日が暮れていくので、さすがに薫の君も覗き見をおやめになる。
脱いでいたお着物をもう一度お召しになった。
姫君のお部屋から離れると、弁の尼を呼んでお尋ねになる。
「ちょうど運よく巡り会えたようだ。以前そなたに頼んだが、『大君の代わりとして恋人にしたい』ということはあちらに伝えてくれたか。母親はどう申しているのだ」
「お伝えいたしました。先々月も姫君は長谷寺にお参りなさいまして、そのときは母親も一緒だったのでございます。今回と同じくこの山荘にお泊まりになりましたから、それとなく母親に申してみました。
『姫を大君のお身代わりだなんて、あまりに恐れ多い』とためらっておりましたけれど、あなた様は女二の宮様とのご結婚でお忙しいころでしたから、あえてご報告いたしませんでした。
今日は長谷寺からお帰りの途中でいらっしゃいます。こうして行き帰りにここでご休憩なさいますのも、母親がいまだに亡き八の宮様をお慕い申しているからでしょう。その母親は今回は都合が悪かったようで、姫君おひとりなのです。薫の君がお越しになっていることを姫君にお伝えしてもお困りになるだけでしょうから、何も申し上げておりません」
「母親がいないなら、私としてはかえってやりやすいような気もする。『こうして巡り会えたのは運命でしょう』と伝えておくれ」
「まぁ、いつの間に決まった運命でございましょうね」
弁の尼は苦笑しながらも、
「そのようにお伝えしてまいります」
と、姫君のお部屋へ向かおうとする。
「あの人のお顔やお声を探してここまで来たのだ。やっと見つけた」
ぼそりとつぶやかれたことまで、弁の尼は姫君にお伝えした。
脱いでいたお着物をもう一度お召しになった。
姫君のお部屋から離れると、弁の尼を呼んでお尋ねになる。
「ちょうど運よく巡り会えたようだ。以前そなたに頼んだが、『大君の代わりとして恋人にしたい』ということはあちらに伝えてくれたか。母親はどう申しているのだ」
「お伝えいたしました。先々月も姫君は長谷寺にお参りなさいまして、そのときは母親も一緒だったのでございます。今回と同じくこの山荘にお泊まりになりましたから、それとなく母親に申してみました。
『姫を大君のお身代わりだなんて、あまりに恐れ多い』とためらっておりましたけれど、あなた様は女二の宮様とのご結婚でお忙しいころでしたから、あえてご報告いたしませんでした。
今日は長谷寺からお帰りの途中でいらっしゃいます。こうして行き帰りにここでご休憩なさいますのも、母親がいまだに亡き八の宮様をお慕い申しているからでしょう。その母親は今回は都合が悪かったようで、姫君おひとりなのです。薫の君がお越しになっていることを姫君にお伝えしてもお困りになるだけでしょうから、何も申し上げておりません」
「母親がいないなら、私としてはかえってやりやすいような気もする。『こうして巡り会えたのは運命でしょう』と伝えておくれ」
「まぁ、いつの間に決まった運命でございましょうね」
弁の尼は苦笑しながらも、
「そのようにお伝えしてまいります」
と、姫君のお部屋へ向かおうとする。
「あの人のお顔やお声を探してここまで来たのだ。やっと見つけた」
ぼそりとつぶやかれたことまで、弁の尼は姫君にお伝えした。



