『にうどいかっほ
のりかばたれまう
がめもか
きひご
いいわか
だ
いしいおごん』
「一見、訳のわからない文章だが、日本語は昔、横書きは右から左に読まれていたんだ。例えば、『りんご』は『ごんり』と表記されていた」
皐月の説明に僕はなるほど、と思う。
「今の横書きの左から右へ読む、ってのが基本になったのは、たしか十八世紀の後半、オランダから蘭学を取り入れ始めた辺りのことだ。英語や外国の文章は基本的に左から右に読むだろ。それにならって、日本も横書きは左から右に読むようになったはずだ」
たしかにそんな話を、古典の授業かなにかで習った気がする。
「さすが皐月。勉強だけはできるね」
「だけってなんだ」
僕の入れた茶々を気にすることもなく、皐月は続ける。
「つまり、この三枚目の手紙を、それぞれ右から左に読むと……」
『ほっかいどうに
うまれたばかりの
かもめが
ごひき
かわいい
だ
んごおいしい』
「北海道に生まれたばかりのカモメが五匹。だんご美味しい??」
僕がそのまま読み上げてみると、やっぱり意味のわからない文章だった。
「この文章自体に意味はないんだろ。ただ、こうして左から右に読めるようにして、頭の文字を合わせた方がわかりやすい」
皐月は手紙の裏に同じ文章を書いた。
『ほっかいどうに
うまれたばかりの
かもめが
ごひき
かわいい
だ
んごおいしい』
「頭の文字を縦に読むんだよ」
「縦に……、あっ!」
僕と桜花ちゃんは、同じように口をあの字に開けた。



