「ずっと話したかったこと? いいけど、何?」
こう返事をしたけど、俺の本音は「話さないで。聞きたくない」。
だって、嫌な予感をビンビンに感じているから。
でも同時に、逃げたり話をそらしたりができない気配も感じたから、OKするしかなかった。
「期末テストが終わった翌日に、ボランティアしたこと覚えてる?」
「一ヶ月前くらいのことかよ。どうだったかなぁ?」
嫌な予感大当たり。
バッチリ覚えているけど、俺はとぼける。
「ゴミ拾いを終えて帰ろうとした時、通りすがりのおじいさんに、ボランティアしてたことをほめられただろ」
「そうだっけ?」
机をはさんだ向こう側にいたノアが戻ってきて、パイプイスへ座る。
「おじいさんにほめられて、清正は『感謝されると、やる気でるな!』って喜んで。僕は清正のそのうれしい気持ちに、水を差すようなことを言った」
「覚えてねぇなぁ」
ウソ。めちゃくちゃ覚えてる。
覚えてるから、その時以降、俺はノアに対して気まずさを感じ続けている。
「何故水を差すようなことを言ったかの言い訳をさせてもらうと、僕は清正が『ほめられて喜んでしまった』と後で気づいて、落ちこまないようにしてあげたかった。キミのそんな姿を見たくないという、僕のエゴが理由で。――ごめん、清正」
「ノアってば急にどうしたよ? 俺アホで、そんな昔のこと思い出せないから、謝罪なんていらないし」
やめよう、ノア。
あれはもうとっくの昔に終わったことなんだから。
あんなどうでもいいこと忘れよう? なかったことにしよう?
あの時、頭空っぽで喜んだおろかな俺を、お願いだから忘れてくれよ。
「なら、ただ聞いて欲しい。あの時、清正のうれしい気持ちに冷水を浴びせたこと、後悔してる。ごめんね。ずっと謝りたかったんだけど、謝れなくて……」
長い金髪をゆらし、ノアが俺へ頭を下げる。
「うん、分かった! 聞いたから、もうこの話は終わりな!」
俺は両手でノアの頭をつかみ、無理矢理上げさせる。
「まだ終われない」
「何で? 謝ったら大抵のことは、それで解決じゃんか」
「さっき宮井川さんにも言ったけど、ほめられたくてボランティアすることは、僕は全然ありだと思ってる」
「……どうして?」
俺はノアの頭から手を離し、かわいた唇を動かして聞く。
今の話題から早く離れたい。だけど、どうしても尋ねずにはいられなかった。
「ゴミ拾いに限らずボランティアでやってることは、ボランティアじゃなきゃ、たいていお金がかかることなんだ」
「まぁ、そうだな」
燃えるゴミの日が週二回だか三回だかあるけど、集めてゴミ処理場まで運んでくれるのは、給料をもらって清掃の仕事をしている人だもんな。
「だから感謝という報酬だけで、みんなのために行動できることは、十分立派だと思うんだ」
「でもボランティアって、報酬を望むもんじゃないじゃん……」
「ネットで調べてみたけど、感謝されるのがうれしいからボランティアをしている、という人って多いらしいよ」
「マジで?!」
俺だけじゃなかったんだ?!
「僕は、煩悩ゴミ拾いは視える者の義務だと思ってる。だけど感謝されたら、僕だって普通にうれしいよ」
「このこと、もっと早く言えばよかったね」と、ノアが眉を八の字にして苦笑いする。
「感謝されてうれしい、という気持ちをゼロにしてボランティアできる人って、すごく少ないと思うよ。だから清正は、偽善者なんかじゃない」
ノアがきっぱりとした声で言い切り、俺を肯定してくれる。
「……本当に、そう思う?」
「思う。宮井川さんが何度言おうが、誰が宮井川さんと同じことを清正に言おうが、僕は否定する。絶対だ。約束する」
二年前、俺の心の奥深くまで突き刺さった『偽善者』という黒い槍が、急速にさびてボロボロになり、くずれ落ちていくのを感じた。
「ありがと、ノア」
心がスーッとして、ちょっと泣きそう。泣かないけど!
「でもね、清正」
今、宮井川が俺にかけた『偽善者』という呪いが解けて、ハッピーエンドな流れだったよな? 続くの?
「『感謝されてうれしい』という、他人からの評価だよりな動機はあやういと、僕は考える」
「すまん。言ってることが難しくて、よく分からない」
「えーっとね、『感謝されなきゃボランティアやらないの?』ということ」
「へ?」
「普通のボランティアなら、『感謝されなくなったのでやめます』でもいい。けど煩悩ゴミ拾いは、視える人間しかできないことで、やらないとみんなに危険が及ぶことだから」
「感謝されなくても、ボランティア続けられますか? ってこと?」
腕を組んで俺が聞けば、ノアは「イエス」と言ってうなずいた。
「僕らが親に連れられて、キレピカ会へ参加しだしたころのことを思い出してたんだけど、幼すぎて最初はまったく戦力になってなかったじゃない?」
「ぼんやりとしか覚えてないけど、小学校上がる前だろ。そりゃ感謝されるどころか、お荷物だったろうな」
「でも清正は、お荷物なころからボランティア活動が好きだったのを、僕は覚えてる。――何で好きだったの?」
俺はアゴをなで、頭をかき、貧乏ゆすりをして――「思い出せない……」と答えた。
ノアが『仕方ないか。清正はバカだもんな』と言いたげな表情で、ため息をつく。ひどい。
「思い出せないもんは思い出せないの! 昨日の夕飯何食べたかだって思い出せねーわ!」
「いばるれることじゃないよ、それ」
ノアはあきれ顔で前髪をかき上げた後、人差し指でトンと俺の胸の中心を突いて言う。
「『幼稚園児の清正は、何故ボランティア活動が好きだったのか?』を、どうにかして思い出してみてよ。たぶんそれが、今後清正がボランティア活動をしていく上で、重要な核になると思うから」
俺はノアの顔と人差し指を数回交互に見てから、「分かった」と答えた。
ひらがなすらろくに読み書きできないころの記憶なんて、ほとんど覚えていない。
だから一生、何故幼稚園児の俺はボランティア活動が好きだったのか、思い出せないままかもしれない。
けど、俺みたいな奴でもボランティアをしていいんだ、ということは分かった。
優しくて優秀な、幼なじみのおかげで。
ありがとう、ノア。
すごく感謝してる……けど、何だかめちゃくちゃ気恥ずかしいな?!
「しっかし、そんな考え方したことなかったわ。さすがイケメン聖人君子パーフェクトマンは違うな」
照れて赤面しそうなのをごまかすため、俺はわざと憎まれ口をたたき、かき氷をスプーンストローで口の中へかきこむ。
んんーっ! やっぱ頭キーンってなる!
「……僕はまったく全然、聖人君子でも完璧でもないよ」
こめかみを押さえる俺の視界のはしに、ぶすっとした顔で、お茶のペットボトルを持つノアが映る。
「だって僕、宮井川さんのこと嫌いだもの。キミの純粋な心にヒビを入れた彼女を、僕は絶対に許さない」
「純粋とかねーし。俺の心なんて昔からドブ色だし」
俺のこと買いかぶりすぎだし、こそばゆいこと言うな! また顔が赤くなるじゃんかぁ!
「ちなみに僕が髪を伸ばしているのは、彼女が『長髪の男は嫌い』と言ったのを聞いたから」
確かに俺が脱退するまではノアの髪、短かったな……。
モブよりは嫌われてた方がマシ! 的なことを宮井川は言ってたけど、本当にそれでいいのか?
まぁ色々宮井川の自業自得だから、心配もフォローもしないけど。
「というか僕は自分のことを、俗物こえて魔じゃないかと思ってるくらいだよ……」
「『ま』?」
「魔性の『魔』」
ノアが深刻な顔であり得ないことを言うから、俺は思わずハハッと笑ってしまった。
「お前が魔性? ないない、それはナイ。魔性ってのは、セクシーなお姉さんのためにある言葉だろ?」
「その知識はちょっと、いや、だいぶ間違ってると思うよ。……僕って、女性にモテるだろう?」
は? 事実だけど、真面目な顔でイラッとすること言い出したぞ。
「そうだな。宮井川みたいなヤバイ女子から、人間以外の女にまでモテてるな」
「普通の女の子からはモテてない、みたいな誤解を招く言い方やめてくれる?――とにかく、僕のモテっぷりは異常だろ。僕が超美形で勉強も運動もできて、優しかったとしても!」
「俺、家帰るわ」
「清正待って、最後まで聞いて!――今言った通り、僕のスペックが白馬に乗った王子様でも、それは人間以外の女子からモテる理由の説明にはならない」
「んー。言われてみれば、確かにそうかも?」
「人間に限定しても、宮井川さんみたいな、嫌われてまで僕の特別になりたい人までいる」
「ご愁傷様です」
俺はストロースプーンを持ったまま手をあわせ、ノアを拝む。
「だから僕は、あらゆる女子を魅力して堕落させる魔性の存在なんじゃないかと、不安なんだ……」
爆モテうらやましいなぁと思っていたけど、宮井川みたいなヤバイのにも好かれてんだよな。それは確かに嫌だ。
だけどノア、自分がモテることについて、こんな風に悩んでたのか……。
――よしっ、今度は俺がノアを助ける番だ!
「ノアは魔性なんかじゃない。お前が、あらゆる生物の女子にとって理想的なだけだって。心配すんな!」
しかし困ったな。
俺、ノアみたいに論理的に納得できそうなことを言えない……。
でも、バカが悩んでも仕方ない。
俺はお前の味方だ! ってのが伝われば、ヨシとする!
「ノアに煩悩ゴミみたいな悪い気配は全然感じないし、幼稚園から一緒の俺が言うんだから間違いねーよ!」
俺は満面の笑みでサムズアップ。
「仮にもしお前が魔性だとしても、俺は友達でいてやっから、不安になんなくていい」
ダメ押しに、俺は座っているパイプイスごとノアに近づき、肩を組む。
「……約束だからね」
ノアはたこ焼きを口へ放りこみ、俺を見ずにモグモグ食べる。
その横顔はちょっとだけ赤い。
へへっ、今度は俺がノアを照れさせてやったぜ!
こう返事をしたけど、俺の本音は「話さないで。聞きたくない」。
だって、嫌な予感をビンビンに感じているから。
でも同時に、逃げたり話をそらしたりができない気配も感じたから、OKするしかなかった。
「期末テストが終わった翌日に、ボランティアしたこと覚えてる?」
「一ヶ月前くらいのことかよ。どうだったかなぁ?」
嫌な予感大当たり。
バッチリ覚えているけど、俺はとぼける。
「ゴミ拾いを終えて帰ろうとした時、通りすがりのおじいさんに、ボランティアしてたことをほめられただろ」
「そうだっけ?」
机をはさんだ向こう側にいたノアが戻ってきて、パイプイスへ座る。
「おじいさんにほめられて、清正は『感謝されると、やる気でるな!』って喜んで。僕は清正のそのうれしい気持ちに、水を差すようなことを言った」
「覚えてねぇなぁ」
ウソ。めちゃくちゃ覚えてる。
覚えてるから、その時以降、俺はノアに対して気まずさを感じ続けている。
「何故水を差すようなことを言ったかの言い訳をさせてもらうと、僕は清正が『ほめられて喜んでしまった』と後で気づいて、落ちこまないようにしてあげたかった。キミのそんな姿を見たくないという、僕のエゴが理由で。――ごめん、清正」
「ノアってば急にどうしたよ? 俺アホで、そんな昔のこと思い出せないから、謝罪なんていらないし」
やめよう、ノア。
あれはもうとっくの昔に終わったことなんだから。
あんなどうでもいいこと忘れよう? なかったことにしよう?
あの時、頭空っぽで喜んだおろかな俺を、お願いだから忘れてくれよ。
「なら、ただ聞いて欲しい。あの時、清正のうれしい気持ちに冷水を浴びせたこと、後悔してる。ごめんね。ずっと謝りたかったんだけど、謝れなくて……」
長い金髪をゆらし、ノアが俺へ頭を下げる。
「うん、分かった! 聞いたから、もうこの話は終わりな!」
俺は両手でノアの頭をつかみ、無理矢理上げさせる。
「まだ終われない」
「何で? 謝ったら大抵のことは、それで解決じゃんか」
「さっき宮井川さんにも言ったけど、ほめられたくてボランティアすることは、僕は全然ありだと思ってる」
「……どうして?」
俺はノアの頭から手を離し、かわいた唇を動かして聞く。
今の話題から早く離れたい。だけど、どうしても尋ねずにはいられなかった。
「ゴミ拾いに限らずボランティアでやってることは、ボランティアじゃなきゃ、たいていお金がかかることなんだ」
「まぁ、そうだな」
燃えるゴミの日が週二回だか三回だかあるけど、集めてゴミ処理場まで運んでくれるのは、給料をもらって清掃の仕事をしている人だもんな。
「だから感謝という報酬だけで、みんなのために行動できることは、十分立派だと思うんだ」
「でもボランティアって、報酬を望むもんじゃないじゃん……」
「ネットで調べてみたけど、感謝されるのがうれしいからボランティアをしている、という人って多いらしいよ」
「マジで?!」
俺だけじゃなかったんだ?!
「僕は、煩悩ゴミ拾いは視える者の義務だと思ってる。だけど感謝されたら、僕だって普通にうれしいよ」
「このこと、もっと早く言えばよかったね」と、ノアが眉を八の字にして苦笑いする。
「感謝されてうれしい、という気持ちをゼロにしてボランティアできる人って、すごく少ないと思うよ。だから清正は、偽善者なんかじゃない」
ノアがきっぱりとした声で言い切り、俺を肯定してくれる。
「……本当に、そう思う?」
「思う。宮井川さんが何度言おうが、誰が宮井川さんと同じことを清正に言おうが、僕は否定する。絶対だ。約束する」
二年前、俺の心の奥深くまで突き刺さった『偽善者』という黒い槍が、急速にさびてボロボロになり、くずれ落ちていくのを感じた。
「ありがと、ノア」
心がスーッとして、ちょっと泣きそう。泣かないけど!
「でもね、清正」
今、宮井川が俺にかけた『偽善者』という呪いが解けて、ハッピーエンドな流れだったよな? 続くの?
「『感謝されてうれしい』という、他人からの評価だよりな動機はあやういと、僕は考える」
「すまん。言ってることが難しくて、よく分からない」
「えーっとね、『感謝されなきゃボランティアやらないの?』ということ」
「へ?」
「普通のボランティアなら、『感謝されなくなったのでやめます』でもいい。けど煩悩ゴミ拾いは、視える人間しかできないことで、やらないとみんなに危険が及ぶことだから」
「感謝されなくても、ボランティア続けられますか? ってこと?」
腕を組んで俺が聞けば、ノアは「イエス」と言ってうなずいた。
「僕らが親に連れられて、キレピカ会へ参加しだしたころのことを思い出してたんだけど、幼すぎて最初はまったく戦力になってなかったじゃない?」
「ぼんやりとしか覚えてないけど、小学校上がる前だろ。そりゃ感謝されるどころか、お荷物だったろうな」
「でも清正は、お荷物なころからボランティア活動が好きだったのを、僕は覚えてる。――何で好きだったの?」
俺はアゴをなで、頭をかき、貧乏ゆすりをして――「思い出せない……」と答えた。
ノアが『仕方ないか。清正はバカだもんな』と言いたげな表情で、ため息をつく。ひどい。
「思い出せないもんは思い出せないの! 昨日の夕飯何食べたかだって思い出せねーわ!」
「いばるれることじゃないよ、それ」
ノアはあきれ顔で前髪をかき上げた後、人差し指でトンと俺の胸の中心を突いて言う。
「『幼稚園児の清正は、何故ボランティア活動が好きだったのか?』を、どうにかして思い出してみてよ。たぶんそれが、今後清正がボランティア活動をしていく上で、重要な核になると思うから」
俺はノアの顔と人差し指を数回交互に見てから、「分かった」と答えた。
ひらがなすらろくに読み書きできないころの記憶なんて、ほとんど覚えていない。
だから一生、何故幼稚園児の俺はボランティア活動が好きだったのか、思い出せないままかもしれない。
けど、俺みたいな奴でもボランティアをしていいんだ、ということは分かった。
優しくて優秀な、幼なじみのおかげで。
ありがとう、ノア。
すごく感謝してる……けど、何だかめちゃくちゃ気恥ずかしいな?!
「しっかし、そんな考え方したことなかったわ。さすがイケメン聖人君子パーフェクトマンは違うな」
照れて赤面しそうなのをごまかすため、俺はわざと憎まれ口をたたき、かき氷をスプーンストローで口の中へかきこむ。
んんーっ! やっぱ頭キーンってなる!
「……僕はまったく全然、聖人君子でも完璧でもないよ」
こめかみを押さえる俺の視界のはしに、ぶすっとした顔で、お茶のペットボトルを持つノアが映る。
「だって僕、宮井川さんのこと嫌いだもの。キミの純粋な心にヒビを入れた彼女を、僕は絶対に許さない」
「純粋とかねーし。俺の心なんて昔からドブ色だし」
俺のこと買いかぶりすぎだし、こそばゆいこと言うな! また顔が赤くなるじゃんかぁ!
「ちなみに僕が髪を伸ばしているのは、彼女が『長髪の男は嫌い』と言ったのを聞いたから」
確かに俺が脱退するまではノアの髪、短かったな……。
モブよりは嫌われてた方がマシ! 的なことを宮井川は言ってたけど、本当にそれでいいのか?
まぁ色々宮井川の自業自得だから、心配もフォローもしないけど。
「というか僕は自分のことを、俗物こえて魔じゃないかと思ってるくらいだよ……」
「『ま』?」
「魔性の『魔』」
ノアが深刻な顔であり得ないことを言うから、俺は思わずハハッと笑ってしまった。
「お前が魔性? ないない、それはナイ。魔性ってのは、セクシーなお姉さんのためにある言葉だろ?」
「その知識はちょっと、いや、だいぶ間違ってると思うよ。……僕って、女性にモテるだろう?」
は? 事実だけど、真面目な顔でイラッとすること言い出したぞ。
「そうだな。宮井川みたいなヤバイ女子から、人間以外の女にまでモテてるな」
「普通の女の子からはモテてない、みたいな誤解を招く言い方やめてくれる?――とにかく、僕のモテっぷりは異常だろ。僕が超美形で勉強も運動もできて、優しかったとしても!」
「俺、家帰るわ」
「清正待って、最後まで聞いて!――今言った通り、僕のスペックが白馬に乗った王子様でも、それは人間以外の女子からモテる理由の説明にはならない」
「んー。言われてみれば、確かにそうかも?」
「人間に限定しても、宮井川さんみたいな、嫌われてまで僕の特別になりたい人までいる」
「ご愁傷様です」
俺はストロースプーンを持ったまま手をあわせ、ノアを拝む。
「だから僕は、あらゆる女子を魅力して堕落させる魔性の存在なんじゃないかと、不安なんだ……」
爆モテうらやましいなぁと思っていたけど、宮井川みたいなヤバイのにも好かれてんだよな。それは確かに嫌だ。
だけどノア、自分がモテることについて、こんな風に悩んでたのか……。
――よしっ、今度は俺がノアを助ける番だ!
「ノアは魔性なんかじゃない。お前が、あらゆる生物の女子にとって理想的なだけだって。心配すんな!」
しかし困ったな。
俺、ノアみたいに論理的に納得できそうなことを言えない……。
でも、バカが悩んでも仕方ない。
俺はお前の味方だ! ってのが伝われば、ヨシとする!
「ノアに煩悩ゴミみたいな悪い気配は全然感じないし、幼稚園から一緒の俺が言うんだから間違いねーよ!」
俺は満面の笑みでサムズアップ。
「仮にもしお前が魔性だとしても、俺は友達でいてやっから、不安になんなくていい」
ダメ押しに、俺は座っているパイプイスごとノアに近づき、肩を組む。
「……約束だからね」
ノアはたこ焼きを口へ放りこみ、俺を見ずにモグモグ食べる。
その横顔はちょっとだけ赤い。
へへっ、今度は俺がノアを照れさせてやったぜ!


