愛しいから、どんな表情も見たい

「お前ら、言い争ってないで仕事しろ」

「俺は仕事している。してないのは、宮坂だ」

佐野先輩と梶井先輩は同期なので、いつも気軽に話しているイメージがある。

梶井先輩に注意され、佐野先輩が髪を軽くかき上げた。

「はぁ……」

ため息をついた佐野先輩を見て、「今のは茶化さないほうが良かったよね」ともう一度反省する。

きっと家に帰ってから、今の出来事についてもっと自己嫌悪に(おちい)るのだろう。

不器用な私は佐野先輩への恋心を自覚してから、変な方向のミスばかりしている気がする。

本当はもっと上手く距離を縮めたいのにな。

それでも、佐野先輩はため息をついた後、優しくこう言うのだ。

「今日は出来そうなのか?」

「え、はい……」

「なら、今日中に取り掛かってくれ。今日も取りかかれないほど、別の仕事が溜まっているならちゃんと相談してほしい」

「分かりました」

本当に優しい先輩なんだと思う。

この人と付き合いたいと思うのに、怖がりで行動に移せない自分が嫌になる時もある。