だめだ。こんなのだめ。
私は慌てて首を左右にぶんぶん振った。
考えるのはやめよう。東のことを考えてしまうから忘れられないんだ。そうだよ。今だって結局東のことばっかり考えてる。
忘れたいって言いながら、頭の中は東でいっぱいじゃないか。というか、東の気持ちなんて考えたところで分かるわけないんだし。どうせ私には分からない。だったら考えるだけ無駄だ。
無心。そう、無心。何も考えない。東のことも考えない。
どうにか心に分厚い鎧を着せて、重い足を引きずりながら学校へ向かう。
そして校門が見えた瞬間、胸の奥がぎゅっと縮こまった。
入りたくない。今日は休みたい。そんな子どもみたいな考えが浮かんでしまう。でも休むわけにもいかなくて、私は渋々昇降口へ向かった。
靴を履き替えて、二階へ続く階段へ向かった、その時だった。
「おはよ」
「……!?」
聞きなれた声に心臓が跳ね上がって、反射的に顔を上げると、階段のすぐそばに東がいる。
なんで…なんで東がここにいるの。
まさか。誰かを待ってる?女の子とか?
そんな考えが一瞬頭をよぎる。それだけで胸がずきりと痛んだ。



