侍従は浮舟の君のことを思い出している。
<もう死んでしまいたいと泣いていらっしゃった>
ふと見ると、硯の下に紙がはさんであった。
女君の字で、
「もし自殺したとしても、どこかから秘密が漏れて、浮気女だったという噂が流れてしまったら」
と書かれている。
<最後の最後まで世間の噂を恐れながら、宇治川にお命を流してしまわれたのだ>
川の方を見やる。
恐ろしい川音が聞こえてきて、侍従は思わず耳をふさいだ。
侍従と右近は相談する。
「お亡くなりになったことはもう間違いないでしょう。何があったのか分からず、お母君や乳母殿が取り乱していらっしゃるのはお気の毒です」
「やはり匂宮様とのことをお話しした方がよいのでは。思いがけず始まったご関係なのですから、姫様に責任はありません。おふたりにありのままをお伝えして、少しは納得していただきましょう。それでも亡骸がないことはどうしようもないのですけれど。
ご葬儀は早い方がよいでしょうね。亡骸がないことが知られれば、宇治川に身を投げたと世間は簡単に想像するはずです。お母君と乳母殿にお許しをいただいて、亡骸があるように見せかけたら、すぐにご葬儀をすませ火葬までしてしまわなければ」
いったい何があったかを母君と乳母にこっそりお伝えする。
つらいけれど、なんとかお話しするしかない。
聞いている母君と乳母は正気を失ったようにうろたえる。
<では、この荒々しい川に流されて亡くなってしまったのか>
と思うと、自分も川に落ちていくような気がする。
「下流を探させましょう。亡骸を見つけて弔ってあげたい」
母君は震えながら言う。
「ご無理でございましょう。もう姫様は大海原にいらっしゃいます。探させているところを誰かに見られれば世間の噂になります」
母君も乳母も茫然とする。
侍従と右近は葬儀の準備を始めた。
乗り物に女君の使っていた家具や着物を入れて、亡骸がそこにあるように見せかける。
乳母の身内の僧侶を呼んで葬儀をすると、乗り物は火葬場に送り出した。
<なんというやり方だ。この奇妙な葬儀で、姫は死んだということになるのか>
母君は恐ろしく思う。
乳母も悔しがっている。
<もう死んでしまいたいと泣いていらっしゃった>
ふと見ると、硯の下に紙がはさんであった。
女君の字で、
「もし自殺したとしても、どこかから秘密が漏れて、浮気女だったという噂が流れてしまったら」
と書かれている。
<最後の最後まで世間の噂を恐れながら、宇治川にお命を流してしまわれたのだ>
川の方を見やる。
恐ろしい川音が聞こえてきて、侍従は思わず耳をふさいだ。
侍従と右近は相談する。
「お亡くなりになったことはもう間違いないでしょう。何があったのか分からず、お母君や乳母殿が取り乱していらっしゃるのはお気の毒です」
「やはり匂宮様とのことをお話しした方がよいのでは。思いがけず始まったご関係なのですから、姫様に責任はありません。おふたりにありのままをお伝えして、少しは納得していただきましょう。それでも亡骸がないことはどうしようもないのですけれど。
ご葬儀は早い方がよいでしょうね。亡骸がないことが知られれば、宇治川に身を投げたと世間は簡単に想像するはずです。お母君と乳母殿にお許しをいただいて、亡骸があるように見せかけたら、すぐにご葬儀をすませ火葬までしてしまわなければ」
いったい何があったかを母君と乳母にこっそりお伝えする。
つらいけれど、なんとかお話しするしかない。
聞いている母君と乳母は正気を失ったようにうろたえる。
<では、この荒々しい川に流されて亡くなってしまったのか>
と思うと、自分も川に落ちていくような気がする。
「下流を探させましょう。亡骸を見つけて弔ってあげたい」
母君は震えながら言う。
「ご無理でございましょう。もう姫様は大海原にいらっしゃいます。探させているところを誰かに見られれば世間の噂になります」
母君も乳母も茫然とする。
侍従と右近は葬儀の準備を始めた。
乗り物に女君の使っていた家具や着物を入れて、亡骸がそこにあるように見せかける。
乳母の身内の僧侶を呼んで葬儀をすると、乗り物は火葬場に送り出した。
<なんというやり方だ。この奇妙な葬儀で、姫は死んだということになるのか>
母君は恐ろしく思う。
乳母も悔しがっている。



