野いちご源氏物語 五二 蜻蛉(かげろう)

中宮(ちゅうぐう)様のお(さと)()がりは半年近く続いている。
内裏(だいり)にいらっしゃるときよりもお仕えしている女房(にょうぼう)の数が多い。
六条(ろくじょう)(いん)は広々として楽しく過ごせるから、実家で休んでいるはずの女房たちまで集まってくるの。

六条の院の春の御殿(ごてん)には中宮様、夏の御殿には夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様がお暮らしになっている。
もともとは亡き源氏(げんじ)(きみ)がお造りになった六条の院だけれど、今はそのころにも負けないにぎやかさ。
異母兄(あに)として、大臣様は熱心に中宮様をお世話なさっている。
現代的で華やかという点では、昔以上とも言えるわ。

こういう御殿が大好きな匂宮(におうのみや)様は、意外とおとなしくしていらっしゃる。
いつもならお目に()まった女房に手をお出しになっていてもおかしくないのに。
女好きの悪いお(くせ)が少し直ってきたかと思いきや、近ごろはまた春の御殿をあちこち歩きまわっていらっしゃる。
(みや)(きみ)にお心が()かれているのね。