天気……今日は二十四節気のなかの『小寒』。寒さがかなり厳しくなる時期だ。『小寒の氷、大寒に解く』ということわざがあるが、ぼくは、そのことわざのことを、ふっと思い出した。小寒のほうが大寒よりも実際には寒いという意味だから、一年中で今が一番寒い時季だといえる。うちの外に出て、空を見上げると、雪の結晶に過冷却の水滴がついてできた白色不透明の氷の粒が空から絶え間なく落ちているのが目に入った。
シャオパイが飼ってもらえるようになった女の人のうちで、ぼくもお相伴にあずかって楽しいティータイムを過ごさせてもらってから一週間がたったが、ぼくは今でもずっと、あの女の人のことを思っていた。ぼくがこれまで出会ったことがない謎めいた雰囲気のある人で、その雰囲気がどこから生じているのか、まだよく分からないでいたからだ。
今朝目がさめると、ぼくはいつものように湖畔に沿って散歩に出かけた。すると向こうから老いらくさんがやってきた。
「笑い猫、おはよう。今朝はあられが降っていて寒いなあ」
老いらくさんがそう言った。
「そうですね。雪よりも固いものが降っています」
ぼくはそう答えた。
「そうだな。空気中の水蒸気が急に凍って、空から落ちてくるので固いのだよ」
老いらくさんがそう言った。
老いらくさんはそのあと、
「最近、シャオパイはどうしているかなあ」
と、ふっと言った。
「そうですね、最近、シャオパイは公園にジョギングにこないから、ぼくも久しく会っていません。どうしているのか気になります」
ぼくはそう答えた。
「いつかまた行ってみないか」
老いらくさんがそう言った。
「そうですね。ぼくもそう思っていたところです」
ぼくはそう答えた。すると老いらくさんが
「いつ行こうか。この前と同じようにお昼過ぎのティータイムのころに行こうか」
と言った。ぼくはそれを聞いて、老いらくさんの下心を見抜いて、くすくす笑いながら
「シャオパイに会うためではなくて、花餅を食べるのが目的ではないのですか」
と言った。すると老いらくさんが、むっとした表情をして
「何を言うか、わしはもう年を取っているから、食い意地は張っていない」
と答えた。
「だったら、どうしてティータイムのころに行きたいと思っているのですか」
ぼくは老いらくさんに聞き返した。
「一日のうちで一番リラックスしているのはティータイムの時間だし、その時は、心がおおらかになっていて、わしを見ても追い立てることはしないと思うからだ」
老いらくさんがそう言った。ぼくはそれを聞いて
「あの人は普通の人とは違いますから、ネズミを見ても、いやな気持ちになる人ではないと思います」
と老いらくさんにそう言った。
「そうか、それだったら、朝のうちにシャオパイに会いに行こうか。ティータイムの時に限らず、ネズミにたいして寛容な態度で接してくれることが分かったら、わしはとてもうれしい。これまでそんな人を見たことがなかったから」
老いらくさんがそう言った。
「分かりました。ではそうしましょう。ぼくはまだ朝ご飯を食べていないから、これからうちに帰って食べてきます。それから行きましょう」
ぼくは老いらくさんにそう言った。すると老いらくさんが
「わしもまだ朝ご飯を食べていないから、これからうちへ帰って、食べてくる。九時ごろ、眼鏡橋の上でまた会って、それからいっしょにシャオパイのうちへ行こう」
老いらくさんがそう言った。
「分かりました。そうしましょう」
ぼくはそう答えた。それからまもなく、ぼくと老いらくさんはいったん別れて、それぞれのうちへ帰っていった。
ご飯を食べたあと眼鏡橋の上までくると、老いらくさんはもうすでに来ていた。ぼくと老いらくさんは、そのあとすぐに公園を出て、町の中に入っていった。町の郊外にあるシャオパイのうちの前に着いたあと、ぼくと老いらくさんは、しばらく花壇の中から、なかの様子をうかがっていた。すると三十分ほどしてから、玄関のドアが開いて、なかからシャオパイが出てきた。口にゴミ袋をくわえていた。家の外にあるごみ置き場の中にゴミ袋を入れると、シャオパイはまた玄関のほうに戻っていた。ぼくと老いらくさんが来ていることに気がついていなかったように見えたから、ぼくは
「シャオパイ」
と声をかけた。するとシャオパイがびっくりしたような顔をして、ぼくたちのほうを振り返った。
「来ていたの。全然気がつかなかった」
シャオパイがそう答えた。
「おまえはゴミを捨てに行くこともできるようになったのか。たいしたものだ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「ぼくにできることは何でもしようと思っているの」
シャオパイがそう答えた。
「ほかにはどんなことを手伝っているのか」
ぼくはシャオパイに聞いた。
「郵便受けの中から手紙を取り出して、家の中に持っていくこともしている」
シャオパイがそう答えた。
「そんなこともしているのか」
ぼくは感心したような声でそう言った。玄関のすぐ横に緑色の郵便受けがあって、その下に台が置いてあるのが見えた。
「あの台に乗って、後ろ足で立ったら、郵便受けまで届くから、中に入っている手紙を取り出すことができる」
シャオパイがそう言った。シャオパイはそれからまもなく、ぼくたちのそばを離れて郵便受けの下まで行って、台の上に乗って、郵便受けの箱を開けて、中に入っていた手紙を口にくわえながら下に降りてきた。そのあとシャオパイは、ぼくと老いらくさんに会釈をして、うちの中に入っていった。
しばらくするとシャオパイがまたうちの中から出てきた。首に買い物袋を提げていた。それを見て、ぼくはシャオパイに
「今日もまた桜餅を買いに行くのか」
と聞いた、するとシャオパイがうなずいた。
「そうよ。でも今日はそれだけではないよ。郵便局に行って、手紙を出して、そのあと新聞を買いに行かなければならない。桜餅を買うのは、それからです」
シャオパイがそう言った。
「おまえは手紙を出したり、新聞を買うこともできるのか」
ぼくはシャオパイにそう聞いた。
「できるよ。買い物袋の中にメモ用紙と財布が入っているから、郵便局や新聞売り場に行って、それを見せれば分かってもらえます」
シャオパイがそう言った。
「郵便局や新聞売り場はどこにあるのか、おまえは知っているのか」
ぼくはシャオパイに聞いた。
「郵便局の前には緑色のポストがあるから、それを目印にして、中に入っていけばいいです。新聞売り場の前には新聞が山積みされていますから、すぐに分かります」
シャオパイがそう答えた。
「そうか。もうすっかり仕事に慣れたみたいだな」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「ぼくは毎日、たくさんの手紙を持って郵便局に行っているから、郵便局の人と顔なじみになりました。新聞売りの人とも顔なじみになったので、ぼくが新聞売り場に行っただけで、どの新聞を買いたいと思っているのか、メモ用紙を見なくても分かってくれるようになりました」
シャオパイかそう言った。
「そうか、それはよかったな。しかし、それにしても、その女の人はどうして、毎日、そんなに多くの手紙を出しているのだろう」
ぼくはけげんそうな顔をしながら、そう言った。するとシャオパイが
「毎日、たくさんの手紙が届くので、その返事を書いているのだと思います」
と答えた。それを聞いて、この女の人は、もしかしたら、とても人気のある作家さんかもしれないと思った。読者からファンレターが毎日、山のようにたくさん届くので、それを読んで、感謝の手紙を書いているのではないかと、ぼくは思った。
「午後のティータイムのあと、女の人は、届いた手紙を読み始めます。読んでいる時の女の人の顔は喜びにあふれていて、しあわせな気持ちと楽しさで心が満たされているのが、ぼくにも伝わってきます。ぼくにとって、一日のうちで、一番わくわくするのはその時です。女の人の表情を見ながら、ぼくは思わずうっとりと陶酔しています」
シャオパイがそう答えた。
「女の人に手紙を書いている人は、どんな人か分かるか」
ぼくはシャオパイに聞いた。するとシャオパイが
「分かりません。でも、子どもが描いたような絵が手紙の中に、たくさん入っていたから、子どもではないかと思います」
と答えた。それを聞いて、ぼくは、この家の居間の壁に飾ってあった写真のことを、ふっと思い出した。女の人がたくさんの子どもといっしょに写っている集合写真が大切に飾ってあったからだ。写真の中には白人や黒人の子どもの姿も写っていた。それを見て初め、ぼくは、この女の人は語学教師かもしれないと思っていた。そのあと本箱の上に、粘土で作った動物や、木で作った人形や、いろいろな形をした貝殻が置かれているのを見て、保育士かもしれないと思っていた。でも今はそうではなくて童話作家かもしれないと、ぼくは思っていた。外国の子どもにも本が読まれていて、国の内外に多くの愛読者がいて、そのために毎日たくさんの手紙が来るのではないかと思ったからだ。いずれにせよ、謎に包まれた女の人に、ぼくはますます魅かれていたから、この女の人のことをもっと深く知りたいと思うようになっていた。
ぼくと老いらくさんはそれからまもなくシャオパイといっしょに、郵便局に出かけていった。シャオパイは郵便局がどこにあるのか知っていたので、迷わずに行くことができた。郵便局に着くと、局員がシャオパイの姿を見て、首にかけた袋の中から手紙を取り出して、切手を貼っていた。局員はそのあと財布の中から切手代をいただいてから、袋の中に財布を戻していた。郵便局で手紙を出し終えたあと、シャオパイは露店に出ている新聞売り場に行った。シャオパイの姿を見ただけで、露天商はすぐに、シャオパイがどの新聞を買いにきたのか分かったので、袋の中に新聞を入れてから代金を財布の中から受け取って、財布を袋の中に戻していた。新聞を買い終わったあと、シャオパイは花餅を買いにいった。今日もとても長い列ができていたので、シャオパイはきちんと列にならんで順番がくるのを、おとなしく待っていた。三十分ほど待って、ようやく買うことができたので、シャオパイは、ほっとしたような顔をしていた。ぼくはシャオパイに
「今日は、あちこち出かけて、いろいろなことをしたから、疲れただろう」
と言って、シャオパイの苦労をねぎらってあげた。するとシャオパイが首を横に振って
「女の人の手足となって役に立っている喜びのほうが大きいから、ぼくは少しも疲れていないよ。ぼくは今、この仕事に生きがいを感じている」
と言った。
「そうか。おまえはそう思っているのか」
ぼくはそう答えた。シャオパイが言ったことを、ぼくは老いらくさんに伝えた。すると老いらくさんが感心したような顔をしながら
「シャオパイはたいしたものだな」
と言った。シャオパイがそのあと
「花餅がまだ温かいうちに、ぼくは急いでうちへ帰って女の人に届けることにする」
と言った。
「そうか。車に気をつけて帰るのだよ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「分かった。笑い猫も気をつけて、公園に帰って」
シャオパイがそう言った。
「ありがとう」
ぼくはシャオパイにそう答えた。それからまもなくシャオパイは脱兎のごとく、ぼくと老いらくさんの前から走り去っていった。
シャオパイが飼ってもらえるようになった女の人のうちで、ぼくもお相伴にあずかって楽しいティータイムを過ごさせてもらってから一週間がたったが、ぼくは今でもずっと、あの女の人のことを思っていた。ぼくがこれまで出会ったことがない謎めいた雰囲気のある人で、その雰囲気がどこから生じているのか、まだよく分からないでいたからだ。
今朝目がさめると、ぼくはいつものように湖畔に沿って散歩に出かけた。すると向こうから老いらくさんがやってきた。
「笑い猫、おはよう。今朝はあられが降っていて寒いなあ」
老いらくさんがそう言った。
「そうですね。雪よりも固いものが降っています」
ぼくはそう答えた。
「そうだな。空気中の水蒸気が急に凍って、空から落ちてくるので固いのだよ」
老いらくさんがそう言った。
老いらくさんはそのあと、
「最近、シャオパイはどうしているかなあ」
と、ふっと言った。
「そうですね、最近、シャオパイは公園にジョギングにこないから、ぼくも久しく会っていません。どうしているのか気になります」
ぼくはそう答えた。
「いつかまた行ってみないか」
老いらくさんがそう言った。
「そうですね。ぼくもそう思っていたところです」
ぼくはそう答えた。すると老いらくさんが
「いつ行こうか。この前と同じようにお昼過ぎのティータイムのころに行こうか」
と言った。ぼくはそれを聞いて、老いらくさんの下心を見抜いて、くすくす笑いながら
「シャオパイに会うためではなくて、花餅を食べるのが目的ではないのですか」
と言った。すると老いらくさんが、むっとした表情をして
「何を言うか、わしはもう年を取っているから、食い意地は張っていない」
と答えた。
「だったら、どうしてティータイムのころに行きたいと思っているのですか」
ぼくは老いらくさんに聞き返した。
「一日のうちで一番リラックスしているのはティータイムの時間だし、その時は、心がおおらかになっていて、わしを見ても追い立てることはしないと思うからだ」
老いらくさんがそう言った。ぼくはそれを聞いて
「あの人は普通の人とは違いますから、ネズミを見ても、いやな気持ちになる人ではないと思います」
と老いらくさんにそう言った。
「そうか、それだったら、朝のうちにシャオパイに会いに行こうか。ティータイムの時に限らず、ネズミにたいして寛容な態度で接してくれることが分かったら、わしはとてもうれしい。これまでそんな人を見たことがなかったから」
老いらくさんがそう言った。
「分かりました。ではそうしましょう。ぼくはまだ朝ご飯を食べていないから、これからうちに帰って食べてきます。それから行きましょう」
ぼくは老いらくさんにそう言った。すると老いらくさんが
「わしもまだ朝ご飯を食べていないから、これからうちへ帰って、食べてくる。九時ごろ、眼鏡橋の上でまた会って、それからいっしょにシャオパイのうちへ行こう」
老いらくさんがそう言った。
「分かりました。そうしましょう」
ぼくはそう答えた。それからまもなく、ぼくと老いらくさんはいったん別れて、それぞれのうちへ帰っていった。
ご飯を食べたあと眼鏡橋の上までくると、老いらくさんはもうすでに来ていた。ぼくと老いらくさんは、そのあとすぐに公園を出て、町の中に入っていった。町の郊外にあるシャオパイのうちの前に着いたあと、ぼくと老いらくさんは、しばらく花壇の中から、なかの様子をうかがっていた。すると三十分ほどしてから、玄関のドアが開いて、なかからシャオパイが出てきた。口にゴミ袋をくわえていた。家の外にあるごみ置き場の中にゴミ袋を入れると、シャオパイはまた玄関のほうに戻っていた。ぼくと老いらくさんが来ていることに気がついていなかったように見えたから、ぼくは
「シャオパイ」
と声をかけた。するとシャオパイがびっくりしたような顔をして、ぼくたちのほうを振り返った。
「来ていたの。全然気がつかなかった」
シャオパイがそう答えた。
「おまえはゴミを捨てに行くこともできるようになったのか。たいしたものだ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「ぼくにできることは何でもしようと思っているの」
シャオパイがそう答えた。
「ほかにはどんなことを手伝っているのか」
ぼくはシャオパイに聞いた。
「郵便受けの中から手紙を取り出して、家の中に持っていくこともしている」
シャオパイがそう答えた。
「そんなこともしているのか」
ぼくは感心したような声でそう言った。玄関のすぐ横に緑色の郵便受けがあって、その下に台が置いてあるのが見えた。
「あの台に乗って、後ろ足で立ったら、郵便受けまで届くから、中に入っている手紙を取り出すことができる」
シャオパイがそう言った。シャオパイはそれからまもなく、ぼくたちのそばを離れて郵便受けの下まで行って、台の上に乗って、郵便受けの箱を開けて、中に入っていた手紙を口にくわえながら下に降りてきた。そのあとシャオパイは、ぼくと老いらくさんに会釈をして、うちの中に入っていった。
しばらくするとシャオパイがまたうちの中から出てきた。首に買い物袋を提げていた。それを見て、ぼくはシャオパイに
「今日もまた桜餅を買いに行くのか」
と聞いた、するとシャオパイがうなずいた。
「そうよ。でも今日はそれだけではないよ。郵便局に行って、手紙を出して、そのあと新聞を買いに行かなければならない。桜餅を買うのは、それからです」
シャオパイがそう言った。
「おまえは手紙を出したり、新聞を買うこともできるのか」
ぼくはシャオパイにそう聞いた。
「できるよ。買い物袋の中にメモ用紙と財布が入っているから、郵便局や新聞売り場に行って、それを見せれば分かってもらえます」
シャオパイがそう言った。
「郵便局や新聞売り場はどこにあるのか、おまえは知っているのか」
ぼくはシャオパイに聞いた。
「郵便局の前には緑色のポストがあるから、それを目印にして、中に入っていけばいいです。新聞売り場の前には新聞が山積みされていますから、すぐに分かります」
シャオパイがそう答えた。
「そうか。もうすっかり仕事に慣れたみたいだな」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「ぼくは毎日、たくさんの手紙を持って郵便局に行っているから、郵便局の人と顔なじみになりました。新聞売りの人とも顔なじみになったので、ぼくが新聞売り場に行っただけで、どの新聞を買いたいと思っているのか、メモ用紙を見なくても分かってくれるようになりました」
シャオパイかそう言った。
「そうか、それはよかったな。しかし、それにしても、その女の人はどうして、毎日、そんなに多くの手紙を出しているのだろう」
ぼくはけげんそうな顔をしながら、そう言った。するとシャオパイが
「毎日、たくさんの手紙が届くので、その返事を書いているのだと思います」
と答えた。それを聞いて、この女の人は、もしかしたら、とても人気のある作家さんかもしれないと思った。読者からファンレターが毎日、山のようにたくさん届くので、それを読んで、感謝の手紙を書いているのではないかと、ぼくは思った。
「午後のティータイムのあと、女の人は、届いた手紙を読み始めます。読んでいる時の女の人の顔は喜びにあふれていて、しあわせな気持ちと楽しさで心が満たされているのが、ぼくにも伝わってきます。ぼくにとって、一日のうちで、一番わくわくするのはその時です。女の人の表情を見ながら、ぼくは思わずうっとりと陶酔しています」
シャオパイがそう答えた。
「女の人に手紙を書いている人は、どんな人か分かるか」
ぼくはシャオパイに聞いた。するとシャオパイが
「分かりません。でも、子どもが描いたような絵が手紙の中に、たくさん入っていたから、子どもではないかと思います」
と答えた。それを聞いて、ぼくは、この家の居間の壁に飾ってあった写真のことを、ふっと思い出した。女の人がたくさんの子どもといっしょに写っている集合写真が大切に飾ってあったからだ。写真の中には白人や黒人の子どもの姿も写っていた。それを見て初め、ぼくは、この女の人は語学教師かもしれないと思っていた。そのあと本箱の上に、粘土で作った動物や、木で作った人形や、いろいろな形をした貝殻が置かれているのを見て、保育士かもしれないと思っていた。でも今はそうではなくて童話作家かもしれないと、ぼくは思っていた。外国の子どもにも本が読まれていて、国の内外に多くの愛読者がいて、そのために毎日たくさんの手紙が来るのではないかと思ったからだ。いずれにせよ、謎に包まれた女の人に、ぼくはますます魅かれていたから、この女の人のことをもっと深く知りたいと思うようになっていた。
ぼくと老いらくさんはそれからまもなくシャオパイといっしょに、郵便局に出かけていった。シャオパイは郵便局がどこにあるのか知っていたので、迷わずに行くことができた。郵便局に着くと、局員がシャオパイの姿を見て、首にかけた袋の中から手紙を取り出して、切手を貼っていた。局員はそのあと財布の中から切手代をいただいてから、袋の中に財布を戻していた。郵便局で手紙を出し終えたあと、シャオパイは露店に出ている新聞売り場に行った。シャオパイの姿を見ただけで、露天商はすぐに、シャオパイがどの新聞を買いにきたのか分かったので、袋の中に新聞を入れてから代金を財布の中から受け取って、財布を袋の中に戻していた。新聞を買い終わったあと、シャオパイは花餅を買いにいった。今日もとても長い列ができていたので、シャオパイはきちんと列にならんで順番がくるのを、おとなしく待っていた。三十分ほど待って、ようやく買うことができたので、シャオパイは、ほっとしたような顔をしていた。ぼくはシャオパイに
「今日は、あちこち出かけて、いろいろなことをしたから、疲れただろう」
と言って、シャオパイの苦労をねぎらってあげた。するとシャオパイが首を横に振って
「女の人の手足となって役に立っている喜びのほうが大きいから、ぼくは少しも疲れていないよ。ぼくは今、この仕事に生きがいを感じている」
と言った。
「そうか。おまえはそう思っているのか」
ぼくはそう答えた。シャオパイが言ったことを、ぼくは老いらくさんに伝えた。すると老いらくさんが感心したような顔をしながら
「シャオパイはたいしたものだな」
と言った。シャオパイがそのあと
「花餅がまだ温かいうちに、ぼくは急いでうちへ帰って女の人に届けることにする」
と言った。
「そうか。車に気をつけて帰るのだよ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「分かった。笑い猫も気をつけて、公園に帰って」
シャオパイがそう言った。
「ありがとう」
ぼくはシャオパイにそう答えた。それからまもなくシャオパイは脱兎のごとく、ぼくと老いらくさんの前から走り去っていった。

