俺たちは駅裏を一時間半くらい掃除し、教会へ戻った。
拾い集めたゴミは、教会の敷地のはしにあるゴミ置場へ袋ごと置き、ボランティア終了。
あとは大人が、燃えるゴミはお焚き上げ、燃えないゴミはお祓いをして処分してくれる。
(一般人チームの、霊感ない人が拾い集めたゴミにも煩悩ゴミはまじるわけだけど、同じように処理するから大丈夫)
「来週、もう一人メンバー増えるから」
テキトー先輩が軍手を外しながら言うと、ノアが「そうなんですか?」と、おどろいた顔をした。
「蓮見神社、跡取りおらんかったやろ。だから親戚から、養子もろたんやって」
「その子が新メンバーってことですか?」
「清正くん、正解。俺もまだあんまよう知らんけど、男で、お前らと同級生らしいで」
「ふーん。いい奴だといいスね」
後で思い返すと俺のこの返事、『寝坊して食パンくわえて走ってたら、まがり角で運命の相手とぶつかる』くらい、フラグ立ててたなと思う。
*
「にーちゃんお帰りなさい。ボランティアお疲れ様ー」
家へ帰ってリビングのドアを開ければ、ソファーに座っていた刹が、すぐさま俺をねぎらってくれた。何ていい子!
「ただいま。まだ六月だけど、やっぱ外は暑いわ」
「暑くても、ボクもにーちゃんと一緒が良かったなぁ。……ノアくんズルい」
刹がうらめしそうな顔で、ツメをかむ。
「コラ! ツメがボロボロになるし、歯並びも悪くなるからやめなさい」
母さんが台所から出てきて軽く刹の頭をたたき、俺の前に立った。
「お帰り、清正。久しぶりのボランティアどうだった?」
「暑いし、ダルかった。俺がゴミ拾ったそばから、ポイ捨てする奴いたし」
「あらまぁ、とんでもない人がいたのね」
「だから復帰したくなかったんだよ」
「恥知らずな人に会っちゃったのはご愁傷様だけど、復帰したくないのって、そういう理由?」
返事につまる俺に、母さんは「もうすぐ夕ご飯だから、手洗って着がえてらっしゃい」と言い、台所へ戻っていった。
「そういう理由だってあるし……」
俺は小声でモゴモゴと言い返し、リビングを出た。
母さんに言われた通り、俺は洗面所で手を洗ってから二階の自室へ行き、ジャージから部屋着に着がえた。
「……ずっとは借りられないしなぁ」
俺は一人言をつぶやいてため息をつき、クローゼットの扉を開け、しゃがみこむ。
低くなった俺の目線が、クローゼットの奥にある、白い紙で包まれた細長い物を見つけてしまう。
白い包みの中身は、ゴミ拾い用の俺の火バサミ。
約二年前に封印するまで、『エクスカリバー』と名前をつけて愛用していた物だ。
「あー、やだやだ……」
俺は小学四年生の夏、小一から続けていた清掃ボランティアを、キレピカ会をやめた。
やめた理由ははっきりしていて、夏休みにあったボランティアで、同い年の女子にこう言われたからだ。
「清正くんて、ほめられるためにボランティアしてるよね。それってボランティアとしてヤバくない? ドウキがフジュンすぎるよねー」と。
彼女が俺にこんなことを言った理由は、すぐに察した。
俺は当時ノアと親友といえるくらい仲良しで、四六時中ノアと一緒に行動してたから、ねたまれたんだなって。
つまりその女子のボランティア活動の動機こそ、「片思い相手であるノアと一緒にいたい」からで、不純以外の何者でもなかったんだけど。
「キミ何言ってるの! 清正のことたいして知らないくせに!」
ノアは俺のかわりに女子へ言い返し、俺をフォローしてくれた。
しかし俺は、守ろうとしてくれたノアの言葉より、傷つけにきた女子の言葉の方に、うつ向く形でうなずいてしまった。
俺は何事も常に平均付近をただよっていて、突出した才能はない。
だから他人にほめてもらえるのは、ボランティア活動だけで。
この時まで自覚していなかったけれど、女子に言われたことがその通りすぎて、否定できなかった。
「俺、キレピカ会やめる」
夏休みの終わりに俺がこう切り出せば、家族全員「あの女子が言ったことなんて気にするな」と言ったが、最終的にはやめさせてもらえた。
当時は普通の清掃活動で、地域の安全を守るためのものではなかったから、だろう。
(ノアだけは「やめるな。戻ってこい」と、言ってきたけど)
親は「あれからもう二年もたったんだし、もういい加減ふり切って忘れろ」と、思っているんだと思う。
ムリだよ。
自覚が衝撃的すぎて、そう簡単に忘れられるかよ。
俺は二年たった今もまだ、自分がボランティアをしていい人間と思えない。
ボランティア後に地域の人たちから、「ありがとう」と感謝され、承認欲求を満たされる喜びを俺は忘れられていない。
拾い集めたゴミは、教会の敷地のはしにあるゴミ置場へ袋ごと置き、ボランティア終了。
あとは大人が、燃えるゴミはお焚き上げ、燃えないゴミはお祓いをして処分してくれる。
(一般人チームの、霊感ない人が拾い集めたゴミにも煩悩ゴミはまじるわけだけど、同じように処理するから大丈夫)
「来週、もう一人メンバー増えるから」
テキトー先輩が軍手を外しながら言うと、ノアが「そうなんですか?」と、おどろいた顔をした。
「蓮見神社、跡取りおらんかったやろ。だから親戚から、養子もろたんやって」
「その子が新メンバーってことですか?」
「清正くん、正解。俺もまだあんまよう知らんけど、男で、お前らと同級生らしいで」
「ふーん。いい奴だといいスね」
後で思い返すと俺のこの返事、『寝坊して食パンくわえて走ってたら、まがり角で運命の相手とぶつかる』くらい、フラグ立ててたなと思う。
*
「にーちゃんお帰りなさい。ボランティアお疲れ様ー」
家へ帰ってリビングのドアを開ければ、ソファーに座っていた刹が、すぐさま俺をねぎらってくれた。何ていい子!
「ただいま。まだ六月だけど、やっぱ外は暑いわ」
「暑くても、ボクもにーちゃんと一緒が良かったなぁ。……ノアくんズルい」
刹がうらめしそうな顔で、ツメをかむ。
「コラ! ツメがボロボロになるし、歯並びも悪くなるからやめなさい」
母さんが台所から出てきて軽く刹の頭をたたき、俺の前に立った。
「お帰り、清正。久しぶりのボランティアどうだった?」
「暑いし、ダルかった。俺がゴミ拾ったそばから、ポイ捨てする奴いたし」
「あらまぁ、とんでもない人がいたのね」
「だから復帰したくなかったんだよ」
「恥知らずな人に会っちゃったのはご愁傷様だけど、復帰したくないのって、そういう理由?」
返事につまる俺に、母さんは「もうすぐ夕ご飯だから、手洗って着がえてらっしゃい」と言い、台所へ戻っていった。
「そういう理由だってあるし……」
俺は小声でモゴモゴと言い返し、リビングを出た。
母さんに言われた通り、俺は洗面所で手を洗ってから二階の自室へ行き、ジャージから部屋着に着がえた。
「……ずっとは借りられないしなぁ」
俺は一人言をつぶやいてため息をつき、クローゼットの扉を開け、しゃがみこむ。
低くなった俺の目線が、クローゼットの奥にある、白い紙で包まれた細長い物を見つけてしまう。
白い包みの中身は、ゴミ拾い用の俺の火バサミ。
約二年前に封印するまで、『エクスカリバー』と名前をつけて愛用していた物だ。
「あー、やだやだ……」
俺は小学四年生の夏、小一から続けていた清掃ボランティアを、キレピカ会をやめた。
やめた理由ははっきりしていて、夏休みにあったボランティアで、同い年の女子にこう言われたからだ。
「清正くんて、ほめられるためにボランティアしてるよね。それってボランティアとしてヤバくない? ドウキがフジュンすぎるよねー」と。
彼女が俺にこんなことを言った理由は、すぐに察した。
俺は当時ノアと親友といえるくらい仲良しで、四六時中ノアと一緒に行動してたから、ねたまれたんだなって。
つまりその女子のボランティア活動の動機こそ、「片思い相手であるノアと一緒にいたい」からで、不純以外の何者でもなかったんだけど。
「キミ何言ってるの! 清正のことたいして知らないくせに!」
ノアは俺のかわりに女子へ言い返し、俺をフォローしてくれた。
しかし俺は、守ろうとしてくれたノアの言葉より、傷つけにきた女子の言葉の方に、うつ向く形でうなずいてしまった。
俺は何事も常に平均付近をただよっていて、突出した才能はない。
だから他人にほめてもらえるのは、ボランティア活動だけで。
この時まで自覚していなかったけれど、女子に言われたことがその通りすぎて、否定できなかった。
「俺、キレピカ会やめる」
夏休みの終わりに俺がこう切り出せば、家族全員「あの女子が言ったことなんて気にするな」と言ったが、最終的にはやめさせてもらえた。
当時は普通の清掃活動で、地域の安全を守るためのものではなかったから、だろう。
(ノアだけは「やめるな。戻ってこい」と、言ってきたけど)
親は「あれからもう二年もたったんだし、もういい加減ふり切って忘れろ」と、思っているんだと思う。
ムリだよ。
自覚が衝撃的すぎて、そう簡単に忘れられるかよ。
俺は二年たった今もまだ、自分がボランティアをしていい人間と思えない。
ボランティア後に地域の人たちから、「ありがとう」と感謝され、承認欲求を満たされる喜びを俺は忘れられていない。



