「ほうかごかだん……、放課後 花壇……!」
「そう、放課後、花壇。あいうえお作文だな」
「さすが皐月!」
僕の言葉に、皐月は少し照れたように言う。
「朝は頭に血が上って冷静に考えられなかったが、なんてことない単純な手紙だったな」
桜花ちゃんにあてたメッセージに、皐月は不快そうに顔を歪めた。
当の本人、桜花ちゃんだけはやっぱりよくわかっていないみたいだった。
桜花ちゃんはしっかりしている子だと思っていたけれど、こういうことには鈍感みたいだ。
僕は三枚の手紙の意味を桜花ちゃんに説明してあげた。
「手紙のメッセージは、『片想いと愛の告白』、それと『ひたむきな愛』、『放課後花壇』、だ。つまりこの桜花ちゃん宛ての手紙は、嫌がらせなんかじゃなくて、ラブレターだったってこと」
「ラブレター……」
桜花ちゃんが目をぱちくりとさせる。
桜花ちゃんは美人でモテるだろうとは思っていたけれど、そういう話がなかったのは、きっと近くに皐月がいたからだ。
皐月がいる手前、わかりやすいラブレターを書くことが出来なかったのだろう。
ラブレターだとすぐにわかってしまえば、きっとシスコンの皐月は、その場で手紙を破り捨てていただろうから。
「どうする? 桜花ちゃん。放課後花壇、って書いてあるくらいだから、ラブレターを書いた人は、もう花壇にいるかもよ。放課後だし」
僕の言葉に、桜花ちゃんよりも早く口を開いたのは、皐月だった。
「行かせるわけねえだろ。そんなわけのわからない手紙で混乱させてくるようなやつ。まわりくどすぎる!」
「まぁまぁ。でも、いじめとかじゃなくてよかったよ」
僕はほっと胸をなでおろす。
花が描かれているくらいだし、最初からそこまで嫌なメッセージではない気がしていたけれどね。
「私、行ってきます」
「「え?」」
僕と皐月は、同じように驚いたような声を上げる。
なんとなく桜花ちゃんは、行かないような気がしていたのだ。
桜花ちゃんはぱたぱたと図書室を出て行ってしまう。
「追いかけるぞ!」
皐月に背中を叩かれて、僕も慌てて二人の背中を追う。
廊下は走ると怒られるから、僕たちは小走りで中庭へと向かった。
「皐月、放っておいていいんじゃないか? これは桜花ちゃんが決めることだし」
とは言いつつも、僕の心の中はなんとなくもやもやとする。
「いいわけないだろ! 俺が認めた男でないと、桜花は嫁にやらん!」
皐月はまるでお父さんのようなことを口にする。



