結局、俺は俺にしかなれなかった。だけどそんな俺の葛藤なんて、西宮はもちろん知らない。
知らないまま、いつも通り俺たちのところへやって来る。
休み時間になると当たり前みたいに俺と天馬の机の間へ来て、椅子を引いて座る。
俺には使わないような言葉で、俺には見せないような顔で、天馬と話している。
『東、昨日のドラマ見た?』
『ドラマ?』
聞き返すと、西宮は不思議そうに首を傾げた。
『あれ? ハマってるって、北見に聞いたんだけど……北見、適当なこと言ったんじゃないでしょうね?』
『嘘つく理由がねーだろ』
『……俺、いつも録画してるの見てるから』
そう言うと、西宮は「あー!」と声を上げた。
楽しそうに笑う西宮。その横顔を見ながら、俺は胸の奥がじわじわ冷たくなっていくのを感じていた。
俺の知らないところで、ふたりが話している。
クラスメイトなんだから話すだろうし、話題だって共有するだろう。でも苦しかった。



