野いちご源氏物語 五〇 東屋(あずまや)

いつもと違うすばらしい香りをあやしんで、浮舟(うきふね)(きみ)乳母(めのと)が部屋に入ってきた。
「これは、まぁ、なんということでございましょうか。困ります」
と申し上げるけれど、ここは(みや)様のお屋敷だもの。
誰に遠慮(えんりょ)なさることもないわ。

ばったり出会った女性だというのに、宮様はお言葉を()くして口説かれる。
そのまま日が暮れてしまった。
「名前を聞くまでは離さない」
とおっしゃって、浮舟の君の隣に横になってしまわれる。
このお屋敷でこんな振舞いができる男性が他にいるはずはない。
匂宮(におうのみや)様なのだ>
乳母と浮舟の君はそう気づくと、言いようもないほどあきれてしまった。