野いちご源氏物語 五四 夢浮橋(ゆめのうきはし)

小野(おの)の家には、まだ早朝のうちに僧都(そうづ)からお手紙が届いていた。
「昨夜、小君(こぎみ)という少年が(かおる)(きみ)のお使者(ししゃ)としてそちらへ行きましたでしょう。『ご事情はすべて薫の君からうかがいました。軽はずみにご出家(しゅっけ)させてしまったのではと()やんでおります』と姫君(ひめぎみ)にお伝えください。私から直接申し上げたいことも多いのですが、今日は都合が悪いので、下山はそれ以降になりそうです」
とある。

<これはいったいどういうことか>
尼君(あまぎみ)はお手紙を読んでびっくりなさった。
小君という少年も来ていないし、いきなり薫の君と姫君のご関係をほのめかされても、何が何だかお分かりにならない。
お手紙を見せられた浮舟(うきふね)(きみ)は顔を赤くする。
<僧都様が知ってしまわれたのだ。尼君に正直に打ち明けたら、『そんな大事な話を(かく)していたのか』と(うら)まれてしまう> 

お返事ができずに(だま)りこんでいると、
「本当のことをおっしゃってちょうだい。何をお隠しになっているの。私はこんなにあなたを大切に思っているのに、あまりに悲しい」
と尼君はひどくお恨みになる。
何もご存じないから、とにかく早くどういうことか聞きたいと(あわ)てていらっしゃるのね。
そこへ、
「僧都様の紹介状とお手紙を持った少年が参っておりますが」
女房(にょうぼう)がお知らせした。