翌週、月曜日。
「C組に転校生が来たってよ! 占部葵って名前だって!」
一時間目の休み時間、トイレから戻ってきた俺の後ろの席の山田が、教室へ入ってくるなり大声で言った。
「かわいい? というか、男? 女?」
教卓近くにいた男のクラスメイトが、興味津々な様子で山田に尋ねる。
「残念! かわいさのカケラもない男でーす。遠くからしか見れてないけど、背ぇデカくていかつくて、不良って感じ。見に行かね?」
C組の転校生は十中八九、金曜日にテキトー先輩が言ってた、蓮見神社に跡取りとしてやって来た奴だろうな。
「男で、しかも不良かよ……。そろそろ三時間目はじまるし、見に行かねーよ」
最悪〜と言いたげなクラスメイトの返答に、俺は心の中で「だよなー」と同意した。
不良となんてできる限り関わりあいになりたくないし、どうせ転校生とはボランティア活動の時に会うだろうし。
ただでさえボランティアやりたくないのに、新加入がヤンキーだなんて、マジでやる気が消し飛ぶ。
*
「明日、ボランティアかぁ……」
転校生が来てから数日たった、木曜日。
放課後に友達と下らない話で盛り上がった俺は、家への帰り道を、憂鬱な気持ちと共に歩いていた。
家についたらゲーム実況動画でも見て、気をまぎらわせよ! と、視線をアスファルトから上げれば、聖カトレア教会の門が目に入り――
「ナオミさん!」
門の内側でホウキを持って立つ女性、ノアのお姉さんの聖ナオミさんを発見!
ナオミさんは、俺より一つ年上の中学二年生。
腰まである金髪を二つに分けてゆるく三つ編みにしている、メガネ美人だ。
家事全般得意でおっとりしている、The大和撫子って感じの人。
男もほれるような漢が彼氏なので、たぶん一生、俺にとってあこがれの人だと思う。
「お帰りなさい、清正くん。ノアは一緒じゃないのね?」
「ノアは今日も、生徒会の仕事だと思いますよ」
俺は門の前で足を止め、答える。
ナオミさんもキレピカ会会員ではあるんだけど、刹と同じく霊感があまり強くない。
そのためナオミさんは、俺と一緒に煩悩ゴミ拾いをすることはない……残念。
「そう。占部くんとは、もうお話しした?」
「蓮見神社の跡取りの転校生のことですよね? クラス違うんで、まだです」
「私は昨日、弟と時東先輩と一緒に会ったわ。今週金曜日からボランティアに参加するから、ということで、あいさつに来てくれたの」
「聖家の教会が蓮見中班の拠点だし、ノアは副班長ですもんね」
そこにテキトー先輩もいるのは、班長だから当然なんだけど……俺だけハブられたみたいで、ちょっとモヤッとする。まぁいいけど。
「占部くんて、ナオミさんから見てどんな感じでした? 不良っていうウワサを聞いてるんですけど」
「見た目はちょっと怖いけど、いい子だと思うわよ」
「いい子、ですか……」
ナオミさんを疑うわけじゃないが、信じきれない俺は、晴れてはいるが雲が多い空を仰ぐ。
この空模様、もしかしたら数時間後に雨が降るかも。
「あ! 私、まだ言ってなかったわね。清正くん、キレピカ会復帰おめでとう」
「ど、どうも……」
「そうだ! もう少しでパイが焼き上がるから、お祝いにあげるわね」
「ええっ、そんな、悪いですよっ」
俺は遠慮したのだが、「いいから!」と、パイが入った箱を結局持たされてしまった。
「……斬新すぎない?」
家へ帰り、ナオミさんがくれた箱を開けると、中に入っていたのは確かにパイだったんだけど。
何でパイに魚が何匹もぶっ刺さってんの?!
ぶっ刺されて焼かれた魚たちと、目があうんですけど?!
「あれはスターゲイジー・パイだよ。見た目ビックリするけど、おいしかったでしょ?」
次の日学校のろう下でノアをつかまえ、「アレは何だ?!」と聞けば、こともなげにこう返された。
ハイ。ドキドキしながら食べてみたら、意外に味はよかったです。
ぶっ刺された魚は俺じゃなく、星を見つめていたのか……。
「C組に転校生が来たってよ! 占部葵って名前だって!」
一時間目の休み時間、トイレから戻ってきた俺の後ろの席の山田が、教室へ入ってくるなり大声で言った。
「かわいい? というか、男? 女?」
教卓近くにいた男のクラスメイトが、興味津々な様子で山田に尋ねる。
「残念! かわいさのカケラもない男でーす。遠くからしか見れてないけど、背ぇデカくていかつくて、不良って感じ。見に行かね?」
C組の転校生は十中八九、金曜日にテキトー先輩が言ってた、蓮見神社に跡取りとしてやって来た奴だろうな。
「男で、しかも不良かよ……。そろそろ三時間目はじまるし、見に行かねーよ」
最悪〜と言いたげなクラスメイトの返答に、俺は心の中で「だよなー」と同意した。
不良となんてできる限り関わりあいになりたくないし、どうせ転校生とはボランティア活動の時に会うだろうし。
ただでさえボランティアやりたくないのに、新加入がヤンキーだなんて、マジでやる気が消し飛ぶ。
*
「明日、ボランティアかぁ……」
転校生が来てから数日たった、木曜日。
放課後に友達と下らない話で盛り上がった俺は、家への帰り道を、憂鬱な気持ちと共に歩いていた。
家についたらゲーム実況動画でも見て、気をまぎらわせよ! と、視線をアスファルトから上げれば、聖カトレア教会の門が目に入り――
「ナオミさん!」
門の内側でホウキを持って立つ女性、ノアのお姉さんの聖ナオミさんを発見!
ナオミさんは、俺より一つ年上の中学二年生。
腰まである金髪を二つに分けてゆるく三つ編みにしている、メガネ美人だ。
家事全般得意でおっとりしている、The大和撫子って感じの人。
男もほれるような漢が彼氏なので、たぶん一生、俺にとってあこがれの人だと思う。
「お帰りなさい、清正くん。ノアは一緒じゃないのね?」
「ノアは今日も、生徒会の仕事だと思いますよ」
俺は門の前で足を止め、答える。
ナオミさんもキレピカ会会員ではあるんだけど、刹と同じく霊感があまり強くない。
そのためナオミさんは、俺と一緒に煩悩ゴミ拾いをすることはない……残念。
「そう。占部くんとは、もうお話しした?」
「蓮見神社の跡取りの転校生のことですよね? クラス違うんで、まだです」
「私は昨日、弟と時東先輩と一緒に会ったわ。今週金曜日からボランティアに参加するから、ということで、あいさつに来てくれたの」
「聖家の教会が蓮見中班の拠点だし、ノアは副班長ですもんね」
そこにテキトー先輩もいるのは、班長だから当然なんだけど……俺だけハブられたみたいで、ちょっとモヤッとする。まぁいいけど。
「占部くんて、ナオミさんから見てどんな感じでした? 不良っていうウワサを聞いてるんですけど」
「見た目はちょっと怖いけど、いい子だと思うわよ」
「いい子、ですか……」
ナオミさんを疑うわけじゃないが、信じきれない俺は、晴れてはいるが雲が多い空を仰ぐ。
この空模様、もしかしたら数時間後に雨が降るかも。
「あ! 私、まだ言ってなかったわね。清正くん、キレピカ会復帰おめでとう」
「ど、どうも……」
「そうだ! もう少しでパイが焼き上がるから、お祝いにあげるわね」
「ええっ、そんな、悪いですよっ」
俺は遠慮したのだが、「いいから!」と、パイが入った箱を結局持たされてしまった。
「……斬新すぎない?」
家へ帰り、ナオミさんがくれた箱を開けると、中に入っていたのは確かにパイだったんだけど。
何でパイに魚が何匹もぶっ刺さってんの?!
ぶっ刺されて焼かれた魚たちと、目があうんですけど?!
「あれはスターゲイジー・パイだよ。見た目ビックリするけど、おいしかったでしょ?」
次の日学校のろう下でノアをつかまえ、「アレは何だ?!」と聞けば、こともなげにこう返された。
ハイ。ドキドキしながら食べてみたら、意外に味はよかったです。
ぶっ刺された魚は俺じゃなく、星を見つめていたのか……。



