教室に入ると、そこはもう誰もいなかった。扉が閉まった瞬間、空気が変わる。沈黙。
どうしよう。何から話せばいいのか分からない。
さっきのこと?北見?それとも元カノ?いや今それは絶対違う。
嫌われた?
その考えが一瞬よぎって、胸がぎゅっと痛くなる。
そんなの絶対嫌だ。私は慌てて教卓へ向かった。丸められたポスターを手に取る。
「東、このポスター……」
一緒に貼ろうって言おうとした、その瞬間だった。
「――っ」
気づいたときには、東の顔が目の前にあった。
食べられるみたいに、唇が塞がれている。
え、待って……今、何が――。
「あ、ず――」
名前を呼ぼうとしても続かない。
東の手が私の頬に触れている。優しく、でも逃げられないくらいしっかりと。
もう一度、さっきより深く重なる。
息ができないわけじゃないのに、呼吸の仕方を忘れる。
何度も、何度も。まるで確認するみたいに、離れたと思ったらまた近づいてきて、私はそのたびにただ固まることしかできなかった。



