子ども列車


 ここは、アパートの2階にある一室。
 「どうか、ご飯をいただけませんか?」
 4歳くらいの男の子が、ウサギの小屋に閉じ込められていた。
 食事も水分もあまり摂らせてもらえず、男の子はガリガリで標準より、身長もかなり小さかった。
 男の子の父親は本当の父親ではなく、母親の連れ子だった。
 「俺、風呂入ってくるわ。」
「分かった。」
「俺が出るまでに、ウサギのおむつ交換しとけよ?」
「分かった。」
「餌と水は、後で、俺がやる。」
「分かった。」
「じゃ、風呂行ってくるわ。」
 男の子は、父親にウサギ呼ばわりされていた。
 母親は、父親が怖いのか、父親の言いなりだった。
 「おむつ換えるよ。
出ておいで。」
 男の子は、小屋の外に出た。
 おむつ交換され、また、ウサギの小屋に入れられた。
 父親は、お風呂から出て、男の子に餌というご飯と水を与えた。
 父親と母親が寝静まった後、ベランダが明るくなった。
 男の子は、何だろう…。と思っていると、ウサギ小屋の鍵が外れ、外に出ることができた。
 男の子は、外に出ると、目の前に赤い列車が停まっていた。
 列車のドアが開き、太っちょの車掌さんが出て来た。
 「小山 ゆうた様ですね?」
「は…はい…。」
「ようこそ、子ども列車へ。
どうぞ、お入りください。」
「で…でも…。
お金なくて…。」
「子ども列車は、子どもからお金はいただきません。
ですから、安心してお入りください。」
「ありがとうございます。」
 ゆうたは、赤い列車に乗った。
 太っちょの車掌さんは、まず、ゆうたをお風呂に入らせた。
 ずっと、ウサギ小屋に入れられていたから、ゆうたは小さくて、ガリガリだった。
 なんとか、お風呂に入った、ゆうた。
 太っちょの車掌さんは、次に、ご飯を食べるよう勧めた。
 しかし、ご飯を食べてしまって大きくなったら、小屋には入れなくなるから。と断った。
 太っちょの車掌さんは、眠れるように、寝台に案内した。
 ゆうたは、体を縮めて眠った。
 それを見た太っちょの車掌さんは、運転手さんに相談した。
 運転手さんは、少し悩んで、話した。
 「この列車は、子どもを守るためのもの。
7日間、ゆうた様を列車に乗せたままにしましょう。
そうすれば、小屋に入れなくなっても大丈夫。」
「そうですね。
その方が、いいでしょう。
ゆうた様が起きたら、お食事させます。」
「分かりました。」
 そんな会話を、太っちょの車掌さんと運転手さんがしていたとは知らず、ゆうたは起きた。
 「ゆうた様、起きられましたか。
運転手さんとも話したのですが、子ども列車は、7日間しか乗れません。
本当でしたら、毎日、お迎えに行くのですが、今回は特別に、7日間ずっと乗っていただこうと思います。
いかがでしょうか?」
「パパとママは、心配しない?」
「心配し始めたら、1度戻られるということで、いかがでしょうか?」
「それでお願いします。」
「では、お食事にしましょう。」
 太っちょの車掌さんは、ゆうたを食堂に連れて行った。
 体がガリガリのゆうたを見て、太っちょの車掌さんは、胸を痛めた。
 「ゆうた様、何が食べたいですか?」
「じゃあ、お寿司食べたいです。」
「かしこまりました。」
 太っちょの車掌さんは、コックさんに注文しに行った。
 少しすると、お寿司をコックさんが持って来た。
 ゆうたは、美味しそうに、お寿司を頬張った。
 「次は、何にしますか?」
「お風呂にします。」
「かしこまりました。」
 ゆうたは、ゆっくりと、お風呂に入った。
 お風呂の後、また、食堂に行き、今度は、ステーキセットを注文した。
 ステーキを頬張っているとこに、太っちょの車掌さんが来た。
 「ゆうた様。
楽しんでいただけてますか?」
「はい。」
「それは、よかったです。
食事も沢山していってください。」
「ありがとうございます。」
 ゆうたは、美味しそうに、ステーキを食べた。
 「おかわりに、ハンバーグください。」
「かしこまりました。」
 次の日、太っちょの車掌さんが来た。
 「ゆうた様、朝です。」
「分かりました。
朝ご飯食べにいきます。」
「かしこまりました。」
 太っちょの車掌さんは、ゆうたがご飯を食べてる時に、話し始めた。
 「今日なんですが、女の子を1人迎えにいきます。
彼女は、今日で最後の乗車になりますので、お話しされるようでしたら、本日中にしてください。
他の方も、ゆうた様と似た環境の方達です。
お時間が合えば、是非、お話ししてみてください。」
「分かりました。」
 ゆうたは、食事を終え、お風呂に向かった。
 お風呂でゆっくりしていたら、知らない男の子が入ってきた。
 「あれ?
入ってくるの女の子って聞いてたけど…。
間違えたのかな?」
 その男の子は、ゆうたより歳が小さく見えた。
 ゆうたは、その男の子に話しかけられた。
 「お兄ちゃん、何歳?」
「4歳だけど、君は?」
「ぼくは3歳。
お兄ちゃん、小さいね…。」
「僕は、ウサギの小屋で過ごしていたから…。」
「そっか…。」
「君、名前は?」
「ぼくの名前は、けいただよ。
お兄ちゃんは?」
「僕は、ゆうた。
よろしく。」
「お兄ちゃんは、何日目?
ぼく、今日が最後なんだ。」
「僕は2日目。」
「そうなんだ。
じゃあ、今日でお別れだね。」
「うん。」
「お兄ちゃん、楽しんで。」
「けいたもね。」
 ゆうたは、けいたの後にお風呂から出て、食堂に向かった。
 食堂で、女の子に会った。
 「新しい人?」
「はい。
僕、2日目です。」
「そうなんだ。
名前は?」
「ゆうたです。」
「わたしは、かおり。
今日で最後なんだ…。」
「聞いたよ。
7日間どうだった?」
「楽しかったよ。
今日が最後なのが、なんだか寂しい…。」
「そっか…。」
「でも、決まりだから仕方ないよね…。
じゃあ、わたし、お風呂に入って来るから。」
「分かった。
じゃあ。」
 かおりと少し話せたゆうたは、いずれ帰らなければならない。という喪失感に襲われた。
 そこに、太っちょの車掌さんが来た。
 「ゆうた様いかがですか?」
「かおりちゃんとけいたくんと話せました。」
「けいた様ともお会いになったんですね。
それは、よかったです。
お2人は、今日までですから…。
それでは、何かありましたら、お声がけください。」
「はい。」
 ゆうたは、お昼ご飯に、オムライスを注文した。
 オムライスは、すぐに、運ばれてきて、ゆうたは大きな口で頬張った。
 オムライスを食べた後、寝台に行った。
 お昼寝から起きたゆうたは、食堂に行った。
 そこには、かおりちゃんとけいたくんが居た。
 僕たちは、3人で食事することにした。
 けいたくんは、ハンバーグセット、かおりちゃんは、オムライス、僕はステーキセットをそれぞれ注文した。
 「今日は、お腹いっぱい食べようね!」
 かおりちゃんの言葉に、けいたくんも、僕も賛成した。
 みんなで、ジュースで乾杯して、食べ始めた。
 食べた後、寝台で眠った。
 次の日。
 ゆうたは、かおりちゃん達がいないことに、寂しさが募った。
 太っちょの車掌さんが来て、ご飯を食べることにした。
 「おはようございます。
今日は、まず、何をされますか?」
「朝ご飯食べたいです。」
「かしこまりました。」
 太っちょの車掌さんと、食堂に行った。
 「何にされますか?」
「今日は、フレンチトーストと、ヨーグルトと、フルーツ盛りと、オレンジジュースをお願いします。」
「かしこまりました。」
 すぐに、フレンチトーストと、オレンジジュースが来た。
 フレンチトーストを食べていたら、ヨーグルトと、フルーツ盛りが来たので、食べまくった。
 「この後はどうされますか?」
「お昼まで、散歩してみたいです。
歩ける喜びを感じたくて…。」
「ずっと、自由に歩けなかったですから、気持ちはわかります。
どうぞ、ご自由にお歩きください。」
「ありがとうございます。」
 ゆうたは、自由に列車内を歩いた。
 「ゆうた様、お昼でございます。」
「分かりました。」
「随分、自由に歩けるようになりましたね。」
「はい。」
「いいことです。
ご飯は何にしますか?」
「ステーキセットと、コーンスープと、オレンジジュースお願いします。」
「かしこまりました。」
 注文したものは、すぐに届いた。
 出された、ステーキを食べながら、いずれは帰らなければいけないことを考えると、憂鬱になった…。
 「あと、4日…。
あそこに戻りたくない…。
ずっとは、居られないもんな…。
かおりちゃん達は、帰って無事なのかな…。」
 そんなことを考えていたら、4日なんてあっという間だった。
 「今日でお別れです。」
「はい。」
「ご両親は、眠ってます。
静かに入ってください。」
「分かりました。」
 ゆうたは、静かに部屋に入った。
 子ども列車は、発車してしまった。
 「もう来ないのか…。
僕は、どうすれば…。」
 そんなことを思っていたら、ベランダが明るくなった。
 「子ども列車?!」
 そう思って、ベランダに行くと、そこには黒い列車があった。
 列車から降りてきたのは、ガリガリの車掌さんだった。
 「小山 さゆり様、小山 たける様。
どうぞお乗りください。」
「あの…僕は?」
「君はダメだよ。
さぁ、お2人とも早くご乗車ください。」
 父親と母親は、いつもと違って、ふらふらと歩いて、列車に乗った。
 「あれは一体何だったんだろう…。
その内、パパもママも帰って来るよね。」
 自分にそう言い聞かせた。
 だけど、一向に帰ってこず、僕は、本当のパパと暮らすことになった。
 本当のパパのとこは、落ち着けれて、安心出来た。
 ママ達は、行方不明のままだった。