「東、靴履き替えてくるからちょっと待っててくれる?」
東は一瞬だけこちらを見て、うん、と短く頷く。
私は急いで一組の下駄箱のほうへ駆け出した。少しでも東と離れる時間が惜しくて仕方ない。
恋人になったのにクラスが違うなんて、こんなところで弊害になるなんて思ってなかった。
慌てて靴を履き替えて、心臓の音を追い越すみたいに早足で戻ると、東はちゃんとそこにいて、私を見つけると小さく笑った。早いね、とクスクス笑われてしまって、少し恥ずかしくなる。
「今日、放課後一緒に勉強する?」
歩きながら、東が私の顔を覗き込むようにそう言ってくる。
う、と喉が詰まったみたいになって、そういえば、と記憶が一気に戻ってくる。
そうだった、期末テストが近いからって、前にふたりで勉強会しようって話してたんだった。
「東、私バカだけど失望しないでよ?」
いや、もう一年のときに既にバレてる気もするけど。
東は一瞬きょとんとして、それからすぐにふっと柔らかく笑う。
「はは、大丈夫だよ。俺、教えるから」
「ほんと?あまりにも勉強ができなさすぎて、私のこと嫌になっちゃうかも」
冗談っぽく言いながらも、ほんの少しだけ本音が混じってしまう。こんな私を見て、いつか呆れられたりしないかなって、どこかでずっと不安が消えない。



