県大会の会場は、いつもより静かに感じた。
いや、違う。
静かなのは、私たちのほうだった。
神代高校男子バスケットボール部。
ロイヤルブルーと黄色のユニフォーム。
その色を見るだけで、少しだけ背筋が伸びる。
あの崩壊を見たチームとは思えないほど、今は形があった。
るきが戻ってから、チームは変わった。
正確には、“戻った”んじゃない。
“繋がるようになった”だけ。
しょうへいは、全部をやらなくなった。
代わりに、
信じることをやるようになった。
「任せる」
その一言が増えた。
その分、チームは少しだけ落ち着いた。
りゅうとは、エースとして迷わなくなった。
ボールを持った瞬間の判断が早い。
りょうは相変わらず安定している。
でも、その安定が“支え”として機能するようになった。
らいは守備で試合を止める。
派手じゃない。
でも、流れを変える。
たけるは、誰よりも走る。
でも今は“置いていかれていない”。
全部が少しずつ、噛み合っている。
そして中心にいるのは、やっぱりるきだった。
完全じゃない体。
それでも、コートに立てば空気が変わる。
視線が一段だけ高い。
全部を一歩早く見ている。
ゆなが記録席でペンを握る。
「……ちゃんと、チームになってる」
そう思った。
県大会は、順調だった。
大きな崩れはない。
でも圧倒でもない。
“勝てる試合を勝っている”。
それが今の神代高校だった。
準決勝。
相手は強豪校。
序盤から点差は離れない。
むしろ、少し押されている。
ベンチの空気が少し重くなる。
しょうへいが声を出す。
「落ち着け」
その声に、みんなが一度戻る。
るきがコートを見る。
小さく言う。
「まだいける」
その一言で、空気が変わる。
そこからだった。
一気に繋がり始める。
パスが通る。
守備が揃う。
リバウンドが取れる。
全部が“遅れなくなる”。
気づいたときには、逆転していた。
試合終了。
勝利。
でも、誰も大きく喜ばない。
ただ、静かにハイタッチをする。
それだけだった。
ゆなは思った。
「このチーム、勝っても騒がないんだ」
それが少しだけ怖かった。
インターハイ予選。
会場は、もっと重い空気だった。
ここで終わるか、続くか。
それだけの場所。
試合前。
しょうへいが言う。
「行くぞ」
でも、誰も返事はしない。
ただ頷く。
それで十分だった。
試合開始。
最初から激しい。
一進一退。
点が離れない。
どちらも崩れない。
でも、少しだけ違った。
神代は“崩れない側”になっていた。
るきがコートを見ている。
「あと少し」
小さく言う。
その言葉に、全員が反応する。
しょうへいがボールを持つ。
一瞬だけ止まる。
相手ディフェンスが寄る。
でも、前と違う。
迷わない。
パス。
りゅうと。
シュート。
決まる。
ゆなが息を止める。
「今の……」
もう、崩れない。
でも同時に分かっていた。
まだ“完成”じゃない。
試合終了。
勝利。
インターハイ出場決定。
でも、誰も泣かない。
誰も叫ばない。
ただ、少しだけ笑う。
その笑いが、一番怖かった。
ゆなはノートに書く。
「勝っているのに、まだ終わっていない」
ページを閉じる。
でも、もう気づいている。
このチームはまだ途中だ。
そして、その“途中”のまま、あの日に向かっていく。
88-82へ。
いや、違う。
静かなのは、私たちのほうだった。
神代高校男子バスケットボール部。
ロイヤルブルーと黄色のユニフォーム。
その色を見るだけで、少しだけ背筋が伸びる。
あの崩壊を見たチームとは思えないほど、今は形があった。
るきが戻ってから、チームは変わった。
正確には、“戻った”んじゃない。
“繋がるようになった”だけ。
しょうへいは、全部をやらなくなった。
代わりに、
信じることをやるようになった。
「任せる」
その一言が増えた。
その分、チームは少しだけ落ち着いた。
りゅうとは、エースとして迷わなくなった。
ボールを持った瞬間の判断が早い。
りょうは相変わらず安定している。
でも、その安定が“支え”として機能するようになった。
らいは守備で試合を止める。
派手じゃない。
でも、流れを変える。
たけるは、誰よりも走る。
でも今は“置いていかれていない”。
全部が少しずつ、噛み合っている。
そして中心にいるのは、やっぱりるきだった。
完全じゃない体。
それでも、コートに立てば空気が変わる。
視線が一段だけ高い。
全部を一歩早く見ている。
ゆなが記録席でペンを握る。
「……ちゃんと、チームになってる」
そう思った。
県大会は、順調だった。
大きな崩れはない。
でも圧倒でもない。
“勝てる試合を勝っている”。
それが今の神代高校だった。
準決勝。
相手は強豪校。
序盤から点差は離れない。
むしろ、少し押されている。
ベンチの空気が少し重くなる。
しょうへいが声を出す。
「落ち着け」
その声に、みんなが一度戻る。
るきがコートを見る。
小さく言う。
「まだいける」
その一言で、空気が変わる。
そこからだった。
一気に繋がり始める。
パスが通る。
守備が揃う。
リバウンドが取れる。
全部が“遅れなくなる”。
気づいたときには、逆転していた。
試合終了。
勝利。
でも、誰も大きく喜ばない。
ただ、静かにハイタッチをする。
それだけだった。
ゆなは思った。
「このチーム、勝っても騒がないんだ」
それが少しだけ怖かった。
インターハイ予選。
会場は、もっと重い空気だった。
ここで終わるか、続くか。
それだけの場所。
試合前。
しょうへいが言う。
「行くぞ」
でも、誰も返事はしない。
ただ頷く。
それで十分だった。
試合開始。
最初から激しい。
一進一退。
点が離れない。
どちらも崩れない。
でも、少しだけ違った。
神代は“崩れない側”になっていた。
るきがコートを見ている。
「あと少し」
小さく言う。
その言葉に、全員が反応する。
しょうへいがボールを持つ。
一瞬だけ止まる。
相手ディフェンスが寄る。
でも、前と違う。
迷わない。
パス。
りゅうと。
シュート。
決まる。
ゆなが息を止める。
「今の……」
もう、崩れない。
でも同時に分かっていた。
まだ“完成”じゃない。
試合終了。
勝利。
インターハイ出場決定。
でも、誰も泣かない。
誰も叫ばない。
ただ、少しだけ笑う。
その笑いが、一番怖かった。
ゆなはノートに書く。
「勝っているのに、まだ終わっていない」
ページを閉じる。
でも、もう気づいている。
このチームはまだ途中だ。
そして、その“途中”のまま、あの日に向かっていく。
88-82へ。


