君に捧げるアイラブユー




ドラマのことだけじゃない。きっと他にもたくさんあるんだろう。

俺の知らない会話。俺の知らない時間。俺の知らない西宮。二人だけが共有している何か。

西宮は俺とも話してくれる。笑ってくれる。優しい言葉もかけてくれる。でもそれとこれとは別だ。

西宮が本当に見ている相手は誰なのか、俺はずっと知っていたから。



『ごめん、トイレ行ってくる』



俺は席を立った。逃げるみたいに。いや、実際逃げていたんだと思う。あの場にいるのが苦しかったから。

これ以上ふたりを見ていたら、自分の中に溜まっている感情が溢れそうだったから。

廊下を歩く。どこへ向かうわけでもなく。ただ歩く。窓から差し込む光がやけに眩しい。呼吸が浅い。胸が苦しい。なんでこんなに苦しいんだろう。

天馬は言っていた。西宮のことは好きじゃないと。俺じゃなくて、お前だろって。

あの時の天馬は嘘をついているようには見えなかった。

でも、本当にそうなんだろうか。もし俺が西宮を好きだと知っていたから。俺に気を遣って遠慮しただけだったら。天馬ならあり得る。

本当は好きなんじゃないか。本当は西宮のことを気になっているんじゃないか。俺のために隠しただけなんじゃないか。