僧都が女君の話をなさったとき、女一の宮様の女房である小宰相の君もその場にいた。
中宮様はこっそりと小宰相の君に相談なさる。
「薫の君は亡くなった恋人のことを今も悲しんでいらっしゃる。きっと僧都が助けたと言っていた女性のことだろうから、生きていることを教えてあげたいのだけれど、万が一人違いだったらと思うと言い出せなかった。
あのときそなたも僧都の話を聞いていただろう。うまくかいつまんで、世間話のようにして話しておあげなさい」
「中宮様でさえ遠慮なさるようなことを、どうして私がお話しできましょうか」
「それは時と場合によるだろう。私はもう一人の方にも気を遣わなければならないから」
中宮様はお言葉を濁されたけれど、
<匂宮様のことだ。薫の君の恋人に手を出されたという噂を聞いたもの>
と聡明な小宰相の君は気づく。
結局、小宰相の君はお話しすることに決めた。
薫の君はひそかに小宰相の君をかわいがっていて、ときどき会いにいらっしゃる。
「比叡山の僧都から聞いたお話ですけれど、去年の春、宇治の院で妖怪に憑りつかれた女性をお助けになったそうでございます。とても美しい姫君なのに、素性が分からないとか」
さりげなく話題に出すと、薫の君はひどく驚かれた。
<中宮様が姫の死についてお尋ねになったのは、その話をご存じだったからか。どうして直接おっしゃってくださらなかったのだろう。いや、私の方から中宮様に何も打ち明けていなかったのだから当然だ。
それにしても信じられない。なんという馬鹿馬鹿しい話だ。私からは誰にも言えないが、かえって世間ではもう噂になっているのだろうか>
そう思うと、目の前の小宰相の君にも詳しく話そうとはお思いになれない。
「亡くなった私の恋人に似ているようだが、その女性は今も生きているのか」
さりげなくお尋ねになると、小宰相の君はつらそうに申し上げる。
「はい。ただ、僧都がどこかの山里で尼になさったそうでございます。あまりに美しい人なので、行き倒れて重態だったころでさえ周囲の人は出家を反対したらしいのですが、やはりご本人の意思が固いということで」
場所も時期も一致している。
<本当にあの姫だったら、むしろぞっとするのではないだろうか。それでも放っておくわけにはいかない。どうしたら確かなことが分かるだろう。行方不明になったあげく尼になった女を未練がましく探し歩くなんて、世間体が悪い。
それにもし匂宮様のお耳に入れば、せっかく出家生活をしている人を邪魔なさるのではないか。いや、むしろ宮様はすでにご存じで、姫を俗世間に戻す手続きをしようと考えていらっしゃるのかもしれない。それで母中宮様に口止めなさったから、中宮様は私に教えてくださらなかったとも考えられる。
私は今もあの姫が愛しいけれど、宮様がそのおつもりなら、やはり姫は死んだものと思っておこう。また自分の恋人にしようとはするまい>
そう思いながらもお心は乱れる。
<中宮様にお尋ねしたところで、姫が生きていることを匂宮様がご存じかどうか私に話してはくださらないだろう。それでもご反応で何か分かるかもしれない>
しばらくして、また中宮様のところに参上なさった。
中宮様はこっそりと小宰相の君に相談なさる。
「薫の君は亡くなった恋人のことを今も悲しんでいらっしゃる。きっと僧都が助けたと言っていた女性のことだろうから、生きていることを教えてあげたいのだけれど、万が一人違いだったらと思うと言い出せなかった。
あのときそなたも僧都の話を聞いていただろう。うまくかいつまんで、世間話のようにして話しておあげなさい」
「中宮様でさえ遠慮なさるようなことを、どうして私がお話しできましょうか」
「それは時と場合によるだろう。私はもう一人の方にも気を遣わなければならないから」
中宮様はお言葉を濁されたけれど、
<匂宮様のことだ。薫の君の恋人に手を出されたという噂を聞いたもの>
と聡明な小宰相の君は気づく。
結局、小宰相の君はお話しすることに決めた。
薫の君はひそかに小宰相の君をかわいがっていて、ときどき会いにいらっしゃる。
「比叡山の僧都から聞いたお話ですけれど、去年の春、宇治の院で妖怪に憑りつかれた女性をお助けになったそうでございます。とても美しい姫君なのに、素性が分からないとか」
さりげなく話題に出すと、薫の君はひどく驚かれた。
<中宮様が姫の死についてお尋ねになったのは、その話をご存じだったからか。どうして直接おっしゃってくださらなかったのだろう。いや、私の方から中宮様に何も打ち明けていなかったのだから当然だ。
それにしても信じられない。なんという馬鹿馬鹿しい話だ。私からは誰にも言えないが、かえって世間ではもう噂になっているのだろうか>
そう思うと、目の前の小宰相の君にも詳しく話そうとはお思いになれない。
「亡くなった私の恋人に似ているようだが、その女性は今も生きているのか」
さりげなくお尋ねになると、小宰相の君はつらそうに申し上げる。
「はい。ただ、僧都がどこかの山里で尼になさったそうでございます。あまりに美しい人なので、行き倒れて重態だったころでさえ周囲の人は出家を反対したらしいのですが、やはりご本人の意思が固いということで」
場所も時期も一致している。
<本当にあの姫だったら、むしろぞっとするのではないだろうか。それでも放っておくわけにはいかない。どうしたら確かなことが分かるだろう。行方不明になったあげく尼になった女を未練がましく探し歩くなんて、世間体が悪い。
それにもし匂宮様のお耳に入れば、せっかく出家生活をしている人を邪魔なさるのではないか。いや、むしろ宮様はすでにご存じで、姫を俗世間に戻す手続きをしようと考えていらっしゃるのかもしれない。それで母中宮様に口止めなさったから、中宮様は私に教えてくださらなかったとも考えられる。
私は今もあの姫が愛しいけれど、宮様がそのおつもりなら、やはり姫は死んだものと思っておこう。また自分の恋人にしようとはするまい>
そう思いながらもお心は乱れる。
<中宮様にお尋ねしたところで、姫が生きていることを匂宮様がご存じかどうか私に話してはくださらないだろう。それでもご反応で何か分かるかもしれない>
しばらくして、また中宮様のところに参上なさった。



