東のことを好きな自分ごと切り捨てるみたいに、その言葉を吐き出した。
東は何も言わずに、ただ私を見ていた。そして、その表情が少しずつ変わっていく。
最初は驚いたような顔だった。次に困ったような顔になった。そして、だんだん暗くなっていく。
まるで傷付いたみたいな顔。胸がぎゅっと締め付けられた。
なんで…なんでそんな顔するの。そんな顔をするのは私のほうじゃないの。振られたのは私だよ。傷付いたのも私だよ。なのに、なんで東がそんな顔をするの。
やめて、そんな顔しないで。
「……っ、」
だめ。考えちゃだめ、期待しちゃだめ。
私は爪が食い込むくらい強く右手を握った。
東を見るな、顔を見るな、目を合わせるな。
これ以上見ていたら揺らぐ。絶対に揺らぐ。
視線を逸らしたまま一歩踏み出して、東の横を通り過ぎる。
すれ違う瞬間、ほんの少しだけ東の匂いがした。いつも隣を歩いていたのを思い出してしまうくらい、懐かしい匂いだった。
扉を開けると、教室の外の空気が流れ込んでくる。ようやく息が吸えた気がした。
東の顔を見ないまま、私は空き教室を後にした。
……これでいいの。これでいいんだ。
そう何度も自分に言い聞かせるのに、歩けば歩くほど視界が滲みそうになって、私は誰もいない廊下で必死に上を向いた。



