弁明する時間ももらえず、ほんとにまるで風みたいに、東はひらりと教室を出ていってしまった。
「あ〜あ。やっちゃったね」
隣で一部始終を見ていた三木が、あきれ半分、面白がり半分の声を出す。
「みき〜!!」
私はそのまま机に突っ伏してから、勢いよく三木に泣きつくと、「あんたら一生成長しないね」と、容赦ない暴言が降ってくる。
東汀。
私の隣の隣のクラスの、3組の男の子。
純粋で、子どもみたいにキラキラしてて、笑うと目が三日月みたいに細くなって、なのに変に大人びたところは一切なくて。
鈍感で、私がどれだけわかりやすく好意を向けても、全く気付く素振りなんかない。
きっと、性欲の“せ”の字もまだ知らないと思う。
二番手でも、当て馬キャラでも、なんでもいいよ。
そんな東が、私にとっての、いちばんの男の子。



