「ノアはまだ食う感じ?」
購入した屋台飯をすべて食べ終えた俺は、最後の一品であるりんご飴をかじっているノアへ尋ねた。
「ううん、そろそろ帰らなきゃ。イカ焼き二つと牛串三つと焼き鳥十本は、帰り道で買うことにする」
「もうそんな時間か?」
俺はあえて追加の買い物内容にはツッコミを入れず、机のはしに置いていたスマホを見ると、二十時三十三分を表示していた。
見上げれば、屋台をめぐる前はまだあかね色だった空はすっかり暗く、月がのぼっている。
「本部に預けてる荷物取りに行って、帰るか」
俺の言葉にノアが「うん」と返事をするなり、ノアのスマホが電話の着信を知らせる音を鳴らした。
「はい、聖です。――会長たちも来てるんですね。――ええ、屋台も回ったし帰るところです。――ちょっと待って下さいね」
ノアは耳へスマホをあてたまま、困り顔で俺を見た。
「生徒会長たちから、『これから会おう』ていう誘い? 行ってきたら?」
察しよく俺がこう言うと、ノアは数秒迷う仕草をしたが、「今から行きます」と返事をして電話を切った。
「行ってらっしゃーい」
「ゆっくり帰ってて。会長たちにあいさつし終わったらすぐ清正に連絡するし、追いかけるから」
「分かった」
「走って帰ったりしたら、僕怒るからね!」
別にゆっくり話してくりゃいいじゃん、と思う反面、俺と帰る方を重視してくれてるぽいのが、うれしい。
俺はひらひらと手をふり、早足で祭りの人ごみの中へ消えていくノアを見送った。
*
祭り運営本部へ行った俺は、「どうせ合流するんだし」と、朝預けた自分の荷物とノアの荷物を受け取った。
(もちろんそのことは、DMでノアに即連絡を入れた)
俺は自分のボディバッグを身体の前にかけ、ノアのリュックを背負い、火バサミの『エクスカリバー』をズボンのベルト通しに通す。
「ではゆっくり帰りますか――お?」
出口へ向かおうとした俺の目に、段ボールへビニル袋をかぶせた簡易ゴミ箱が映る。
そういや屋台めぐり中に、同じ簡易ゴミ箱がいくつも設置してあったのを見かけたけど、どれもかなりゴミが入ってたな。
あれから一時間半以上たってるし、ゴミが満杯になっているかも?
――気分もいいし、ノアを待つ時間使って、善行の一つでも積んどくか!
思い立ったが吉日! じゃないけど、俺は本部の人から二枚ゴミ袋をもらい、一番近くにあるゴミ箱へ向かった。
(二枚なのは、一度にゴミ袋を持てる腕が、俺には二本しかないため)
「わぁ、予想以上……」
お面を売る屋台の近くにあったゴミ箱からはゴミがあふれ、入り切らない分は近くの地面へ置かれていた。
少し先にある金魚すくい近くのゴミ箱も、同じ状態だった。
「他のゴミ箱の袋も変えるべき?」
俺は段ボールへ新しいゴミ袋をかけ、ゴミがつまった古いゴミ袋を両手に持って運びながら、悩む。
全部のゴミ箱の袋を新しい物に交換する気はないけど、もう二個くらいは変えておこうか?
おそらくどのゴミ箱も、似たり寄ったりな状態な気するから。
「どうしようかなぁ?」
一人言をつぶやく俺が向かっているのは、屋台が並ぶメインストリートからかなり離れた場所にある、神社のゴミ置場。
ゴミ置場付近は木と砂利しかないので、近づくにつれて人の気配がどんどんなくなっていく。
ひと気のない夜の神社は、薄気味悪い。
心霊現象的なことを考えてしまわないために俺は、今日あった一番いい記憶を思い出すことにした。
『だから感謝という報酬だけで、みんなのために行動できることは、十分立派だと思うんだ』
『感謝されてうれしい、という気持ちをゼロにしてボランティアできる人って、すごく少ないと思うよ。だから清正は偽善者なんかじゃない』
これを言った時のノアの顔も声も、鮮明に思い出せる。
ノアが、感謝されるのがうれしくてボランティアをする俺を認めてくれて、胸のつかえがとれた。
偽善者じゃないと言い切ってくれたこと、思い出すだけでウルッとくる。
いつか俺の大事な物を武器化できた時、俺もノアとバディを組みたいから、ボランティアを続けよう。
……テキトー先輩に「キレピカ会やめたい」と相談したこと、なかったことにできないかな。
一週間で前言撤回するのは、カッコ悪い気がするけど……この小っ恥ずかしさはガマンするしかないな……。
『でもね、清正』
『感謝されてうれしい、という他人からの評価だよりな動機はあやういと、僕は考える』
『「幼稚園児の清正は、何故ボランティア活動が好きだったのか?」を、どうにかして思い出してみてよ。たぶんそれが、今後清正がボランティア活動をしていく上で、重要な核になると思うから』
俺を救う言葉をくれたノアが、続けて言った警告とヒントも、芋づる式に思い出す。
幼稚園児だったころのことって、どうやって思い出せばいいんだ?
家帰ったら、そのころのアルバムでも見てみるか?
周囲に人がいないのをいいことに、俺は変顔しながら首をかしげた。
購入した屋台飯をすべて食べ終えた俺は、最後の一品であるりんご飴をかじっているノアへ尋ねた。
「ううん、そろそろ帰らなきゃ。イカ焼き二つと牛串三つと焼き鳥十本は、帰り道で買うことにする」
「もうそんな時間か?」
俺はあえて追加の買い物内容にはツッコミを入れず、机のはしに置いていたスマホを見ると、二十時三十三分を表示していた。
見上げれば、屋台をめぐる前はまだあかね色だった空はすっかり暗く、月がのぼっている。
「本部に預けてる荷物取りに行って、帰るか」
俺の言葉にノアが「うん」と返事をするなり、ノアのスマホが電話の着信を知らせる音を鳴らした。
「はい、聖です。――会長たちも来てるんですね。――ええ、屋台も回ったし帰るところです。――ちょっと待って下さいね」
ノアは耳へスマホをあてたまま、困り顔で俺を見た。
「生徒会長たちから、『これから会おう』ていう誘い? 行ってきたら?」
察しよく俺がこう言うと、ノアは数秒迷う仕草をしたが、「今から行きます」と返事をして電話を切った。
「行ってらっしゃーい」
「ゆっくり帰ってて。会長たちにあいさつし終わったらすぐ清正に連絡するし、追いかけるから」
「分かった」
「走って帰ったりしたら、僕怒るからね!」
別にゆっくり話してくりゃいいじゃん、と思う反面、俺と帰る方を重視してくれてるぽいのが、うれしい。
俺はひらひらと手をふり、早足で祭りの人ごみの中へ消えていくノアを見送った。
*
祭り運営本部へ行った俺は、「どうせ合流するんだし」と、朝預けた自分の荷物とノアの荷物を受け取った。
(もちろんそのことは、DMでノアに即連絡を入れた)
俺は自分のボディバッグを身体の前にかけ、ノアのリュックを背負い、火バサミの『エクスカリバー』をズボンのベルト通しに通す。
「ではゆっくり帰りますか――お?」
出口へ向かおうとした俺の目に、段ボールへビニル袋をかぶせた簡易ゴミ箱が映る。
そういや屋台めぐり中に、同じ簡易ゴミ箱がいくつも設置してあったのを見かけたけど、どれもかなりゴミが入ってたな。
あれから一時間半以上たってるし、ゴミが満杯になっているかも?
――気分もいいし、ノアを待つ時間使って、善行の一つでも積んどくか!
思い立ったが吉日! じゃないけど、俺は本部の人から二枚ゴミ袋をもらい、一番近くにあるゴミ箱へ向かった。
(二枚なのは、一度にゴミ袋を持てる腕が、俺には二本しかないため)
「わぁ、予想以上……」
お面を売る屋台の近くにあったゴミ箱からはゴミがあふれ、入り切らない分は近くの地面へ置かれていた。
少し先にある金魚すくい近くのゴミ箱も、同じ状態だった。
「他のゴミ箱の袋も変えるべき?」
俺は段ボールへ新しいゴミ袋をかけ、ゴミがつまった古いゴミ袋を両手に持って運びながら、悩む。
全部のゴミ箱の袋を新しい物に交換する気はないけど、もう二個くらいは変えておこうか?
おそらくどのゴミ箱も、似たり寄ったりな状態な気するから。
「どうしようかなぁ?」
一人言をつぶやく俺が向かっているのは、屋台が並ぶメインストリートからかなり離れた場所にある、神社のゴミ置場。
ゴミ置場付近は木と砂利しかないので、近づくにつれて人の気配がどんどんなくなっていく。
ひと気のない夜の神社は、薄気味悪い。
心霊現象的なことを考えてしまわないために俺は、今日あった一番いい記憶を思い出すことにした。
『だから感謝という報酬だけで、みんなのために行動できることは、十分立派だと思うんだ』
『感謝されてうれしい、という気持ちをゼロにしてボランティアできる人って、すごく少ないと思うよ。だから清正は偽善者なんかじゃない』
これを言った時のノアの顔も声も、鮮明に思い出せる。
ノアが、感謝されるのがうれしくてボランティアをする俺を認めてくれて、胸のつかえがとれた。
偽善者じゃないと言い切ってくれたこと、思い出すだけでウルッとくる。
いつか俺の大事な物を武器化できた時、俺もノアとバディを組みたいから、ボランティアを続けよう。
……テキトー先輩に「キレピカ会やめたい」と相談したこと、なかったことにできないかな。
一週間で前言撤回するのは、カッコ悪い気がするけど……この小っ恥ずかしさはガマンするしかないな……。
『でもね、清正』
『感謝されてうれしい、という他人からの評価だよりな動機はあやういと、僕は考える』
『「幼稚園児の清正は、何故ボランティア活動が好きだったのか?」を、どうにかして思い出してみてよ。たぶんそれが、今後清正がボランティア活動をしていく上で、重要な核になると思うから』
俺を救う言葉をくれたノアが、続けて言った警告とヒントも、芋づる式に思い出す。
幼稚園児だったころのことって、どうやって思い出せばいいんだ?
家帰ったら、そのころのアルバムでも見てみるか?
周囲に人がいないのをいいことに、俺は変顔しながら首をかしげた。


