放課後の図書室は、西日の光が差し込み、柔らかなオレンジ色と群青色が混ざり合った東雲の海のように静かだった。
「……先輩」
二人しかいない図書室。
委員会が終わり、数十分がたった。
その間ずっと椅子に腰を掛け、本を読んでいる人。
差し込む西日に、目にかかりそうなくらいの前髪と長いまつ毛が影を落とし、彼の横顔を際立たせている。
数秒の後。
「……何」
低く、ぶっきらぼうに聞こえる声。
余計な言葉はそぎ落とされたかのように簡潔。
目線をこちらに向けてすらくれない。本に目線を落としたまま。
パラパラとページを捲る音だけが響く。
けれど、不安に感じることはなかった。
少し怯えたり、怖く思ったりすることもなかった。
だって、私は知っている。
中3のあの夜、私を掬い上げてくれたこの声を、忘れるはずがなかったから。
「今日をもって、同じ担当になりました。……よろしくお願いします、先輩」
少しだけ礼をして、ゆっくりと顔を上げる。

