聖女の力のない令嬢の織った布に、冷徹公爵は恋をした。



「……私も」


 リディアは声を整えながら言った。


「最初は警戒していました。聖女の力を持つ高貴な方がなぜ私を招くのか、と」


 アルシェは少し目を細めた。反論しなかった。

「だんだん、わかってきました」


 リディアは続けた。


「素直じゃないけれど、嘘をつかない人だと。遠回しに言うけれど、肝心なことはまっすぐ言う人だと」


 リディアは少し俯いて、それからまた顔を上げた。


「そういう人のそばが、好きです。あなたのそばが」


 アルシェはしばらく、黙ってリディアを見ていた。

 それからゆっくりと手を伸ばして、リディアの手を取った。布越しでも手袋越しでもない、初めての素手だった。大きくて、少しざらついていて、温かい手だった。



「隣にいてくれるか」

「はい」


 リディアは頷いた。

 アルシェの手が、リディアの手を静かに握った。

 工房の窓から、夕方の金色の光が差し込んでいた。