君に捧げるアイラブユー




『男の人に綺麗なんておかしいかな。嫌だったらごめんね』



違う。全然違う。嫌じゃない。むしろ――。

言いかけて、俺は口を閉じた。喉の奥まで出かかった言葉を飲み込む。落ち着かない。変な気分だった。

綺麗。そんな言葉は俺には似合わないと思っていたから。

もし誰かに向けられるなら、それは天馬みたいな人間だ。少なくとも俺じゃない。だから衝撃だった。


たったそれだけのやり取り。たったそれだけの放課後。

でも俺の中では確かに何かが変わっていた。

西宮の言葉をもっと聞きたいと思った。もっと知りたいと思った。西宮が何を考えて、何を感じているのか知りたかった。

そして気づけば、その日から俺は西宮の言葉をひとつも取りこぼしたくなくなっていた。

教室で交わした何気ない会話も。廊下ですれ違ったときの挨拶も。笑いながら話した内容も。全部覚えていたかった。

忘れたくなかった。まるで宝物を集めるみたいに、一つひとつ大事に胸の中へしまい込んでいく。

西宮が笑った。西宮が困った顔をした。西宮が「ありがとう」と言った。そんな些細なことまで覚えていたくて仕方がなかった。



あの頃の俺は、まだ気づいていなかった。西宮に一目惚れしていたことも、それが恋だということも。


ただ、西宮と話したかった。もっと近づきたかった。少しでも視界に入りたかった。それだけだった。