。あの夢のせいもあって額には汗が滲んでいる。
(カイン王子……ごめんなさい……)
前世のエリーゼは、ウィリアム国の王子・カインを殺してしまった。実際に殺したのはアゼルだが、彼に手を貸した罪は事実。
カインはエリーゼを愛していたが、当時のエリーゼがカインを愛していたかどうかなんて分からない。いや、思い出したくなかった。エリーゼは全てを呪いのせいにして、無意識に罪から逃れようとしていた。
カインだけではない。前世のエリーゼは世界征服を企むアゼルに付き従い、数々の国を侵略・支配して罪のない人々の命を奪った。汚れてしまった魂では、今世で聖女の力をう失うのは当然だと思った。
(それにしても本当に暑い……)
この暑さは毛布のせいかと思ったが何かが違う。体の芯が熱を発しているような、体内からくる発熱に近い。少し体を動かしてみると、素肌に触れる毛布の感触が心地よい。
(服着てないのに、なんでこんなに暑いの……え? 私、服着てない!?)
一気に覚醒したエリーゼが毛布をめくり上げて上半身を一気に起こす。そして今の自分の姿に気付いて衝撃を受ける。上半身どころか全身に何も身に着けていない。つまり丸裸で寝ていた。……それだけではない。
「……ん? エリーゼ……起きたのか?」
聞き覚えのある声に気付いたエリーゼが恐る恐る視線を横に向けて見下ろすと、同じくアゼルが丸裸で隣に寝ていた。呑気に目を擦りながらあくびをしている。
「あ、あ、アゼル、あんた、まさか……やったの……?」
エリーゼは布団を強く握りしめたまま体を震わせた。それは寒さでも怒りの震えでもない。二人とも裸で同じベッドで寝ていたという事実が示すものは一つしかない。
アゼルも上半身を起こすと、今度はエリーゼがアゼルの赤い瞳を見上げる形になる。
アゼルの筋肉質の胸筋と背筋は逞しく、鎖骨の美しいラインの色気にも目を奪われてしまう。あの胸に抱かれていたのかと思うと全身がゾクゾクと震えて再び熱が巡ってくる。
「クク……最高にイイ顔と可愛い声でオレを求めてたぞ。エリーゼ貴様、最高か」
その言葉の内容よりも、アゼルの満たされた笑顔とテンションで今に至るまでの出来事を確信してしまった。
再会して初日に結婚、さらに初夜まで済まされてしまうとは……まだ夕方なのに。しかも記憶がない中でやられたのも無性に腹が立つ。せめて起きている時にしてほしい……なんて言えない。
「エリーゼは未成年だったか? あの程度の酒で酔い潰れるとは……可愛いけどな」
「し、失礼ね、私は20歳よ! ……って、お酒!?」
変な薬を盛られたと思ったが、ワインに酔っただけだったらしい。しかし普段からあんなに強い酒を飲んでいるアゼルは、さすがの魔王としか言いようがない。
魔王の貫禄でアゼルはすごく大人に感じるが22歳である。エリーゼと2歳差しかない。それが余計に悔しいと思った。
しかし怒ったところで何の意味もない。エリーゼが諦めたように息を吐くと、すかさずアゼルが後ろからエリーゼを抱きしめる。アゼルの逞しい胸筋が背中に触れるとエリーゼの肩が強張ってしまう。
「オレのエリーゼ、愛してるぞ。貴様がいればオレは最強だ。今世も二人で全世界を手に入れような」
その言葉に、エリーゼの高鳴っていた心臓が微かに痛みを伴った。やはりアゼルは聖女の能力を欲している。そして今世でも世界征服に乗り出す気でいる。
(アゼル、ダメなの……それはできない……)
今のエリーゼには聖女の能力がない。それに、もうカインのような犠牲者を出したくない。
呪いの効果さえなければ、この腕を解いてアゼルから逃げてやるのに。そんな葛藤すらもアゼルの悪魔の瞳に魅入られて、溺愛という呪いがエリーゼに恋の衝動をもたらす。
「エリーゼ、オレに永遠の愛と忠誠を誓え」
アゼルはいつでも愛を具現化させようとしてエリーゼに言葉を求めてくる。前世から、そういう男であった。言葉なんて不確かなものより唇で返す方がよほどいいのに。
だからこそ、ツンデレなエリーゼは言葉で返さない。
「私は、あんたなんか……」
嫌いだと言っても、好きだと言ってもアゼルを悦ばせてしまう。だからこそエリーゼは言い切る前に唇を寄せて熱い口付けを交わす。
(このままでは、だめ……アゼルが……愛しい)
熱に浮かされながらも、エリーゼは改めてアゼルの呪いから逃れる事を決意する。自分のためではなく、世界のために。



