僕はそんな理由を知っているから、皐月のいきすぎたシスコンにうるさく言うことはない。
それに、それほどまでに家族を大事にできる皐月は正直かっこいい。
僕らの歳だと家族との関わりを気恥ずかしく感じたりするものだけど、皐月は自分の大事なものがはっきりしているのだ。
「もういいよ、そのことは。たまたま僕の体当たりがヒットしただけだし」
皐月は事あるごとに感謝を口にする。
皐月が僕に深い信頼を置き始めたのは、その頃からだった気もする。
「感謝してるんだよ。天音になにかあったら、絶対に俺がなんとかするからな」
「はいはい、ありがと」
それもよく聞く言葉だ。
なんとなく照れくさくて、僕は話を変える。
「それよりもまずは、桜花ちゃんに送られた手紙をなんとかしないとね」
「そうだな。あれからなにかわかったか?」
「いや、特には。でも……」
と顔を上げた先に、赤と白の花が目に入った。
僕は慌てて立ち上がり、花の元へと向かう。
「天音? どうした?」
僕の後ろについてきた皐月は、不思議そうに首を傾げている。
「この花……」
「この花がどうした?」
「この花じゃないかな? 手紙に描かれていたイラストの花って」
僕は慌ててポケットから三枚の手紙を取り出す。
一枚目に赤い花、二枚目には白い花が描かれていて、目の前の花壇で咲く花にそっくりだった。
「似てるな」
「似てるよね」
「なんて名前の花だ?」
僕は葉の下に隠れてしまっている植物名の書かれたピックを読み上げる。
「この赤い花は、ベゴニア。白い花は、アナベルっていうみたいだ」
一枚目に描かれた赤い花は、おそらくベゴニアだろう。
そして二枚目に描かれた白い花は、アナベル。
「あとはこの花のあとに書かれている数字だけど……」
そんなことを話していると、四限終わりのチャイムが鳴ってしまった。
「うわっ! 僕、全然描き終わってないんだけど!?」
皐月がふっと笑いながら、「ドンマイ」と声をかけてくる。
いや、きみと話していたせいだからね?
自分だけ終わっているなんてずるい、と思いながら、慌てて絵を完成させる。
ともかく、手紙に描かれた花がなんなのかわかったのは、よかったと思う。
あとは数字の意味だけど……。



