天気……今日は昨日よりもずっと寒かった。朝、目が覚めて外を見たら、地面には昨日よりもさらに多くの雪が積もっていた。
今朝早く、シャオパイが、うちにやってきた。
「おはよう」
ぼくはシャオパイに声をかけた。
「おはよう、笑い猫」
シャオパイが、くぐもった声で、そう答えた。
「どうしたのだ。元気がなさそうだな。何か心配なことでもあるのか」
ぼくはシャオパイに聞いた。
するとシャオパイは、姿勢を正して、ぼくの目をじっと見ながら
「昨日、あの女の人のうちに行ったら、大変なことが起きていた」
と言った。
「えっ、何かあったのか?」
ぼくはびっくりして、すぐに聞き返した。
「家の裏のほうから不思議なにおいが漂ってきたので、何のにおいだろうと思って裏に行ったら庭の中に、あの女の人が倒れていた。においは女の人の鼻や口から出ていた。呼吸はしていたけど、虫の息で意識はなかった」
シャオパイがそう答えた。ぼくはそれを聞いて、どきりとして
「それでどうしたのか?」
と、間髪を入れずに聞き返した。
「意識はなかったけど、心臓がまだ動いていたから死んでいないことが分かった。ぼくはすぐに誰かに知らせなければと思って、大きな声で、家の前で、ほえつづけた。すると二十分ぐらいしてから、隣の人がやってきて、裏庭の中に倒れている女の人に気がついた。そのあとしばらくしてから救急車がやってきて、女の人は救急車に乗せられて、病院に運ばれていった」
シャオパイがそう答えた。
「そうだったのか。もしおまえが、あの家に行って、女の人を発見していなかったら、この寒さのなかで、その女の人は夜間に凍死していたかもしれない。おまえは人助けをしたのだ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「ぼくは、あの女の人と何か目に見えない糸で結ばれているのかもしれない」
シャオパイが感慨深そうな顔をしながらそう言った。
「そうかもしれないな。『虫の知らせ』いう言葉があるが、おまえが昨日、その女の人のうちに行ったのは、偶然ではなくて、『虫の知らせ』があったからかもしれないな」
ぼくはシャオパイにそう言った。
するとシャオパイがけげんそうな顔をしながら
「『虫の知らせ?』」
と聞き返してきた。ぼくはうなずいた。
「虫の声は何も聞こえなかったけど……」
シャオパイが小首をかしげていた。
「そうではない。何かちょっとしたことで、不幸な出来事などを予感することを『虫の知らせ』と言うのだ」
ぼくはシャオパイにそう説明した。するとシャオパイがうずいていた。
「おまえが『虫の知らせ』を感じたのは、もしかしたら神様が、おまえと、その女の人を引き合わせてくれたからかもしれない」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「そうかもしれないですね。でも、ぼくが行ったとき、まだ死んでいなかったからよかったです。虫の息ではあったけども、まだ生きていたから助けることができた。あの女の人が元気になってくれることを、ぼくは心から願っている」
シャオパイがそう答えた。
「ぼくもそう願っている」
ぼくはシャオパイにそう答えた。
「あの女の人は、しばらくはうちに帰ってこないと思うから、留守の間、ぼくが、あの家をしっかり守ってあげようと思う」
シャオパイがそう言った。ぼくはそれを聞いて
「おまえは、もうあの家で飼われている番犬のようだな」
と言って笑った。
「あの女の人はロウバイの花の開花を待ちわびていたから、元気になって病院から帰ってきた時に、びっくりするように、家の中全体をロウバイの花のにおいで、ぷんぷんさせておこうと思っている」
シャオパイがそう言った。それを聞いて、ぼくはシャオパイの心遣いに感動した。
「それはいいね。でも家の中には、どうやって入っていけばいいのだ?」
ぼくはげんに思って、シャオパイに聞いた。
「玄関の鍵がかかっていなかったから、中に入ることができる」
シャオパイがそう答えた。ぼくはうなずいた。
「そうか。でも、もう一つ問題がある。梅園の中のロウバイの花を、おまえはどうやって、あの女の人の家まで運んでいくつもりでいるのか」
ぼくはシャオパイにそう聞いた。シャオパイはしばらく考えてから
「フェイナに頼んで、カートを梅園の中まで押してきてもらいましょう。地面に落ちたばかりのロウバイの花をたくさん拾い集めてから、カートに積んで、あの女の人のうちまで持っていきましょう」
シャオパイがそう提案した。
「そうだね。それは名案だね」
ぼくはそう答えた。
ぼくとシャオパイはそれからまもなく、翠湖公園を出てフェイナのうちに行って、女の人のことを話した。するとフェイナが
「その女の人はシャオパイと前世から深い縁で結ばれていたのかもしれないわね」
と言った。ぼくはそのあとフェイナに
「ロウバイの花を、その女の人のうちまで運ぶので、カートを借りて翠湖公園の梅園まで押してきてくれないか」
と言った。するとフェイナが
「分かったわ。今夜、近くのスーパーが閉まったあと、スーパーの前にあるカートを借りて、翠湖公園まで押していくわ」
と言ってくれた。
ぼくとシャオパイはそのあとフェイナと別れて翠湖公園に戻ってきた。
「ぼくはこれから、うちに帰って、ロウバイの花を入れるための袋を持ってくるよ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「分かった。ぼくは一足先に梅園に行って、落ちているロウバイの花を集めておくよ」
シャオパイがそう言った。
「分かった。すぐ戻ってくる」
ぼくはシャオパイにそう言うと、急いで、うちへ帰っていった。うちの中には、杜真子や馬小跳たちがキャットフードなどの食べ物を入れて持ってきてくれたビニール袋がいくつもあったので、首にかけて、梅園に戻ってきた。あずま屋の近くで、シャオパイが一生懸命、花を集める作業をしていた。ぼくの姿を見ると、駆け寄ってきて
「風で散った花を集めているけど、まだ咲き始めたばかりだから、地面に落ちている花は少ない」
と言った。
「そうか、木に登っていって、咲いている花を落とすのはよくないしなあ……、どうしよう」
ぼくはそう思って思案に暮れていた。すると、その時、あずま屋から少し離れたところに軽トラックが一台停まっていて、その近くで二人の男の人が、ロウバイの木の剪定作業をおこなっている姿が目に入った。伸びすぎた枝をはさみで、地面に切り落していた。ぼくはそれを見て、シャオパイに
「あそこに行ってみよう。切り落とされた枝の中に花がついている枝があったら、その枝を、この袋の中に入れるのだ」
と言った。
「分かりました。それは名案です」
シャオパイがそう言って、ぼくの提案に同意した。
ぼくとシャオパイはそれからまもなく剪定作業がおこなわれているところまで行った。ぼくが期待していたとおりに、切り落とされたロウバイの枝の中には花が咲きかけているものがあったから、ぼくもシャオパイも、うれしくなって、その枝を口でくわえてから、持ってきた袋の中に入れていた。枝を袋の中に入れるたびに、ロウバイのいいかおりが袋の中にいっぱいに広がっていって、ぼくもシャオパイもとてもしあわせな気持ちになることができた。ぼくとシャオパイが剪定されたロウバイの枝を袋の中に入れているのを見て、作業員が、びっくりしたような顔をしていた。
「ゴミ集めをする犬や猫を、おれは初めて見た」
「たいしたものだ」
二人の作業員は顔を見合わせながら、そう言っていた。
ぼくとシャオパイがロウバイの枝を袋の中に入れているのを見て、花見にやってきた人たちもびっくりして、ぼくたちのすぐ近くに寄ってきて、スマートフォンを取り出して、写真に収めていた。
「これは、ほのぼのとして話題性がある光景だから新聞社やテレビ局の人に知らせませんか」
「そうですね。開花したロウバイの花の下で、犬と猫がゴミ拾いをしている姿を見たら、だれもが癒されますよね。ぜひ新聞社やテレビ局の人に知らせましょう」
写真を撮った女の人たちが、そう話していた。ぼくはシャオパイに、人が話している話の内容を話してあげた。するとシャオパイは、けげんそうな顔をしながら
「ぼくたちはゴミ拾いをしているわけではないのにね」
と言った。
「そうだよね。でも人の目にはゴミ拾いをしている感心な犬と猫に見えたのかもしれない」
ぼくはそう答えた。シャオパイがうなずいた。
ぼくとシャオパイは持ってきた袋に木の枝をいっぱい入れたあとは、人に持っていかれないように、ずっと袋の近くにいて番をしていた。
夕方近く、新聞社やテレビ局の人がやってきて、ぼくとシャオパイの姿を見つけて近づいてきた。リポーターが実況中継を始めて、カメラマンが写真を撮り始めた。ぼくもシャオパイも人の注目を浴びることはあまり望んではいなかったから逃げようかと思った。でも逃げているうちに、せっかく集めた木の枝をどこかに持っていかれたら大変だと思ったので逃げないでじっとしていた。それからまもなく日が暮れて、新聞社やテレビ局の人は帰っていった。梅園の中から人の姿も消えて静かになった。ぼくはそのあとシャオパイと別れて、うちへ帰っていった。シャオパイは、あずま屋に帰っていった。
今朝早く、シャオパイが、うちにやってきた。
「おはよう」
ぼくはシャオパイに声をかけた。
「おはよう、笑い猫」
シャオパイが、くぐもった声で、そう答えた。
「どうしたのだ。元気がなさそうだな。何か心配なことでもあるのか」
ぼくはシャオパイに聞いた。
するとシャオパイは、姿勢を正して、ぼくの目をじっと見ながら
「昨日、あの女の人のうちに行ったら、大変なことが起きていた」
と言った。
「えっ、何かあったのか?」
ぼくはびっくりして、すぐに聞き返した。
「家の裏のほうから不思議なにおいが漂ってきたので、何のにおいだろうと思って裏に行ったら庭の中に、あの女の人が倒れていた。においは女の人の鼻や口から出ていた。呼吸はしていたけど、虫の息で意識はなかった」
シャオパイがそう答えた。ぼくはそれを聞いて、どきりとして
「それでどうしたのか?」
と、間髪を入れずに聞き返した。
「意識はなかったけど、心臓がまだ動いていたから死んでいないことが分かった。ぼくはすぐに誰かに知らせなければと思って、大きな声で、家の前で、ほえつづけた。すると二十分ぐらいしてから、隣の人がやってきて、裏庭の中に倒れている女の人に気がついた。そのあとしばらくしてから救急車がやってきて、女の人は救急車に乗せられて、病院に運ばれていった」
シャオパイがそう答えた。
「そうだったのか。もしおまえが、あの家に行って、女の人を発見していなかったら、この寒さのなかで、その女の人は夜間に凍死していたかもしれない。おまえは人助けをしたのだ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「ぼくは、あの女の人と何か目に見えない糸で結ばれているのかもしれない」
シャオパイが感慨深そうな顔をしながらそう言った。
「そうかもしれないな。『虫の知らせ』いう言葉があるが、おまえが昨日、その女の人のうちに行ったのは、偶然ではなくて、『虫の知らせ』があったからかもしれないな」
ぼくはシャオパイにそう言った。
するとシャオパイがけげんそうな顔をしながら
「『虫の知らせ?』」
と聞き返してきた。ぼくはうなずいた。
「虫の声は何も聞こえなかったけど……」
シャオパイが小首をかしげていた。
「そうではない。何かちょっとしたことで、不幸な出来事などを予感することを『虫の知らせ』と言うのだ」
ぼくはシャオパイにそう説明した。するとシャオパイがうずいていた。
「おまえが『虫の知らせ』を感じたのは、もしかしたら神様が、おまえと、その女の人を引き合わせてくれたからかもしれない」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「そうかもしれないですね。でも、ぼくが行ったとき、まだ死んでいなかったからよかったです。虫の息ではあったけども、まだ生きていたから助けることができた。あの女の人が元気になってくれることを、ぼくは心から願っている」
シャオパイがそう答えた。
「ぼくもそう願っている」
ぼくはシャオパイにそう答えた。
「あの女の人は、しばらくはうちに帰ってこないと思うから、留守の間、ぼくが、あの家をしっかり守ってあげようと思う」
シャオパイがそう言った。ぼくはそれを聞いて
「おまえは、もうあの家で飼われている番犬のようだな」
と言って笑った。
「あの女の人はロウバイの花の開花を待ちわびていたから、元気になって病院から帰ってきた時に、びっくりするように、家の中全体をロウバイの花のにおいで、ぷんぷんさせておこうと思っている」
シャオパイがそう言った。それを聞いて、ぼくはシャオパイの心遣いに感動した。
「それはいいね。でも家の中には、どうやって入っていけばいいのだ?」
ぼくはげんに思って、シャオパイに聞いた。
「玄関の鍵がかかっていなかったから、中に入ることができる」
シャオパイがそう答えた。ぼくはうなずいた。
「そうか。でも、もう一つ問題がある。梅園の中のロウバイの花を、おまえはどうやって、あの女の人の家まで運んでいくつもりでいるのか」
ぼくはシャオパイにそう聞いた。シャオパイはしばらく考えてから
「フェイナに頼んで、カートを梅園の中まで押してきてもらいましょう。地面に落ちたばかりのロウバイの花をたくさん拾い集めてから、カートに積んで、あの女の人のうちまで持っていきましょう」
シャオパイがそう提案した。
「そうだね。それは名案だね」
ぼくはそう答えた。
ぼくとシャオパイはそれからまもなく、翠湖公園を出てフェイナのうちに行って、女の人のことを話した。するとフェイナが
「その女の人はシャオパイと前世から深い縁で結ばれていたのかもしれないわね」
と言った。ぼくはそのあとフェイナに
「ロウバイの花を、その女の人のうちまで運ぶので、カートを借りて翠湖公園の梅園まで押してきてくれないか」
と言った。するとフェイナが
「分かったわ。今夜、近くのスーパーが閉まったあと、スーパーの前にあるカートを借りて、翠湖公園まで押していくわ」
と言ってくれた。
ぼくとシャオパイはそのあとフェイナと別れて翠湖公園に戻ってきた。
「ぼくはこれから、うちに帰って、ロウバイの花を入れるための袋を持ってくるよ」
ぼくはシャオパイにそう言った。
「分かった。ぼくは一足先に梅園に行って、落ちているロウバイの花を集めておくよ」
シャオパイがそう言った。
「分かった。すぐ戻ってくる」
ぼくはシャオパイにそう言うと、急いで、うちへ帰っていった。うちの中には、杜真子や馬小跳たちがキャットフードなどの食べ物を入れて持ってきてくれたビニール袋がいくつもあったので、首にかけて、梅園に戻ってきた。あずま屋の近くで、シャオパイが一生懸命、花を集める作業をしていた。ぼくの姿を見ると、駆け寄ってきて
「風で散った花を集めているけど、まだ咲き始めたばかりだから、地面に落ちている花は少ない」
と言った。
「そうか、木に登っていって、咲いている花を落とすのはよくないしなあ……、どうしよう」
ぼくはそう思って思案に暮れていた。すると、その時、あずま屋から少し離れたところに軽トラックが一台停まっていて、その近くで二人の男の人が、ロウバイの木の剪定作業をおこなっている姿が目に入った。伸びすぎた枝をはさみで、地面に切り落していた。ぼくはそれを見て、シャオパイに
「あそこに行ってみよう。切り落とされた枝の中に花がついている枝があったら、その枝を、この袋の中に入れるのだ」
と言った。
「分かりました。それは名案です」
シャオパイがそう言って、ぼくの提案に同意した。
ぼくとシャオパイはそれからまもなく剪定作業がおこなわれているところまで行った。ぼくが期待していたとおりに、切り落とされたロウバイの枝の中には花が咲きかけているものがあったから、ぼくもシャオパイも、うれしくなって、その枝を口でくわえてから、持ってきた袋の中に入れていた。枝を袋の中に入れるたびに、ロウバイのいいかおりが袋の中にいっぱいに広がっていって、ぼくもシャオパイもとてもしあわせな気持ちになることができた。ぼくとシャオパイが剪定されたロウバイの枝を袋の中に入れているのを見て、作業員が、びっくりしたような顔をしていた。
「ゴミ集めをする犬や猫を、おれは初めて見た」
「たいしたものだ」
二人の作業員は顔を見合わせながら、そう言っていた。
ぼくとシャオパイがロウバイの枝を袋の中に入れているのを見て、花見にやってきた人たちもびっくりして、ぼくたちのすぐ近くに寄ってきて、スマートフォンを取り出して、写真に収めていた。
「これは、ほのぼのとして話題性がある光景だから新聞社やテレビ局の人に知らせませんか」
「そうですね。開花したロウバイの花の下で、犬と猫がゴミ拾いをしている姿を見たら、だれもが癒されますよね。ぜひ新聞社やテレビ局の人に知らせましょう」
写真を撮った女の人たちが、そう話していた。ぼくはシャオパイに、人が話している話の内容を話してあげた。するとシャオパイは、けげんそうな顔をしながら
「ぼくたちはゴミ拾いをしているわけではないのにね」
と言った。
「そうだよね。でも人の目にはゴミ拾いをしている感心な犬と猫に見えたのかもしれない」
ぼくはそう答えた。シャオパイがうなずいた。
ぼくとシャオパイは持ってきた袋に木の枝をいっぱい入れたあとは、人に持っていかれないように、ずっと袋の近くにいて番をしていた。
夕方近く、新聞社やテレビ局の人がやってきて、ぼくとシャオパイの姿を見つけて近づいてきた。リポーターが実況中継を始めて、カメラマンが写真を撮り始めた。ぼくもシャオパイも人の注目を浴びることはあまり望んではいなかったから逃げようかと思った。でも逃げているうちに、せっかく集めた木の枝をどこかに持っていかれたら大変だと思ったので逃げないでじっとしていた。それからまもなく日が暮れて、新聞社やテレビ局の人は帰っていった。梅園の中から人の姿も消えて静かになった。ぼくはそのあとシャオパイと別れて、うちへ帰っていった。シャオパイは、あずま屋に帰っていった。

