「言っとくけど、西宮は最初から汀のことしか見てない」
「え?」
その一言が落ちた瞬間、頭の中が一瞬だけ空白になった。
理解が追いつかない。意味は分かるのに、意味として処理できない。
天馬はジュースのパックを軽く揺らしながら、こっちを見るでもなく続けた。
「俺を見てたっていうけど、それは汀を見てるのがバレたくなくて、目が合いそうになったら俺のほうに逸らしてただけだから」
一拍遅れて、脳がその言葉を飲み込もうとする。飲み込めないまま、喉のあたりで引っかかる。
「は…なにそれ、」
声が変に掠れた。
「休み時間だって、いつも俺じゃなくて汀に会いに来てたよ。ふたりきりは話題が見つからないから、北見もいてほしいとか言いやがって。俺を利用してたわけ、あいつは」
「…っ、」
なに、それ。なんだよ、それ。知らない。何にも知らない。
ずっと自分の中で組み立ててきた“答え”が、音もなく崩れていく。



