結局、私の勉強に対する集中力は一時間弱で完全に力尽きてしまった。
最初はちゃんと頑張ろうと思っていたんだよ?せっかく東と勉強するんだから真面目にやろうって。
でも無理だった。だって目の前には東がいるんだもん。しかも東の家。東の空間。東の匂い。東の声。そんな状況で勉強だけに集中できるほど私は器用じゃない。
気付けば問題集を開いたまま、バレないように東を盗み見する時間になっていた。
真剣な顔で問題を解く横顔。長いまつ毛。時々考え込む仕草。ペンを持つ指先。どこを見てもかっこよくて、胸がきゅうっとなる。
好きだなぁ。本当に好き。この人が私の彼氏なんだなぁ。
そう思うたびに幸せな気持ちになる。たぶんこの気持ちはずっと続くんだろうな。東を見るたびに好きだと思って、そのたびにまた好きになってしまうんだろうな。
そんなことを考えながら私は東のつむじをじっと見つめていた。
「西宮」
「…っ、はい」
突然名前を呼ばれて肩が跳ねる。慌てて返事をすると、東は問題集から目を離さないままふっと笑った。
「もう集中力切れたの?」
「うっ……だって~」
私の集中力が切れた原因は全部東なんだから。
かわいいとか言うし。我慢できなくなるとか言うし。そんなこと言われたら意識するに決まってるじゃないか。
私はこの一時間ずっとそのことで頭がいっぱいだったんだからね。



