貴族たちがぞくぞくと匂宮様のお見舞いに参上しているようなので、薫の君もお屋敷に引きこもっていらっしゃるわけにはいかない。
<たいした身分でもない恋人の死を嘆いて、宮様のお見舞いに伺わないのは失礼だろう>
と、二条の院へお上がりになった。
ちょうどそのころ、薫の君の叔父にあたる親王様がお亡くなりになったので、薫の君は喪服をお召しになっている。
<姫のための喪服を着ているようだ>
としんみりなさる。
少しお顔がやせて、さらに上品におなりになった。
お見舞い客が帰ったあとの、静かな夕暮れ時。
宮様は寝込んでいらっしゃるわけではないから、ごく親しい人にはお会いになる。
薫の君のお顔をご覧になると、気まずい一方で涙がこみ上げてくる。
どうにか抑えておっしゃった。
「自分ではそれほど重い病気とは思わないけれど、周りが安静にしていろとやかましくてね。帝や中宮様にまでご心配をおかけして心苦しい。たしかに誰の命も永遠ではないと思うと、心細くなってくる」
さりげなく涙をぬぐわれても、次から次へとあふれて止まらない。
<別に泣いたからといって、私と姫の関係に薫の君が気づくことはないだろう。病気のせいで弱気になっていると思うだけだ>
宮様は油断なさっているけれど、薫の君はすべてお見通しよ。
<あぁ、姫を思って泣いておられるのだ。いつからご関係が始まっていたのだろう。きっともう何か月も、私を間抜けな男だと笑っていらっしゃったのだろうな>
すぅっと悲しみが消えていくような気がなさる。
<どうして平気な顔をしている。つらいことがあるときは何をしていても涙が出るものだろう。私の前で泣けばよいではないか。まさか私の様子を見て、私と姫の関係に気がついたのか。だとしたら一緒に泣いてくれればよいものを。そのくらいの同情心はある男のはずだ。それとも仏教に熱心な男というのは、人の死などに動じないのか>
宮様はうらやましくも憎くも思われる。
<この男に姫は寄りそっていたのだ>
女君の形見のような気がして、じっとお見つめになった。
<たいした身分でもない恋人の死を嘆いて、宮様のお見舞いに伺わないのは失礼だろう>
と、二条の院へお上がりになった。
ちょうどそのころ、薫の君の叔父にあたる親王様がお亡くなりになったので、薫の君は喪服をお召しになっている。
<姫のための喪服を着ているようだ>
としんみりなさる。
少しお顔がやせて、さらに上品におなりになった。
お見舞い客が帰ったあとの、静かな夕暮れ時。
宮様は寝込んでいらっしゃるわけではないから、ごく親しい人にはお会いになる。
薫の君のお顔をご覧になると、気まずい一方で涙がこみ上げてくる。
どうにか抑えておっしゃった。
「自分ではそれほど重い病気とは思わないけれど、周りが安静にしていろとやかましくてね。帝や中宮様にまでご心配をおかけして心苦しい。たしかに誰の命も永遠ではないと思うと、心細くなってくる」
さりげなく涙をぬぐわれても、次から次へとあふれて止まらない。
<別に泣いたからといって、私と姫の関係に薫の君が気づくことはないだろう。病気のせいで弱気になっていると思うだけだ>
宮様は油断なさっているけれど、薫の君はすべてお見通しよ。
<あぁ、姫を思って泣いておられるのだ。いつからご関係が始まっていたのだろう。きっともう何か月も、私を間抜けな男だと笑っていらっしゃったのだろうな>
すぅっと悲しみが消えていくような気がなさる。
<どうして平気な顔をしている。つらいことがあるときは何をしていても涙が出るものだろう。私の前で泣けばよいではないか。まさか私の様子を見て、私と姫の関係に気がついたのか。だとしたら一緒に泣いてくれればよいものを。そのくらいの同情心はある男のはずだ。それとも仏教に熱心な男というのは、人の死などに動じないのか>
宮様はうらやましくも憎くも思われる。
<この男に姫は寄りそっていたのだ>
女君の形見のような気がして、じっとお見つめになった。



