「おい、天音!」
バンっと机が叩かれて、僕は目線を文庫本から声の方へと向ける。
派手な金髪が目に入って、その髪の持ち主はひどく不機嫌そうに整った顔を歪めていた。
せっかくのイケメンが台無しだなぁ、とのんきなことを考えながら、僕は彼に答える。
「おはよう、皐月。びっくりするじゃないか、そんな風にいきなり机を叩かれたら」
僕のささやかな抗議の声は、皐月には届かなかったようで、更に機嫌が悪そうに目をつりあげた。
「そんなことはどうでもいい」
「そんなことって……」
ずいぶん横暴だなぁ、と思うも、勝手知ったる中だ。これ以上僕がなにを言っても、彼は聞く耳を持たないだろう。
僕と皐月は幼少の頃からの幼なじみで、そんな皐月の性格を、僕は痛いほどよく知っている。
「で、朝からなに? 今いいところなんだけど……」
これまたささやかな抗議として、僕は読みかけのミステリの本をひらりと振って見せる。
すると皐月は、再びバンっと机を叩いた。
その手の下には三枚の紙が敷かれていた。
「なに? これ」
僕は皐月が置いた紙を手に取り、まじまじと見つめる。
一枚目には、『赤い花のイラスト、数字の1と2』。
二枚目には、『白い花のイラスト、数字の1』。
三枚目には、
『にうどいかっほ
のりかばたれまう
がめもか
きひご
いいわか
だ
いしいおごん』
と、訳のわからない文章が書かれていた。
「えっと……、なに? これ?」
僕はさっきと同じ言葉を繰り返してしまう。
皐月は不機嫌そうに舌打ちをすると言う。
「今朝登校したら、こいつが入ってたんだよ、靴箱に」
「靴箱に?」
「そう、桜花の靴箱に、だ」
「桜花ちゃんの?」
するとひょっこり、皐月の後ろから女の子が顔を出した。
女の子はきれいな長い髪をゆらして、僕を見る。



