ひどい雨のなか、母君が到着した。
「これはいったいどういうことなの。目の前で亡くなったなら、悲しいとはいえ世間によくあることだけれど、亡骸がないだなんて」
女房たちの説明を聞いて正気を失っている。
浮舟の君が薫の君と匂宮様の間で苦しんでいたことなど知るはずもないから、自殺の可能性も当然思いつかない。
<鬼が食べてしまったのだろうか、それとも狐のような妖怪が連れていったのだろうか>
と、恐ろしい昔話を思い出す。
<いや、現実的に考えれば、姫は人間に誘拐されたのだろう。まさか薫の君のご正妻か。女二の宮様ご自身はそんなことをお命じにならないだろうが、あちらに意地の悪い乳母などがいるのかもしれない。薫の君が姫を都にお迎えなさると聞いて、腹を立ててこんなことをしたのだろう>
こちら側にも協力者がいたはずだと疑う。
「お引越しの準備のために新しく何人か雇ったが、そのなかに信用できない者はいないか」
と母君は女房に尋ねた。
「新しく来た人たちはこんな田舎暮らしが我慢できないようで、すぐに都の実家に帰ってしまいました。縫物などの仕事なら、ここでなくてもできますので。『姫様が都に上られたらすぐにまた参ります』というようなことだけ言って出ていきましたから、もうこちらにはおりません」
昔からお仕えしていた人たちでさえ、先走って都に戻ってしまった人がいる。
そんな人気が少ないときに起きた事件だったの。
「これはいったいどういうことなの。目の前で亡くなったなら、悲しいとはいえ世間によくあることだけれど、亡骸がないだなんて」
女房たちの説明を聞いて正気を失っている。
浮舟の君が薫の君と匂宮様の間で苦しんでいたことなど知るはずもないから、自殺の可能性も当然思いつかない。
<鬼が食べてしまったのだろうか、それとも狐のような妖怪が連れていったのだろうか>
と、恐ろしい昔話を思い出す。
<いや、現実的に考えれば、姫は人間に誘拐されたのだろう。まさか薫の君のご正妻か。女二の宮様ご自身はそんなことをお命じにならないだろうが、あちらに意地の悪い乳母などがいるのかもしれない。薫の君が姫を都にお迎えなさると聞いて、腹を立ててこんなことをしたのだろう>
こちら側にも協力者がいたはずだと疑う。
「お引越しの準備のために新しく何人か雇ったが、そのなかに信用できない者はいないか」
と母君は女房に尋ねた。
「新しく来た人たちはこんな田舎暮らしが我慢できないようで、すぐに都の実家に帰ってしまいました。縫物などの仕事なら、ここでなくてもできますので。『姫様が都に上られたらすぐにまた参ります』というようなことだけ言って出ていきましたから、もうこちらにはおりません」
昔からお仕えしていた人たちでさえ、先走って都に戻ってしまった人がいる。
そんな人気が少ないときに起きた事件だったの。



